
10月も続く飲食料品の値上げラッシュ。来月は、3000品目超が対象になる見込みだ。節約志向が一段と高まる中、ドン・キホーテやイオンの「格安アパレル」が売れている。
ドンキなどを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は2026年2月、PB「情熱価格」から「999ジーンズ(サンキュージーンズ)」を発売した。価格は1099円(税別999円)で、全国のドンキ、アピタ、ピアゴ(一部店舗を除く)などで販売している。段階的にラインアップを増やし、9月末時点のシリーズ累計販売数は約20万本に上る。
中間コストを削減するなどして、1099円を実現。同社によると、「通常より利益率は低いが、赤字ではない」という。価格には、顧客への感謝(サンキュー)の意味も込めている。
9月末からは、1099円の「あったか即戦力フリース」も展開(北海道・東北エリアで先行発売、全国発売は10月上旬〜)。17色のカラーバリエーションと多くのサイズをそろえ、「国民的フリース」を目指す。
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イオンでも、PB「トップバリュ」から1100円の「ストレッチデニムパンツ」「スウェットシャツ」「スウェットパンツ」(税別1000円)を、それぞれ9月8日に数量限定発売した。反響は想定以上で、「デニムパンツ」は2カ月の販売予定数量を約1カ月で売り切った。
10月1日には、1100円の「マイクロフリース フルジップジャケット/カーディガン」(税別1000円)も数量限定で発売(エリアによって発売日は異なる)。発注数を国内外のグループ全体でまとめて仕入れコストを抑えたり、製造工程の一部を自動化したりすることで、低価格を実現している。
イオンリテール 執行役員/衣料本部長 小田嶋淳子氏は、「顧客への還元を一番に据えつつ、利益を度外視しているわけではない」と説明した。
PPIHとイオンリテールに、「格安アパレル」の戦略と現状の成果を聞いた。
●約17年ぶりの「格安ジーンズ」販売の狙い
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2009年にスタートしたPPIHのPB「情熱価格」は、現在では国内売上高の26.2%を占め、食品から雑貨、アパレル、家電まで、さまざまな商品を展開している。
中でも、食品よりも粗利率の高い「非食品」の品ぞろえを増やすことで、ディスカウントストア事業全体の粗利率を27.8%の水準に維持している。さらなる利益率の向上に向け、アパレルも強化領域の一つと位置付けているそうだ。
2021年には「情熱価格」のリニューアルを行い、安さだけでなく、「驚き」や「ワクワク・ドキドキ」も提供するという方針を定めた。アパレル領域では、新品のような黒さが長く続く「色褪せ知らずの黒」シリーズや温度変化に対応しやすい「カメレオンインナー」など、“一点突破”のコンセプトで「ドンキらしさ」を追求している。
そんな中、2026年2月に「999ジーンズ」を発売。PPIHでは、2009年にも690円の格安メンズジーンズを販売し、5日間で約3万本を完売して話題を呼んだ。しかし、それ以降、ドンキのPBではジーンズを展開していない。なぜ、約17年ぶりに格安ジーンズの販売に至ったのか。
「当社では、2016年頃に機能系無地商材を扱うメンズ向けブランド『RESTORATION(レストレーション)』を本格化させ、ファッション領域に挑戦しました。しかし、狙っていた結果が出せず、方針転換して肌着やルームウェアを主軸にしてきた経緯があります。その結果、ディスカウント業態におけるアパレル部門(時計・ファッション用品)は、前年比10%増と堅調に推移しています。
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そんな中、価格インパクトのある商品で再びファッション領域にトライしようと『ジーンズ』に着目。Z・α世代をメインターゲットに据え、“ついで買い”を促し、ドンキのアパレル全体の認知度や親しみやすさを高めたいと考えました」(PPIH アパレル製品開発責任者 大竹光洋氏)
開発にあたっては、「1099円という価格設定」や「ターゲット、ラインアップの絞り込み」において議論があったという。結果として、学生でも“お小遣いで買える”手頃な価格をフックにして、ドンキで衣料品を買ったことがない顧客や若年層に対し、「ドンキで服を買う」という選択肢を広げることを狙った。
大竹氏は、「『これで1099円なら満足だ』と感じていただける、真に価値ある一着を目指した」と話す。どんな工夫を盛り込み、どのように圧倒的な低価格を実現したのか。
●7カ月で20万本、新作「フリース」も手応え
素材は、コストを抑えやすいポリエステルではなく、デニム本来の風合いや加工感を出しやすい「綿100%」を採用。さらに、特殊ミシンを使い、ヒップ部分をジーンズ特有の「巻き縫い仕様」に仕上げ、デザイン性と耐久性を高めた。
ラインアップにはトレンド感を取り込み、王道の「ストレート」だけでなく、膝から下にかけて丸みを帯びた「バレルレッグ」も採用。多様なニーズに応えるため、「ワイド」と「イージーウエスト」も用意した。
低価格を実現できた最大の理由は、商社などの中間業者を通さず、ミャンマーの生産工場と直接交渉したことだ。通常、アパレル製品はメーカーや商社、パタンナーなどを介し、品質や納品の管理も含めて依頼するのが一般的だ。
しかし、本製品の場合は、開発担当者が自ら現地の工場を訪れた。デニム特有の洗い加工や風合い出しといった二次加工の指示を細かく出し、何度もサンプル修正を重ねた末に完成させた。また、海上輸送時に商品をまとめるなど、物流の効率化も徹底した。
販売では、数量を絞り、段階的にラインアップを追加している。2026年2月に、第一弾の「ストレート」と「バレルレッグ」を、4月に「ワイド」と「イージーウエスト」を販売。6月末からは、ジーンズではないが、同価格の「ストレッチテーパードパンツ」も追加した。シリーズ累計販売数は約20万本だ(9月末時点)。
「“鮮度”を維持するためにも、基本的に2カ月で『売り切る』方針です。想定以上にスピーディーに売れていて、特定の商品やサイズが品切れとなっている店舗もあります。時期は未定ですが、今後もジーンズのラインアップは追加予定です」(PPIH アパレル製品開発担当 柾木規道氏)
9月末からは、1099円の「あったか即戦力フリース」も販売している(北海道・東北エリアで先行発売、全国発売は10月上旬〜)。こちらも品質に妥協せず、毛足が長く保温性の高い素材を選び、ポケット内部にもフリース生地を使うなど細部までこだわった。17色のカラーバリエーションと幅広いサイズをそろえ、好みに合わせて選べるようにした。
「ジーンズもフリースも、お客さまからの問い合わせが非常に多いですね。売り場側の期待値も高く、多くの店で入口付近など目立つ場所に陳列しています。フリースは、来年1月頃まで販売予定です」(PPIH 柾木氏)
●「1100円デニム」が苦戦するアパレルの“起爆剤”に
イオンでは2026年9月8日、PB「トップバリュ」から「ストレッチデニムパンツ」「スウェットシャツ」「スウェットパンツ」(各1100円)を数量限定で発売した。価格を従来商品の約3分の1に抑えている。
イオンでは、トップバリュの中でも「安さ」に重点を置いたシリーズ「トップバリュベストプライス」において、2026年から衣料品のラインアップを強化している。同シリーズが好調に推移しており、低価格のカジュアル衣料に着目した。
「家族」をターゲットに据える同社のデニムは、日常的な“使いやすさ”を重視した。素材は綿を主体に、ポリエステル、レーヨン、ポリウレタンを使用し、ストレッチの効いたソフトな着心地に仕上げた。レディースは「ストレート」と「ワイド」の2種類、メンズは18サイズを展開し、子ども向けも用意した。
低価格の背景には、さまざまな工夫がある。通常とは異なり、本商品ではグループ全体でデニムパンツの需要を集約し、工場の閑散期を狙い、カンボジアの工場で一括生産した。また、裁断やファスナーの取り付けなど、従来は人手で行っていた一部工程を自動化した。
想定を超える販売状況で、9〜10月の2カ月の販売予定数量を約1カ月で達成したという。販売数は非公開だが、デニムパンツ全体で昨年同時期の約10倍を目標としている。すでに、人気サイズは完売している。
「GMS(総合スーパー)事業において、衣料品は非常に苦戦しています。そんな中、『1000円デニムパンツ』を発売し、お客さまを呼び込む効果がありました。これが同製品の最大のメリットだと考えています」(イオンリテール 小田嶋氏)
節約志向が高まり、衣料品にかける支出が減少傾向にある中、小田嶋氏が言うように、GMS業界の衣料品事業は低迷している。イオンでは、2026年2月期のGMS事業の営業利益率が0.58%だった。そうした中、「1100円デニムパンツ」が衣料品フロアへの集客を促す起爆剤になったわけだ。
●「1100円フリース」にも期待
イオンでは、デニムパンツに続くトップバリュの格安アパレルとして、10月1日に「マイクロフリース フルジップジャケット/カーディガン」(各1100円)を数量限定で発売(エリアによって発売日が異なる)。
小田嶋氏は、「『生地』『着心地』『サステナブル』の3つにこだわった。フルジップジャケットのほか、使い勝手のいいカーディガンもラインアップした」と説明した。
本製品は、細い糸を使用したやわらかいマイクロフリースに特殊加工を施し、ボリュームのあるふわふわとした肌触りにした。素材は100%リサイクルポリエステルを使用し、環境にも配慮。また、デジタルクロージングと呼ばれる技術を活用して、「動きやすさ」と「きれいなシルエット」を両立している。
「1000円デニムパンツは、30〜40代のご家族連れや50〜60代の方に高い支持をいただきました。この秋冬は、フリースを積極的に売っていきます。格安アパレルの今後の計画は未定ですが、販売状況を見ながら検討していきます」(イオンリテール 小田嶋氏)
両社とも、最大の課題は「圧倒的な低価格を維持すること」だという。大竹氏は「為替の変動や物流費の高騰などコストが上昇する中、お客さまが求める価格で売り続けられるのか、懸念がある」と回答。小田嶋氏は「衣替えなどお客さまの購買意欲が上がるタイミングに合わせ、ニーズのある商品をいかに計画的に生産できるかが重要だ」と答えた。
(小林香織)
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