総務の「帰宅困難者対策」必要17品リスト 備蓄しても“見落としがち”なものとは?

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2024年09月10日 08:51  ITmedia ビジネスオンライン

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準備すべきものとは?

 8月8日の夕方、宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生した。この地震は、想定される南海トラフ巨大地震の震源域の中で起こったことから、専門家らからなる評価検討会は臨時情報の「巨大地震注意」を発表し、1週間は巨大地震に備えた防災対応を求めた。多くの総務担当者は、防災備蓄品の確認に追われたことだろう。


【画像】災害により被害を受けたオフィス、そして帰宅困難


●備えがない企業が社会を混乱させる


 そもそも、この防災備蓄品はなぜ必要とされているのか。首都圏での震災時に生じる帰宅困難者対策の一環として準備されているものの、もっと重要なことがあるのだ。それは、被災者の命を守る、ということだ。どういうことなのだろうか?


 首都圏で想定されている直下型地震が発生すると、多くの建物が倒壊し、建物内への閉じ込めが発生する。救出のために発災から3日間は、公的機関は人命救助に最大限注力することになる。重機は被災地に急行せねばならない。道路を空ける必要がある。しかし、これを帰宅困難者の波が阻んでしまいかねない。


 公共交通機関が停止し、ライフラインも麻痺(まひ)してしまったとする。企業に防災備蓄品がないと、従業員は徒歩で帰宅するしかない。東日本大震災直後の首都圏の様子を思い出してもらいたい。筆者はすし詰めの青梅街道をひたすら西に向かった。幹線道路は自宅に向かう人で、まるで満員電車のように混み合っていた。防災備蓄品がない企業が、従業員を帰宅させることにより、被災者の命が救えない事態が起きてしまうのだ。


 さらに、別の観点もある。首都圏で大規模地震が生じると、環状八号線を取り巻く古い家屋が密集している地域で、大規模火災が生じることが懸念される。


 郊外を目指す帰宅困難者の行く道に、その大規模火災が発生していたらどうだろうか。そのことに気付いても、後ろには膨大な数の人々が連なっているため避難できず、火災に巻き込まれてしまう……という二次被害も考えられる。


 つまり、大地震発生直後に従業員を徒歩で帰宅させることは、従業員の命を危険にさらすことのみならず、社会に混乱をもたらす可能性があるのだ。


●防災備蓄品を再確認


 いま一度、防災備蓄品に必要なものを確認しよう。最低でも3日間は会社にとどまれるようにするには、以下の防災備品リストを参考にしてほしい。


 防災備蓄品となると、つい食料のことばかり考えてしまいがちだが、特に重要なのが非常用トイレの確保だ。人は仮に十分な水分補給をできていなくとも、用を足したくなるものだ。時間とともにその量は拡大していく。


 衛生管理が十分でないと、夏場は臭いの問題もあり、居室にとどまることが難しくなるケースもある。水と食料、トイレも同量の準備が必要だ。「1日当たり7回分×従業員数×3日分」の用意と「仮復旧要員数×1週間分」程度は見ておくことだ。


●見落としがちなのが「配布方法」


 企業によって、防災備蓄品の管理方法はさまざまだ。段ボールの箱のまま、オフィスの奥にまるで隠すかのように置かれていたり、防災備蓄品との目印はあるものの、段ボール箱のまま積まれていたり。


 緊急時、社員がパニックになっている状態で、もし防災担当の総務メンバーが不在だったら、どのように配布すべきか誰も分からないのではないだろうか。最低限、配布の仕方のマニュアルもあわせて設置しておくことが望ましい。


 企業によっては、1人分ずつ袋に小分けしてあるケースもある。各自が持っていけば事足りるため、利便性が高い。昨今は固定席を持たないフリーアドレス制のオフィスも多い。各自の机に常備とはいかないので「目に付きやすく、たどり着くのに障壁がない適切な場所」に、小分けしておくのが良いだろう。


 緊急時はさまざまな準備も、想定通りには機能しないものだ。防災担当者が不在であるケースに備え「社員ならば誰もが、具体的に取るべき対応がすぐに分かる」状態に整えておきたい。


著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)


株式会社月刊総務 代表取締役社長/戦略総務研究所 所長/(一社)FOSC 代表理事/(一社)ワークDX推進機構 理事/ワークフロー総研 フェロー


早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)FOSC代表理事、(一社)ワークDX推進機構の理事、ワークフロー総研フェローとして、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。


著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』



このニュースに関するつぶやき

  • 震災の日は外出先だったので、50キロ以上を移動して自宅まで辿り着いた。自宅から家族の車を呼びつけて大渋滞を招いた馬鹿や、地下通路で膝を抱える難民が多くて呆れた。車を規制しないと救急車が動けんぞ。
    • イイネ!8
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