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参考:2015年2月9日〜2015年2月15日のCDアルバム週間ランキング(2015年2月23日付)(ORICON STYLE)
初登場1位に始まり2位→3位→2位とセールスを伸ばし続けてきたSEKAI NO OWARIが今週5位。50万枚突破もいよいよ間近であり、うーん、と認識を改めざるを得なくなった。バンドの人気のことではない。「若者はもはやCDを買わない」という論調のことである。
ダウンロードで聴くのが普通。一曲単位で聴くからアルバムパッケージが不要。YouTubeのタダ聴きも基本。そもそも音楽に対価を払う理由がない。そんなふうに若者たちのリスニング環境を決めつけて「そりゃCDも売れないわ」「あれだけいい作品が売れないとは残念だ」などと自嘲気味に話していた音楽関係者(私も含む!)は、ちょっと猛省すべきではないか。
若者たちは音楽を欲している。切実にアルバムを買い求めている。AKBとジャニーズとEXILEが圧倒的セールスを誇るのは相変わらずだが、テレビを華やかに彩るアイドルグループが強いのはいつの時代も同じこと。「そういう世界」にはなかった価値観を見つけ「自分(たち)だけのサウンドトラック」を欲している音楽ファンは、ちゃんと今もいるのだという事実。セカオワに続いてそれを証明しているのが今週トップのONE OK ROCKである。
ワンオクにとって7枚目となる『35xxxv』は、アメリカに長期滞在しながら制作され、サウンドも歌も完全に世界対応型のロック・アルバムとなっている。クオリティが高いのは当然だが、それはただ洗練されたという意味ではない。日本人特有の細やかな展開やドラスティックな起伏は切り捨て、骨太でシンプルなメロディをドーンと聴かせる作り。まさにメインストリームのアメリカン・ロックなのだが、それは日本人にとってのリアリズム(共感を呼ぶ歌詞だとか、なんとなくせつない郷愁だとか)から遠ざかる行為でもあるだろう。だが、ワンオクの勝負はちゃんと理解されている。164,640枚、今どきのバンドとしては破格のセールスで初登場1位に輝いているのだ。
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「若者はもはやCDを買わない」はやっぱり間違いだ。「若者は洋楽を聴かない」は正しいのかもしれないが、「洋楽っぽいものを敬遠する」も間違いだろう。ワンオクとセカオワは、まったく違うかたちとはいえ、アメリカの主流サウンドと真正面からクロスすることで日本の音楽マーケットに新風を吹き込んでいるのだから。
セカオワが1位だった4週前の原稿で「バンド=リアルを歌うという風潮が変わるかも」と書いた。(参考:SEKAI NO OWARI、新アルバムが初週24万枚突破! 驚異的セールスの背景は?)今週のワンオク1位で、そのことが裏付けられたような気分になる。等身大の冴えない日々をギターに乗せて歌っていても、そりゃCDは売れないだろう。だが若者たちは音楽を欲している。壮大なファンタジーでも骨太なアメリカン・ロックでもいいが、ぼんやりした日常を打破するような音楽を、それを与えてくれる自分たち世代のスターを欲しているのだ。(石井恵梨子)
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