こんにちは。結婚相談所「マリーミー」で代表を務める植草美幸です。『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)での特集をはじめ、各種メディアで見たことがある――なんて方もいらっしゃるでしょうか。
マリーミーは設立15年となり、現在では年間約6500件もの結婚や恋愛にまつわる相談を受けています。これだけの相談を聞いていると、多くの問題はいくつかの類型に分けられ、それぞれに存在する鉄板の解決策が見えてくるものです。人間関係は十人十色のようで、対応には同工異曲の趣があります。
リニューアルした本連載では、「結婚後のリアル」な悩みにお答えしていきます。ただ、結婚や同棲中の方だけでなく、お相手選びに迷いのある婚活中の方にも参考となるよう、手加減なしの“辛口”モードです。心してお付き合いくださいね。
◆現代の「嫁・姑問題」は、激しい二極化が…
古より語り継がれる、嫁・姑問題。かの文豪・森鴎外も頭を抱えていたと聞きます。では21世紀も四半が過ぎた現在はどのようになっているかと言いますと、激しい二極化が進行している印象です。
SNSで「実の母親より義母が好き」「義母が神すぎる」といった投稿はたびたびバズっていますが、そうしたお義母さんがたしかに存在する反面、昔ながらの悪いイメージそのものの、旧態依然とした嫌な“姑”もまだまだ実在します。
しかし、「素敵な義母」が増え、さらにネットを通じて周知されるようになった今、嫌な姑が“嫁”に与える悪影響は否応にも増しています。
実は母離れできないなどの問題は、昨今では妻側が抱えていることも多いのですが、今回ばかりは「妻と義母」「嫁と姑」にスポットを当てていきたいと思います。ですから、「わが息子の婚活や結婚を応援したい」お母さんやお父さんも、ぜひお読みください。
◆「神」と讃えられる義母の3つの条件とは…
今の世代に「神」と讃えられるような義母とは、「干渉しない」「勝手をしない」「見返りを求めない」の3つの条件を満たす人のことです。
こう言ってしまうと、なんだか都合良く扱われているだけのような、あるいは他人行儀のようだと感じる方もいらっしゃるでしょうか。
ただ、今の若者や子育て世代くらいであれば、義実家との関係にかかわらず、常にこうした感覚でお互いに接する人が多いのです。会社の上司や同僚だけでなく、仲の良い友人同士であっても、安易に体型のことに触れるのは御法度という、現代的な価値観のもとに彼らは生きています。
そのため、いくら悪気がなくとも、境界線を踏み越えた行為がなによりNGです。最悪な姑エピソードと、最高の義母エピソードについて、実例をもとに紹介していきます。
◆離婚の原因になった風習「嫁茶」とは
バツイチでマリーミーに入会された元会員さんから聞いた話です。
前回の結婚では、彼の出身である、とある地方に“嫁いだ”そうです。ところが、その近辺には信じられない風習があったそうで、それも離婚の一因になったと言っていました。
その風習とは、彼女いわく「嫁茶」というもの。言葉だけでもいかにも因習感が漂っていますが、その内容を聞いて二度驚いたものです。
新しくお嫁さんがやってきた家があると、近所のお母様方10人弱が誘いあって「お茶」をしにやってくるのだとか。そこまでだと、コミュニティの小さな村や町では変な感じはしませんが、話題があまりにもひどかった!
◆「何回目のデートで男女の仲になったの?」と聞かれ…
「子供はまだなの?」程度でも、今では大いにひんしゅくを買う発言です。しかし、そこで耳にしたのは、「知り合って何回目で付き合ったの?」「何回目のデートで男女の仲になったの?」「今は週に何回くらいしてるの?」など、想像を絶する下世話さ、かつ失礼な質問のオンパレードだったそう。
そうした習慣が町に仮にあったとしても、せっかく地元まではるばる来てくれた、息子の大切な“嫁”ではなく、“妻”です。
ご近所間での付き合いを蔑ろにできない部分があるにしても、夫や義母が少しでも守ろうとする姿勢を見せたり、アフターフォローをしなければ、「こんな町、こんな姑、見て見ぬ振りする夫もろとも関係を断とう!」と思われてしまっても仕方のないことでしょう。
ちなみにこの話、3年ほど前の出来事だと聞いています。令和の世にあるまじき体験談ですが、こうしたこともゼロではないのが今なのでしょう。
◆「次男の妻」と折り合いが悪いと聞いていたが…
一転して「神」エピソードを紹介します。こちらもうちの元会員さんから聞いた話ですが、こちらは入会前の話でなく、成婚退会後の話です。
通常、成婚退会後は個人情報保護のために資料を全て破棄することになっているのですが、取材中であるなど特別な事情があったり、元会員の方のほうから近況のご連絡があったりして、その後の様子を聞けることがあります。
彼女もそうしたひとりで、成婚退会後にご連絡があった時に、「先生、ありがとうございます! 先生のおかげで私、今とっても幸せなんです!!」とお礼を言ってくれたのです。
成婚はまだしも、その後の結婚生活は2人の努力あってこそ……、と言いかけたのですが、「義母が『先生に言われたから』と、すっごく優しく大切にしてくださって。先生に足を向けて寝られません!」と続けざまに言われました。
実は、この女性のお相手の家は相当な資産家で、しかも夫は長男。しかし、その長男より先に結婚した弟のお相手と母親の折り合いがかなり悪いということを、夫側から聞いていたのです。
◆成婚前の約束をちゃんと守ってくれた
詳細は省きますが、なかなか大変そうでしたので、お母様に直接「今度こそ、お相手の女性を大切にしてあげてくださいね」と事前に話しました。
すると「わかりました」とおっしゃっていただけたのですが、心配だったのでさらに念押し。成婚直前に、2人にくわえてお母様も一緒にマリーミーにお呼びしました。
そこで、結婚にあたって双方で話し合って決められていた、「お子さんは小学校から私立に入れる。その学費はお母様の家が出す。新居のマンションにはピアノを入れられるようにする。披露宴は女性の希望を叶える。それもお母様の家が出す」などの条件を、あらためて私の前で確認・同意をしてもらっていたのです。
実際にその通りに事が運んだだけでも少々異次元の話ではあります。ただ、この話のポイントは「お金のかけ方」などではなく、「約束したことをちゃんと守る」ことが出来ていたということです。
くわえて、境界線を踏みにじるようなことは一切されていないと話してくれました。
◆適度な距離感が功を奏して、すっかり仲良しに
新居のマンションとは、資産家ですから自前の物件であり、お義母様たちの部屋とはフロア違いです。その距離感では、干渉も勝手もある意味やり放題のはずです。
しかし、留守中に義母が勝手に部屋に入ってくることはありません。煮物や炊き込みご飯など、あるとうれしい一品のお裾分けは「もし食べてくれるなら取りに来てね」と、連絡をくれる。
よそよそしいわけではなく、けれど押し付けがましくはないお義母様の対応から、すっかり2人は仲良くなったそうです。
今ではお義母さまから「そろそろ新しい家電はどう?」と言われ、一緒に家電量販店へ“しょっちゅう”行っているそうです。しょっちゅうとは、各製品の新商品が出るたびに(!)買い換えているのだとか。
資産家の方ゆえ、金銭感覚自体は特殊であり、真似しようもする必要もないのですが、おそらくお義母様は「◯◯してあげている」といった感覚からではなく、「一緒に楽しくお出かけ♪」といった感覚で誘われているのでしょう。
この誘いが“ありがた迷惑”にならない関係を築けたことこそが、教訓になりうるのではないかと思うのです。
数カ月1年使っただけの家電に不自由を感じることはありません。いくら新しい家電を買ってもらえると言ったって、お義母様が嫌いであれば、その買い物も断ってしまっているはずですから。
◆「どんな義母か」考えてみるべき
昨今は時代感覚・常識感覚の個人差が、かなり大きくなっている状況にあります。
他方で、物価の上昇が著しいので現役世代の手取りはどんどん減り、子育てをするにも家を買うにも、実家からの援助がなければ難しいという方も多くなっています。
核家族化は相変わらずでも、実家の存在感は、もしかすると20〜30年前より大きくなってもいそうです。
そうしたなかで「素敵な義母」は、息子の婚活にプラスの要素になったり、夫婦関係の円満にも一役買える存在ですし、その反対の「悪しき姑」は、多方面で足を引っ張ってしまう存在に。
母親の立場としても、息子の立場としても、「どんな義母か」「どんな義母になりそうな印象を与えているか」は、既婚・未婚問わず、考えてみたほうがよいでしょう。
特に注意してほしいのが、士業をはじめとした、自営業・家族経営のご家庭です。「嫁いでもらうからには当然、仕事も手伝ってもらう」といった前提で、こき使われるようなイメージを与えるようであっては、息子の婚期が遅れるか、早々にバツありになってしまうかの二択となることを、ゆめゆめお忘れなきように!
「干渉しない」「勝手をしない」「見返りを求めない」を合言葉に、素敵な「妻・義母」関係を築いてください。
<TEXT/植草美幸>
【植草美幸】
結婚相談所マリーミー代表取締役、恋愛・婚活アドバイザー。 1995年にアパレル業界に特化した人材派遣会社エムエスピーを創業。そこで培ったマッチング能力・人材発掘力を生かし、2009年に結婚相談所マリーミーを設立。日々カウンセリングを行いながら、セミナーの開催、テレビやラジオへの出演など幅広く活動中。著書に『ワガママな女におなりなさい 「婚活の壁」に効く秘密のアドバイス』(講談社)、『モテ理論』(PHP文庫)など