
2026年は、ミュージシャンの浜田省吾がソロデビューして50周年の節目にあたる。これを記念した旧作レコードの復刻や各種イベントの開催など、アニバーサリーイヤーは熱を帯びている。
そんな中、ファンが注目する激アツなスポットが、東京・杉並区の井荻にある。ダイニングバー「TEN」だ。本格イタリア料理を提供する同店では、毎月最終土曜日に「ハマショーナイト」を開催。オープンから閉店まで、店内に流れるBGMと映像はすべて"ハマショー"(敬愛を込めてそう呼ばせていただきます)オンリー。またトレードマークであるサングラスとバンダナを着用して来店すれば、全メニューが30%オフになるユニークな特典まで用意されている(店内に無料貸し出しあり)。
週プレNEWS編集部が潜入したところ、店内にはサングラスをかけ、ハマショースタイルに身を包んだファンがぎっしり。名曲に合わせて口ずさむ人、若かりし頃の思い出を語り合う人、ライブの熱狂を分かち合う人、さらにはギターを持ち込んで弾き語りを始めるツワモノまでいる! 美酒と美味、そして何より浜田省吾の世界に酔いしれる空間が広がっていた。これはすごい!
そこでオーナーシェフのたろーこと、根元達章(ねもと・たつあき)さんに話を聞いた。
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――ドアを開けた瞬間から圧倒されました! バラエティ番組の収録かと思うほどの熱気ですね!
たろー たまに言われます(笑)。音楽を通じていろんなお客さんが集まってくれますし、何より自分がハマショーさんを大好きで始めたイベント。この楽しい雰囲気が伝われば嬉しいですね。
――存分に伝わりました(笑)。このイベントはいつから?
たろー 10年になりますね。この店は2016年12月にオープンしたんですけど、当初からずっとやっています。僕は大阪出身で、オープン当初はシェフの友人と共同経営だったんです。「絶対にお客さんが増えるから!」と言いくるめて、半ば強引にスタートさせました。ちなみに井荻という場所を選んだのは偶然だったんですが、ハマショーさんの楽曲に『恋の西武新宿線』があるので、勝手に運命を感じちゃいました(笑)。
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オーナーシェフのたろーこと、根元達章さん
――来店されるのはどんなお客さんが多いですか?
たろー 都内の方を中心に、SNSでこの店を知ったファンが全国から集まってくれます。最近だと三浦半島から毎月通ってくださる方もいます。一人で来てしみじみ音楽に浸る方もいれば、「親の影響で」と足を運ぶ若い世代のお客さんもいますよ。
――それにしても、皆さん気合いが入っていますね。
たろー 熱心な方が多いです。コンサート会場の路上で歌っている方や、頭のてっぺんから足の先まで再現する方、ハマショーさんになりきった自作の卓上カレンダーを持ってきた方もいました(笑)。昔のパンフレットやツアーグッズ、ファンクラブ会報を「みんなで楽しんでほしい」とお店に寄付してくれる方もいらっしゃいます。
マイギターを手に歌い出す、常連さん。高校時代に衝撃を受け、以来、コンサート会場周辺でハマショーの弾き語りをしているという
ハマショーの曲を聴くと、高校時代の思い出が蘇ると語る地元の常連さん
貴重な80年代ファンクラブ会報をお店に寄付。会報はキレイな状態で保存されていた
バンダナ&サングラスを思い思いに身をつけ、料理もお酒も進む
――お料理は本格的でスタンダードなイタリアンですね。曲名にちなんだ限定メニューがあっても面白そうですが。
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たろー アイデアとしては浮かぶんですけど、そこは抑えています(笑)。僕はあくまで「ファンが集える場」を作りたいだけ。大好きだからこそ、安易なネタにはしたくないんです。本当にリスペクトしているので。
――なるほど、愛ゆえのこだわりですね。とはいえ......失礼ながらたろーさんご自身はハマショーファン的にお若く見えます。いわゆるリアルタイム世代は50〜60代が中心かと思いますが......。
たろー それ、よく言われます(笑)。僕はいま42歳。同世代の友達で聴いている人はほとんどいません。カラオケに行って歌っても、みんなポカーンとしていましたから。
――なぜそこまでハマショーにのめり込むことに?
たろー 地元にいた頃、尼崎の「オクトパス」というたこ焼きバーで働いていたんです。そこのオーナーは大のハマショーファン。店内は延々とハマショーさんの曲だけが流れていたんです。最初は良さが全然わからなかったんですが、「お前は絶対にハマる」と言われ続け、毎晩10時間ほど浴びるように聴いて、またライブにも連れて行ってもらううちに、すっかり心を奪われました(笑)。
――毎晩10時間はすごい(笑)! それにしてもそこまで人を惹きつける魅力はどこにあるのでしょう?
たろー う〜ん、なんでしょうね。改めて言葉にするのは難しいですが「純粋さ」でしょうか。すごく真面目で、だからこそ屈折している人間臭さがあるというか。たとえば「丘の上の愛」(1980年)は、お金持ちの男に好きな女性を取られてしまう痛切な心情を歌っているし、「片想い」(1983年)はいっそ好きにならなければよかったと打ち明ける。普通、ラブソングって好きな人への想いを歌うものが多いじゃないですか。でもハマショーさんは自分の切なさや情けなさ、辛さを赤裸々に差し出してくる。そこに強く胸を打たれるんですよね。
店内に飾られる貴重なツアーグッズやポスターなどは、ファンから提供されたものも多い
――たろーさんが一番思い入れのある曲は?
たろー 「家路」(1999年)は特に好きですね。「どんなに遠くても絶対にたどり着いてみせる」と誓うような歌詞があって、昔、仕事で辛かった頃、毎日帰り道に泣きながら歌っていました(笑)。大袈裟でなくこの曲に人生を救われましたよ。あと最近響いているのは『初秋』(1993年)。これは誰かを愛することの幸せを歌った曲で、出会えた喜びと切なさが一緒くたに伝わってくる。自分が死んだ時は、妻への感謝を込めて葬式で流してほしいと思っているくらい大切な一曲です。
――まさに人生の伴走者のような存在です。
たろー 曲を聴いて思うのは、ハマショーさんは常にすぐ隣にいて、自分の経験やその時々の胸の内を語りながら「大丈夫だ」と背中を押してくれる先輩のような存在。曲を聴く度に、自分の原点を思い出しますし、前へ進むエネルギーをもらっています。
――ハマショーさんは今年でデビュー50周年、お店で何かスペシャルなお祝いイベントなどは?
たろー 僕自身、コンサートに行きましたけど、お店として特別なことはあえてしていないです。うちに来てくれるファンは普段からずっと熱狂的だから、気負わずにいつも通りにみんなで曲を聴くこと自体が一番のお祝いなのかなと思っています。
――ちなみに、ご本人がふらりとお店に来られたことは?
たろー いやー、さすがにないですよ(笑)。でも、サポートメンバーの方が来てくださったことはあって、店内を見て喜んでくれました。もしも、万が一にでもご本人がお店にいらっしゃったら、僕は完全にフリーズして、まともに料理を出せないと思います(笑)。
――いつかその夢のような日が来ることを祈ります(笑)。最後に、今後お店をどのように続けていきたいですか?
たろー 派手な野望はないですけど、「ハマショーナイト」は続けていきたいです。音楽は聴く人の物語が重なるもの。同じ空間で誰かと曲を浴びることで、お互いの人生を共有できるような喜びがあるわけで。お店を出て「いい夜だったな」と思ってもらえたら、それ以上の喜びはありませんよね。
●ダイニングバーTEN
東京都杉並区下井草5-18-8 高橋ビル1F
03-6913-8876
営業時間:18:00〜1:00
休日:日曜日、月曜日
ハマショーナイト
毎月最終土曜開催
*サングラス、バンダナ着用で30%オフ
(店内無料貸し出し有り)
取材・文/大野智己 撮影/渡邉眞朗
