塚本晋也監督『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』ベネチアで日本映画初の“金の小獅子賞” 「何物にも代えがたい」

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2026年09月12日 02:20  オリコンニュース

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第83回ベネチア国際映画祭、塚本晋也監督の『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』が「レオンチーノ・ドーロ(Leoncino d’Oro/金の小獅子賞)」を受賞 (C)ORICON NewS inc.
 イタリアで開催中の「第83回ベネチア国際映画祭」で現地時間11日、コンペティション部門に出品されている塚本晋也監督の『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』が、公式独立賞(Collateral Awards)の「レオンチーノ・ドーロ(Leoncino d'Oro/金の小獅子賞)」を受賞した。主催者によると、日本映画の受賞は今回が初めて。

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 レオンチーノ・ドーロは1989年に創設され、今回で38回目を迎える。イタリア全20州から選ばれた18歳の高校生20人が審査員を務める、同国で広く親しまれている賞。昨年は、パレスチナ自治区ガザで命を奪われた少女の実話を描いたカウテール・ベン・ハニア監督の『ヒンド・ラジャブの声』が受賞した。

 授賞式は、映画祭のメイン会場があるリド島のホテル・エクセルシオール内、イタリア・パビリオンで開催された。若い審査員たちからトロフィーを手渡された塚本監督は、「実際に若い審査員の皆さんを目の前にして、本当に胸がいっぱいになりました」と喜びを表現した。

 本作について「もちろん多くの方に観ていただきたいと思って作りましたが、何よりも若い皆さんに観てもらいたいと思って作った作品です」と説明。「未来を手にしているのは皆さんです。いま世界では戦争が起き、戦争へと向かうような空気も漂っています。何を決め、何を選び、何を考えるのか。それによって、未来をより良い方向へ導いてほしい」と呼びかけた。

 さらに、「この映画を観て、戦争とは何なのか、戦いに行くとはどういうことなのかを考え、話し合い、正しい決断をしてもらえたら、それが私の大きな願いです」と語り、「この作品を若い学生の皆さんが選んでくださったことに、非常に明るい希望を感じています」と結んだ。

 授賞理由では、戦争に共通する暴力を描き切った表現力をはじめ、主人公の意識が変化していく過程へ観客を引き込む力、映像と音響を駆使して戦争と帰還兵のトラウマを告発した点などが評価された。また、侵略戦争を支える帝国主義的な論理を明確に拒絶するメッセージを、あらゆる世代へ伝える作品であることも挙げられた。

 授賞式後の取材で塚本監督は、若い審査員たちと対面した瞬間を振り返り、「この人たちが選んでくれたのかと思ったら、内側からムクムクと喜びが湧いてきました」と笑顔を見せた。

 とりわけ若者に観てもらいたいと訴えてきたのは、「実際に戦争へ行くのは若い人」だからだという。ベトナム戦争に従軍したアレン・ネルソンさんの実体験を描いた本作について、「この戦争の現場は、本当の戦争の現場だと思っています。それを観た若い人たちが『そこに近づきたくない。では、どうするのか』と、きっと皆さんで議論してくださった。そのことが本当に届いたと感じられたのが、最もうれしかった」と語った。

 また、戦争の恐ろしさだけでなく、ネルソンさんの人間性も作品に込めた。「戦争がなければ、アレンさんは人から好かれ、子どもたちにも愛され、もっと違う人生を歩んでいたかもしれない。彼の人格の良さのようなものが、希望として映画に立ち現れることも願って作っていました。その光まで観ていただけたことが、非常にうれしかった」と受賞理由をかみ締めた。

 映画祭で賞を獲得すること自体については、「たくさんの映画の中から、この大事な映画祭に呼んでもらった時点で達成していると思っています」と率直な思いを吐露。そのうえで、「実際に若い人たちの顔を見て、『この人たちが選んでくれたのか』と思ったときは、すごく感動しました」と、今回の受賞の特別さを強調した。

 若い審査員たちが一斉に自身のもとへ歩み寄ってきた光景は、映画のある場面とも重なったという。「涙がちょちょ切れそうになった」と明かしながら、「うれしさがザワザワと込み上げてくるような感じでした。自分にとって、何事にも、何物にも代えがたい賞だとつくづく思いました」と感慨深げに話した。

 世界情勢が緊迫するなか、塚本監督は本作を「小さな石つぶて」と表現。「多くのお客さんに、戦争の実体験になるべく近い体験をしてもらい、その恐ろしさを感じてもらいたい」と改めて訴えた。

 本作は、18歳で米海兵隊に入隊し、ベトナム戦争から帰還したアレン・ネルソンさんの自伝を映画化。戦場で人を殺すことを教え込まれ、帰国後はPTSDに苦しみ続けたネルソンさんの人生を、加害者の視点から描く。ロドニー・ヒックスがネルソンを演じ、ジェフリー・ラッシュ、タチアナ・アリ、リリー・フランキーらが出演。

 北海道をはじめ上映館のない地域もあるなど、限られた劇場で日本時間9月11日に封切られた本作。塚本監督は「劇場に関しては自主映画ではないので僕には決められない」としたうえで、「個人としては、だんだん上映劇場が広がっていくことを希望しています」と語っていた。


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