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ベネッセコーポレーションの「しまじろう」と聞いて、どんな印象を覚えるだろうか。30代後半の筆者は「懐かしい」と感じるが、実は今、しまじろうがSNS上で再評価されている。長年親しまれてきたキャラクターが、“最先端”を走っているのである。しかし、なぜしまじろうは、SNSに力を入れているのだろうか。その狙いを探った。
●“等身大”のしまじろう
しまじろうは1988年の初登場以来、幼児向け通信教育「こどもちゃれんじ」やテレビ番組、教材、コンサートなどで知名度を高めてきた。こうした活動に加え、現在はSNS上で積極的な情報発信を続けている。
しかし、その投稿は独特だ。例えばXでは、“等身大”のしまじろうが、遊歩道にあるベンチと思われる場所に腰掛けている写真に、「おや?しまじろう 無かな?」と添えて投稿。フォロワーからは心配の声が集まったが、あくまで本人は「さんぽちゅうのきゅうけい」だと主張した。
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また、ある日は歯科の治療台に横たわり、「おや?しまじろう 知らない器具が出てきたね」と投稿。
いずれもシュールさが注目を集め、好意的に拡散されている。
●しまじろうの投稿は、なぜバズるのか
これらの投稿がバズるのは、長年の蓄積があるからだ。すでに知名度のあるキャラクターであるため、細かく説明せずとも文脈が伝わる。同じ形式の投稿を無名のキャラクターが行っても、同じ規模の反応は得にくい。
先ほど紹介したSNS投稿は、いずれも児童をターゲットにしたものではなく、「すでにしまじろうを知っている大人」を意識している。そのため、アニメなどの子ども向けコンテンツとのギャップを覚える人も多いが、その違和感にこそ勝機がある。
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かつてしまじろうを見ていた視聴者や教材の利用者は、今では親世代や社会人になっている。決裁権のある親たちにこどもちゃれんじを想起させるために、種をまいているのである。
そのカギを握るのが、記号としてのしまじろうだ。ストーリーはうろ覚えでも良い。むしろそのほうが、新たな文脈を与えられる。同じキャラクターの輪郭を、別の文脈で見せて、意外性を与えるだけで十分なのである。
●しまじろう以外にも……
“懐かしさ”を“目新しさ”に転換しているのは、しまじろうだけではない。進研ゼミ小学講座の「コラショ」も同様に、SNS上で攻めのマーケティングを行っている。このキャラクターも、1998年に初登場したベテランだ。
注目すべきは、8月12日の「みんなでせっとろぐであそんだよ!」というXの投稿だ。ご丁寧に「どうがもあるよ!」と、TikTokへのリンクも貼られている。動画では、しまじろうやその友だち、コラショたちの1時間ごとの行動が、数秒おきに切り替わっていく。
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これは最近ブームになっている、ショート動画SNS「setlog(セットログ)」に絡めたものだ。1時間ごとに2秒の動画を友人と共有できるサービスで、Z世代を中心に話題となっている。「懐かしの存在」だと思っていたキャラが、流行の最先端にいる。そのギャップもまた、人気の要因になっているのだろう。
●ツッコミどころがポイント
なじみのキャラクターが予想外の行動を取ることで、シュールさや意外性が生まれる。そして、そこに「ツッコミ」が入ることで、加速度的に注目が集まっていく。
また、しまじろう単体ではなく、“同僚”であるコラショとのコミュニケーションを盛り込むことで、新たな関係性が構築されている。両者は本来、対象年齢が異なり、別の世界観やストーリーの中にいた。しかしSNS上では、そうした垣根を越えたコラボを、“大人の事情”で日常的に行えるのだ。
キャラクターのSNS発信によって、商品やサービスを訴求する。そうした手法を採用しているのは、ベネッセだけではない。よく知られているのが、語学アプリの「Duolingo(デュオリンゴ)」である。最新のネットミームを活用すると同時に、しまじろうたちと同様、一般ユーザーへの返信も積極的に行っている。
過去にITmedia ビジネスオンラインがDuolingoに取材した記事『学習アプリなのに「ネタ全開」……万バズ連発の「デュオリンゴ」、マーケ戦略の裏側』によると、投稿の背景には「ブランドの人格化」があるという。そして楽しい印象を持ってもらった結果として、「語学の勉強をしようと思い立った時に、Duolingoを思い出してもらうこと」を目指しているそうだ。
こどもちゃれんじや進研ゼミの場合、すでに一般的な認知は得られている。その点において、Duolingoとはやや異なるが、「思い出してもらうためのキャラ活用」という点では重なる部分も大きい。
●ファンが増えることは「防御」にもなる
ブランド訴求のためにキャラクターを活用することは、大きな可能性を秘めている。十分な予算や人手を確保できず、なかなか知名度を上げられない場合でも、これらの事例は参考になるはずだ。
もちろん炎上のリスクもあるが、「企業の公式キャラらしさ」を捨てた言動には、一定の価値がある。ファンが増えれば、いざというときの味方も増える。攻めたブランディングが、防御に効くこともあるのだ。
懐かしい存在を、現在進行形のキャラクターへ。しまじろうやコラショのSNS活用は、過去から受け継いだブランド資産を守りながら、現代に合わせてアップデートする方法を学べる事例と言える。
著者紹介:城戸譲
1988年、東京都杉並区生まれ。日本大学法学部新聞学科を卒業後、ニュース配信会社ジェイ・キャストへ入社。地域情報サイト「Jタウンネット」編集長、総合ニュースサイト「J-CASTニュース」副編集長、収益担当の部長職などを歴任し、2022年秋に独立。現在は「ネットメディア研究家」「炎上ウォッチャー」として、フリーランスでコラムなどを執筆。政治経済からエンタメ、炎上ネタまで、幅広くネットウォッチしている。
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