最後に、「10月から始まるZepp Tourがhide with Spread Beaverの活動としては最後になるかもしれない」という話も飛び出したが、「でも、hideを中心に据えた企画案はまだまだあるので、楽しいことを続けていくから、これからも楽しみにしていてほしい」とも述べてイベントを締めくくった。
ライブバーA'TTIC Stageだからこそ、と言えようか。defspiralのTAKAとメリーのガラ、2人のボーカリストがアコースティックなスタイルで共演した。先に登場したTAKAが、アコースティックギターを手にhideの「FLAME」を艶めいた、でも芯の太い声を響かせて朗々と歌い出し、観客たちのハートを強く抱きしめる。ここでTAKAが、ライブを観ていたdefspiralのRYOを呼び入れ、2人が届けたのが「DICE」。時にRYOへマイクのバトンを渡すなど、息の合った関係だからこそ、その場のアドリブから生まれる空気を一緒に作り上げていく。さらにその場にTAKAがガラを呼び込み、新鮮な組み合わせの2人で歌ったのが「HURRY GO ROUND」。ここではガラを中心に、TAKAがコーラスで寄り添う形で進められた。癖が強く個性的なガラの歌声に、TAKAの芯の太いコーラスが重なり合うことで、存在感の強い歌声の重奏がこの場を包み込んでいく。気持ちの揺れ動くまま、その思いに導かれるように歌い上げるガラ。そこへTAKAが寄り添うように歌声を重ね、息の合った絶妙なコンビネーションを聴かせた。
14時15分、SUB STAGEが明るく照らされると、「今日は行ったり来たり忙しいと思いますが、楽しんでください!」と観客に呼び掛けたトップバッターの木村世治。hideに見出されLEMONeDレーベル発足のきっかけとなったロックバンドZEPPET STOREのフロントマンである。呼び掛けずともクラップが自然発生する中、アコースティックギター弾き語りで届けられるシンプルな歌声は、驚異的な吸引力がある。「9年ぶりのMLJということで、随分昔な気がしますが、楽しんでいきたい」と語ると、この後DJやチャリティーオークションにも参加すると予告。「もうね、これを歌わないとね」との言葉からスタートしたのは「FLAME」。hideがZEPPET STOREのこの曲を再構築して「MISERY」が生まれたという逸話を持つ名曲である。「降り注ぐ悲しみすら抱き寄せ」「Life is going on 枯れるまで」という歌詞は色褪せるどころか、2026年の今だからこそ一層リアリティを帯びて心に響いた。「サンキュー、2Fで会いましょう!」と、A'TTIC Stageでの再会を呼び掛けて手を振り、温かな拍手の中でステージをあとにした。
A'TTIC Stageでは、 西崎ゴウシの司会進行のもと、トークイベントにmachineのHAKUEIとhide with Spread BeaverのKiyoshiが登壇した。終えたばかりのライブの感想を2人は語り出し、HAKUEIが「人生で一番最高のステージでした」と述べていたのが印象的。KiyoshiはMLJを初めて開催した当時のエピソードも語ってくれた。西崎が「hideさんはどんな人?」と質問すると、HAKUEIが「ミュージシャンとして選ばれた人。でも、めちゃくちゃな人です」と語り出す。さらにHAKUEIが、恵比寿にあった屋台にKiyoshiとhideに朝8時頃に呼ばれて行ったとき、その場にいたBUCK-TICKの櫻井敦司と並べられ、hideに「はい、新旧ヴィジュアル系対決」と突っ込まれたことなどを2人は懐かしむように話していた。machineが「DOUBT」をカバーした際の話では、ジャジーにアレンジした背景を2人は語り、さらにはmachineの今後の展望についてもトーク。10月30日と31日に開催する「HALLOWEEN BUSTERS 2026」では、ポニョと未散(ゴスロリ)のコスプレをすることを、その微笑ましい理由も含めて語ってくれた。
Cuonのライブが終わった直後SUB STAGEでサウンドチェックを始めたCUTTは、「TELL ME」を弾き語りして場内を沸かせ、「曲に申し訳ないので、1コーラスだけやります」と切りの良いところまで披露。アタック映像を差し挟み、すぐさま本番がスタートした。「自由に楽しむ」というイベントのテーマに沿って自身もテーマを決めてきたと語り、「僕の歌いたい歌、90年代の世界を代表するロックを歌いたいと思います」と宣言。アコースティックギター弾き語りでマリリン・マンソンやNIRVANA、NINE INCH NAILSなどの楽曲をノンストップで歌い繋いでいく。hide の「LEMONed I Scream」ではフロアにシンガロングを求めて盛り上げ、「自分の曲も歌います」と最後に「Indiscribable」を披露。感謝してもしきれない想い、愛を描いたナンバーに乗せて、hideへの想いを高らかに歌っているように感じられた。
A'TTIC Stageに今度はDJとして出演した木村世治。洋楽ディスコ曲を中心に選曲し、アースウィンド&ファイアーの「セプテンバー」からPLAYはスタートした。レニー・クラヴィッツの「自由への疾走」やジグソーの「スカイハイ」、クイーンの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」などノリの良い名曲ばかり。大勢の人たちが両手を上げて飛び跳ね楽しくダンスに興じていた。そんな中へhide feat.東京スカパラダイスオーケストラの「Beauty&Stupid TOKYO SKA VERSION」を組み込んだセンスもさすが。DJ TIME中、何度もステージ前に出てきてはPLAY中のアーティストの仕草を真似るなど、木村自身が一番楽しんでいるように見えた。
木村世治からのバトンを受け取ったDJ-INAは、主に90年代のディスコ系J-POPナンバーを選曲。SMAPの「SHAKE」から始まったDJ PLAYでは、観客たちが曲に合わせて掛け合いを見せるなど、最初からノリノリの空間を作り出す。その後も、ブラックビスケッツの「Timing〜タイミング」やモーニング娘。の「LOVEマシーン」、TRFの「EZ DO DANCE」から、E-girlsの「おどるポンポコリン」までPLAY。ときにサイリウムを振りながら観客たちと声を掛け合うなど、ライブに負けない熱狂の景色を作り出していった。流行歌の数々に慣れ親しんだ世代が多かったのもあったのか、フロアは常に熱気に満ちており、まさか羽根扇子(ジュリ扇)が舞う景色まで生まれるとは。そんな予想外の展開も飛び出すほどの熱狂ぶりだった。
SUB STAGEでは、ブースに出展しているボランティア団体の方々が代わる代わる登壇しての告知タイム。チャンス大城と西崎ゴウシの進行のもと、詳しい活動内容やhideとの関係性などを観客に語り掛けていた。
続いてMAIN STAGEに登場したのは、松隈ケンタがプロデュースするガールズグループGirls be bad。サウンドチェックの時点で凄まじい声量とエネルギーの塊のようなものが幕の向こうから迫ってきて、慄くほどだった。このようなイベントに出演すること自体が初めてだとMCで口々に明かしたが、りんか(リーダー担当)、あやか(元気娘担当)、蝶(クール担当)は堂々と歌い踊り、度胸のあるパンキッシュなステージを展開。「DOUBT」のカバーを含む多種多様な全9曲を、自分たちでペイントしたというhideモデルのギターを代わる代わる手に取りながらパフォーマンスした。本イベントへの出演は目黒鹿鳴館でのライブで「X」の完コピをしたことがきっかけだと語った蝶は、「この日のためにhideさんカラーで髪を染めました」と赤髪の理由を明かし、hideへのリスペクトを示した。
MAIN STAGEの幕が上がり、赤く染められたステージにネロ(Dr)、結生(Gt)、テツ(Ba)、最後に登場したガラ(Vo)が机に乗ってマイクスタンドを高く掲げると、その場所はもうこの世のどこでもなく、メリーの漆黒の世界に様変わりしていた。「溺愛の水槽」で深く引き込み、続く「さよなら雨(レイン)」ではガラは脱いだジャケットをマイクスタンドに掛けると、人に見立てて妖しく抱き寄せる演劇的なパフォーマンスも交えて魅了。「hideさん、初めまして、メリーです」と、直接hideに語り掛けるあいさつから始めたガラは、「今日はこんな素敵なイベントに呼んでいただいて、とてもうれしいです。呼んでくれたdefspiralのRYOさんに感謝しています、ありがとうございます」と感謝を述べる。「hideさんがつくってくれたヴィジュアル系、僕ら今全力でやってます」と自己紹介。「こんな感じだったらいいな、というヴィジュアル系になってるんですかね?」と自問すると大きな拍手が起きる。「目黒鹿鳴館からメリーというバンドも今年25周年。あなたたちがつくってくれたヴィジュアル系を引き継いでます。これからも見ていてください」と再び語り掛け、「hideさんの曲をやりたいと思います」との言葉からスタートしたのは「TELL ME」だった。ネロは左右に頭を振って生き生きとプレイをし、結生、テツも前へ出て、ガラは「川崎!」とフロアに呼び掛け盛り上げる。「これが昭和最後のヴィジュアル系の姿、行けるか川崎!」(ガラ)と絶叫して披露した最後の曲は「ジャパニーズモダニスト」。鬼気迫るパフォーマンスで強烈な残像を観る者に残した。