半年無職だと「罰金3万円」を科せられる「ニート罰金法」 もし日本で制定されたら?

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2015年05月12日 12:22  弁護士ドットコム

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東ヨーロッパに位置する「ベラルーシ共和国」で5月上旬に可決された法案に、日本でも注目が集まっている。1年のうち半年間「無職」で納税しなかった国民や永住者に対して、罰金を科すという。日本のネット住民の間では「ニート罰金法」との呼び名がつけられた。


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罰金の額は日本円にして約3万円。支払わない場合は拘束され、地域のボランティアをするよう命じられる。国民に健康な就労を促し、国家財政への貢献を義務付ける狙いだという。未成年者や身体に障害がある国民、55歳以上の女性と60歳以上の男性は対象外だ。



この法律は、国際人権連盟などからは「人権上問題がある」「奴隷制度と等しい」と大批判を浴びている。一方で、日本のネット掲示板を見ると「いいことだ」「是非日本でもやるべき」と肯定的な意見を述べている人が少なくない。



しかし、無職で所得のない人に「罰金」を科し、支払わなければ強制的に労働させるような法律を、日本で制定できるのか?憲法問題にくわしい村上英樹弁護士に聞いた。



●「ニート罰金法は憲法違反の疑いが強い」


「ニート罰金法を日本で創設することは、憲法違反の疑いが強く、困難だと思います」



村上弁護士はこのように切り出した。



「たしかに、憲法の27条は『全て国民は、勤労の権利を有し、義務を負う』と定めています。勤労は国民の三大義務の一つであり、憲法の根底において、勤労の尊さの価値が認められているのは間違いありません。



しかし、だからといって、法律で国民に勤労を強制できるかといえば、別問題でしょう」



なぜだろうか?



「働くことが尊いとわかっていても、すぐには働くことができない人はたくさんいます。


健康上の理由だけでなく、人それぞれのいろいろな事情や経済・社会環境などの要因が、その背景にはあります。



また、就職して就労関係が成り立つのは、個人の努力によるところもありますが、それだけでは何ともならない『縁』のような部分もあります。刑罰を背景にして、働くことを強制するのは無理があるでしょう」



●日本で制定されたら「憲法13条」に違反する?


もし仮に、日本で「ニート罰金法」のような法律が定められたとしても、「『生命、自由及び幸福に対する国民の権利』を保障する憲法13条に違反する疑いが強い」と村上弁護士は指摘する。



「もちろん、憲法は、働かないことを推奨しているわけではなく、国民が健全な勤労生活を送ることを求めています。



ですが、それを実現する方法として、ニート罰金法のような無理なやり方ではなく、多くの人が個人の能力を高めて、それを活かせる『働きやすい社会環境』を整備するような方策が求められているのだと思います」



この法案を提案した、ベラルーシのルカシェンコ大統領は、1994年から20年以上も実権を握り続けていることから「欧州最後の独裁者」とも称される人物だ。そんな国だからこそ成立した法案と思いたいが・・・。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
村上 英樹(むらかみ・ひでき)弁護士
主に民事事件、家事事件(相続、離婚など)、倒産事件を取り扱い、最近では、交通事故
、労働災害、投資被害、医療過誤事件を取り扱うことが多い。法律問題そのものだけでな
く、世の中で起こることそのほかの思いをブログで発信している。
事務所名:神戸シーサイド法律事務所
事務所URL:http://www.kobeseaside-lawoffice.com


このニュースに関するつぶやき

  • 仮に日本で「ニート罰金法」施行されたら、「疑似派遣型日雇労働者」が、業界の閑散期を狙われて、真っ先に「ニート認定」されて、罰金ならぬ原発徴用のおそれも…?!(恐)
    • イイネ!9
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