前作の魅力は確かに「継承」! ロック様たちの“憑依芸”光る『ジュマンジ/ネクスト・レベル』

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2019年12月16日 10:02  リアルサウンド

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『ジュマンジ/ネクスト・レベル』

 冴えない大学生のスペンサー(アレックス・ウルフ)。大学へ進学したけれど、学校では友達ができず、バイト先では叱られる。なんだか暗い毎日だ。インスタを見ると高校時代の親友たちは自分と違って部活で活躍したり、海外旅行を楽しんだり、イイ感じに人生をエンジョイしてる。遠距離恋愛になった彼女も人間関係に恵まれたようで、目新しいピアスを入れていた。みんな充実してる。充実してないのは僕だけ。久しぶりの帰省でみんなと会うことになったけれど、正直億劫に思えてならない。おまけに家ではおじいちゃんが何やら文句を言っている。「僕の居場所はどこにあるんだろう?」一晩悩んだスペンサーは、最悪の決断を下してしまう。「そうだ、僕の居場所は――」翌日、スペンサーの不在に気づいた友人たちは、彼の家を訪ねる。そこには半壊状態で起動しているあのゲーム“ジュマンジ”があった……。


参考:“96年のメタラー”は何を意味する? 『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』のメッセージ


 まさかの続編である。そもそも本作『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(2019年)の1つ前、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017年)も“まさか”の続編だった。もともと『ジュマンジ』は絵本が原作で、それを基に映画『ジュマンジ』(1995年)が作られたのだが……何しろ20年も間隔がある。普通ならこんなに時間をおかないし、おまけに主演はロック様で、オリジナルのロビン・ウィリアムズとは全く違う。どうなるのかと思ったら、蓋を開けてみれば予想以上の大ヒット。数々のユーモアとド派手なアクション。そして高校青春映画の古典『ブレックファスト・クラブ』(1985年)を下敷きに、スクールカーストの中で生きていた高校生たちが、ゲームの世界で現実と全く異なる役割を与えられることで、互いに理解と友情を深め合う爽やかな青春娯楽活劇に仕上がっていた。正直、何をどうやってもコレ以上は蛇足……と思うほど完璧なオリジナルのアップグレード版だったと思う。


 なので、今回も若干の無理やり感はぬぐえない。今回は主人公の祖父(ダニー・デヴィート)と祖父の友人(ダニー・グローヴァー)もゲームの世界に入るのだが、2人の演技を完璧にトレースしたロック様やケヴィン・ハートの芸達者ぶりは楽しめるものの、この部分が本筋にうまく絡めることができていなかったように思う。特にスペンサーと老人組の絡みはもっと見たかった。また、前作であんなに愛おしかったスペンサーに、「君は何をやっておるんだね」とダメ出しをしたくなる気持ちを抱いてしまったのも残念だ。こじらせているキャラクターとはいえ、彼の行動が身勝手に見えるし、もっと明確な劇中での“償い”を求めてしまった。ただ幸か不幸か、演じるアレックス・ウルフが『ヘレディタリー/継承』(2018年)で“やらかす人”を鮮烈に演じたせいか、「まぁ、アレックス・ウルフだから仕方ないよな」という気持ちもあり、ギリ許せたが(というか心なしかシチュエーションなども含めて『ヘレディタリー/継承』に寄せていませんでしたか?)。


 こういった不満点は確かにあるものの、しかし大筋では楽しく最後まで見れてしまうのが流石だ。前作通りの謎解き→アクション→謎解きと、さながら本当のアクションゲームのようなシンプルな構成だが、先にも触れた各役者陣の憑依芸が面白く、最後まで見せてしまう。特に主演を務めるロック様ことドウェイン・ジョンソン。昔でいうチャック・ノリスやジャッキー・チェンがやっていた「人々がドウェイン・ジョンソンに求める役」、すなわち「ロック様役」を演じることが多かったが、今回はちゃんと「中身がダニー・デヴィートのロック様」を演じている。観客の期待に応えるピープルズ演技もいいが、こうした演技も大切だ(やはり芸達者な人である)。ケヴィン・ハートの老人演技に至っては不気味と言っていいほどバッチリ。そして前作で驚異の女子演技を見せたジャック・ブラックは、さらに複雑な演技を見せてくれる。この3人は見た目と中身の乖離が激しいため、出てくるだけで面白い。アクション面についても大幅にパワーアップしており、特に予告でもフィーチャーされている吊り橋のアクションは一見の価値ありだ。ともすれば何が起きているか分からなくなりそうな複雑な空間でのアクションを、それぞれの立ち位置を見せつつ、しっかりサスペンスを演出している。前作から様々な試練が登場しているが、個人的にはこれが最も手に汗を握る出来だったように思う。そして最後で……これは劇場で観てほしい。私は思わず前のめりになってしまったし、観ている間のモヤモヤも全て吹き飛んでしまった。


 『ジュマンジ』から『ウェルカム・トゥ・ジャングル』へのアップグレードは完璧だった。あの見事さに比べると、『ウェルカム〜』から『ネクスト・レベル』は「進化」という点では少し弱いように思うが、前作の魅力は確かに「継承」されている。安心安定の1本だと言えるだろう。(加藤よしき)


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