アミューズ リリースより 見上愛と上坂樹里W主演の連続テレビ小説『風、薫る』(NHK)で、おそらく唯一の嫌われ役といえば、三浦貴大演じる奥田亀吉だろう。
第2週第7回で主人公の夫になった亀吉が、第24週第116回で再登場した。主人公はもちろん、視聴者にも彼の再登場を喜ばしいものとは思えない。
だが、三浦貴大の演技は面白い。純粋に動作で楽しませる俳優である三浦貴大について、“イケメン研究家”加賀谷健が解説する。
◆嫌われキャラでも再登場するマナー
『風、薫る』第24週第116回ラスト、主人公・一ノ瀬りん(見上愛)の夫だった奥田亀吉(三浦貴大)が再登場した。待望の、とは言いがたい。なにせ、りんは大酒飲みで粗暴な亀吉を嫌い、幼かった娘を連れて東京に逃げてきたのだ。
日本の看護婦のパイオニアとして身を立てたりんの元に、今さらなんのようでやってきたというのか? 誰もが疑いの眼差しを向けざるを得ない。第2週第7回冒頭で描かれた、祝言の場でさっそく目を剥いて泥酔した亀吉の姿を思い出してみる。
りんの顔を見れば、酒をもってこい、酒をもってこい。りんが亀吉の身体を気遣い、水を渡すと暴れだす。いいところなんて1つもない。
本作中最も嫌われているキャラクターといってもいいのだが、そんな人物でさえ再登場するのが、連続テレビ小説のマナーでもある。
◆引きの画面にカニ歩きでフレームイン
亀吉の再登場は、決して喜ばしいものではないのだが、でもその登場の仕方には目を見張るものがあった。
基本的に放送週のはじまりで登場人物が入れ替わる連続テレビ小説では、思わぬ人物の再登場が新鮮に感じられるよう工夫されているからである。
第116回ラストで、派出看護婦会の詰所の外が映り、看護先に出掛けていくりんがまず画面上手奥からフレームアウトする。すると今度は下手(画面手前)から亀吉がカニ歩きでフレームインするのだ。
やや挙動不審でかなり猫背の亀吉が入り口に近づく。障子を少しだけ開けて、隙間から中の様子を伺う。ちょっと憎めない気もしてくる。
第118回で成長した娘の環(瀧七海)と再会する場面でも、同じような引きの画面の上手から(カニ歩きではないが)またふらふらと亀吉が現れる。
◆純粋に動作で楽しませる俳優
さらに第119回では、環が家出したことを騒いでいるところに、亀吉がまたもひょっこり登場し、戸口付近でバツが悪そうにフレームアウト。こうした画面上での軽妙な出ハケを見ていると、何だか嫌われキャラであるはずの亀吉に対する見方も少しだけ変わってくる。
出たり、入ったり。そしてちょっと動いてみたり。奥田亀吉役には、動作を通じて視聴者を楽しませるところがある。ただし、それは本作に限らず、三浦が出演する他作品でも散見できる、彼の演技の特徴でもある。
たとえば、2015年公開の映画『ローリング』。水戸のおしぼり工場に勤務する貫一(三浦貴大)が序盤から、台車で積み荷を運ぶ場面があり、ここでも引きの画面上で三浦が動き回り、それだけで見ていたくなる。
父・三浦友和が動くことではなく、むしろそこにいるという佇まい勝負で見る者を納得させるタイプなら、三浦貴大は純粋に動作で楽しませる俳優なのだ。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
イケメン研究家 / (株)KKミュージック取締役
“イケメン研究家”として大学時代からイケメン俳優に関するコラムを多くの媒体で執筆。アーティストマネジメント、ダイナマイトボートレース等のCM作品やコンサートでのクラシック音楽監修、大手ディベロッパーの映像キャスティング・演出、アジア映画宣伝プロデュースを手掛ける。他に、LDHアーティストのオフィシャルレポート担当や特典映像の聞き手など。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。
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