失聴を受け入れた鈴愛のひたむきさに涙 『半分、青い。』第1週と第2週は合わせ鏡のように

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2018年04月15日 06:02  リアルサウンド

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 NHK連続テレビ小説『半分、青い。』第2週「聞きたい!」では、鈴愛(矢崎由紗)の左耳が完全に失聴してしまう。朝ドラと同じタイミングで新キャストに生まれ変わった『あさイチ』、昼の朝ドラ再放送と地続きとなった『ごごナマ』での“朝ドラ受け”でも触れられていた通りに、視聴者の涙を誘った週だった。


参考:『半分、青い。』第13話では、律(佐藤健)が女子たちの憧れの的に


 視聴者が涙をしたのは、ただ悲しいからではない。鈴愛がただまっすぐに明日を見ているからだ。彼女の前向きな考え方や明るさは、晴(松雪泰子)と宇太郎(滝藤賢一)をはじめとした楡野家の家族はもちろん、幼なじみの律(高村佳偉人)の萩尾家までをも巻き込んでいく。「しっかりして、笑顔でいよう」「受け入れてそれと一緒に生きる。本人も、親も、家族も」。律の母親・和子(原田知世)が晴を励ますこのセリフは、1971年7月7日、同じ日に子供を生んだ、楡野家と萩尾家の家族ぐるみの関係性を表した言葉でもある。


 鈴愛にとって律は、笛を吹けば助けに来てくれる、英雄のマグマ大使。泣き虫のお母ちゃんを泣かせまいと、鈴愛は律の見守る河原で悲しみを爆発させて泣くのだった。


 鈴愛が晴に泣き顔を見せないのも、学校で自分の名前をバカにされたのを黙っているのも、お母ちゃんに嫌な思いをさせないため。その愛情の裏返しは、すぐ娘を怒鳴りつけてしまう晴にも言えることだ。何かとあれば反発し合っていた2人は、磁石がクルッと回転するように、耳の失聴をきっかけに再び強く結びついていく。


 悲しみと仲良く、これから先を歩いていく。そんな鈴愛の決意表明にも取れる象徴が、律とともに作ったゾートロープ。律のレコードプレイヤーを動力に、16人の小人がコトコト踊って回るのぞき絵は、彼女の中にあるキラキラと輝く左側の世界。生き物としては弱くなったけど、本能が感じるままに、世界を楽しもう。鈴愛の力強く、たくましい気立てに、皆が笑みを見せ、涙をこぼす。「鈴愛の左側楽しいね」。そう呼びかける晴の心に、鈴愛への不安は消え去っていた。宇太郎と祖父・仙吉(中村雅俊)に挟まれ川の字に寝ていた鈴愛。今度は、仲良くお母ちゃんと夢の話をしながらギューっとする鈴愛と晴の姿には、心を掴まれる。


 鈴愛が半分だけ雨が降っていると晴に話しかけるシーン。実際にも、モノラルのRからのみ雨の音が流れていることで、脚本の北川悦吏子のツイートを中心に話題になっている。その直後に、晴が返す「鈴愛の左側はいつだって晴れやね」という言葉も、“半分、青い。”の考え方につながる大事なセリフだ。


 第1週「生まれたい!」は、永野芽郁が演じる鈴愛に、佐藤健演じる律が傘を差し出すシーンからタイトルバック、そして幼少期編へと移っていった。対して、第2週の終わりは小学3年生の鈴愛が青空を見つめ、「半分、青い」とつぶやき、高校3年生の鈴愛が描く絵画の青「空飛ぶクジラ」へとシフトしていく。


 成長した同級生・菜生(奈緒)の登場、律の語りをバックに、バスケットゴールへの華麗なシュートで第2週は幕を下ろす。合わせ鏡のように対照的な第1週と第2週の関係性は、遊び心と作品愛に溢れた演出と、“半分、青い。”という一貫して変わらない鈴愛の心の持ち方を表しているように思う。


(渡辺彰浩)


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