舞台『となりのトトロ』ロンドンで無期限ロングラン決定、お父さん役・田渕大、憧れの石丸幹二と初対面対談

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2025年03月24日 15:00  ORICON NEWS

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ロンドンで無期限ロングラン公演が開幕した『My Neighbour Totoro』お父さん役の田渕大、石丸幹二(撮影:吉原朱美) (C)ORICON NewS inc.
 スタジオジブリのアニメーション映画『となりのトトロ』(1988年)を舞台化した『My Neighbour Totoro』。映画で音楽を手がけた作曲家の久石譲が発案し、日本テレビとイギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)が共同製作。2022年10月〜23年1月にロンドンのバービカン劇場で初演、23年11月から24年3月まで同劇場で再演された。そして、今月20日より、イギリス・ロンドンのジリアン・リン・シアターで無期限ロングラン公演が開幕。

【画像】ロンドン上演中の舞台写真

 本作で初演時からお父さん・タツオ役を演じる俳優・田渕大が、ロングラン公演が始まる前に一時帰国。人生で初めて観たミュージカルが劇団四季の『キャッツ』だったという田渕が憧れてやまない、俳優の石丸幹二との初対面対談が実現した。

【石丸】『My Neighbour Totoro』は、再演の初日(23年11月21日)にバービカン・シアターで拝見したんです。私はちょうど、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でハリー役を日本で演じていた頃で、少し長い休みを利用して、「ハリー・ポッター」の聖地巡りをしようとイギリスを訪れたんです。すると、『My Neighbour Totoro』がちょうど再演されるタイミングだと教えられ、知人に入手困難なチケットを確保してもらいました。田渕さんは初演から出演されているんですよね?どうですか、手応えは?

【田渕】はい、初演からやらせていただいています。まず、イギリスでこれだけ多くのアジア系の役者が一堂に集まり、大きな劇場でお芝居をするということ自体、これまでなかったことなんです。さらに言うと、5〜10年前にはアジア系の役者が舞台で活躍できる場所すらほとんどありませんでした。そんな中、「アジア系の役者が集まって何かを作っているらしい」と話題になり、チケットの発売初日(22年5月17日)に3万枚も売れて、ベネディクト・カンバーバッチ主演の『ハムレット』(15年)が持っていたバービカン劇場の初日販売記録を抜いてしまったんです。そのニュースを聞いたとき、ちょうど稽古場に「ネコバス」が届いたところで、床にふにゃっと置かれたネコバスを動かしてみたら、まるでタコみたいで(笑)。そんな試行錯誤をしていた状態の中で「記録を抜いた」と聞いて、「これはやばいぞ」と思いました。

【石丸】うれしい「やばい」ですね!

【田渕】本当にそうです。若い役者の中にはプレッシャーで泣き出してしまう子もいました。

【石丸】観客の皆さんは、映画の『となりのトトロ』を知っていたんですね。

【田渕】それが意外なことに、イギリス人のお客さんの約半分が映画版を観ていなかったらしいんです。それでも口コミや期待感で劇場に来てくださったんだと思います。

【石丸】そうなんですか!日本から遠く離れたイギリスで、昭和30年代の日本を舞台にした作品が受け入れられたのは、うれしいですね。僕も、どんなふうに舞台化されているのか、ものすごく期待して劇場に行きました。その日、ちょっとしたトラブルでカーテンが閉まったりしましたが、初日の興奮から「これも演出?」と思うくらい、わくわくしていましたね(笑)。映画版を観ていたので、英語のせりふ部分でつまづくこともなく、舞台化した意味がしっかり心に伝わってきました。視覚的にもまさに僕が好きなタイプの作品で、特に、黒子が出てきて「作ってます感」を見せつつも、観客は「目に見えないもの」として自然に受け入れていく演出が素晴らしかったです。

【田渕】おっしゃる通り、この作品では黒子が、私たちは「風子」と呼んでいますが、ストーリーテラーの役割を担い、物語を進行していきます。冒頭で、サツキとメイが引っ越してきたシーンでは、風子は素顔を見せています。そして、風子が顔を隠した瞬間から、観客は彼らの存在が「見えなく」なって、物語に集中できるような演出になっています。

【石丸】日本の歌舞伎における黒子の概念に通じますが、イギリスの観客にとっては目新しく、響いたんじゃないかと思います。そのアイデアと演出の巧みさに感動しました。そして、田渕さんが演じるお父さん(タツオ)!映画版の印象そのものでした。

【田渕】ありがとうございます。実は僕には16歳の娘と11歳の息子がいまして、2人が子どもの頃、『となりのトトロ』のサツキとメイのお父さんが出てくるたびに、「パパ、パパ」と言っていたんです(笑)。なので、この役のオーディションを受けることに、ものすごい重圧がありました。「これで役をいただけなかったら、パパじゃなかった」ってことになる(笑)。どうしても役を取りたい一心でしたが、「もし落ちたら、人生には頑張ってもダメなこともあるんだよ」と子どもたちに伝える覚悟もしていました。でも、無事に合格できて、親父の面目を保つことができました(笑)。

【石丸】本当にいいタイミングで素晴らしい作品に巡り合いましたね。

【田渕】いろいろなご縁があったと思います。僕は愛知県長久手市出身で、小学生の頃は、いま「ジブリパーク」がある辺りの野山を駆け回っていました。オーディションのときに「君にとってのトトロの森はどこか?」と質問されて、「ジブリパークです。あそこの森で遊んでいました」と答えたんですよ。

【石丸】それは向こうの人たちにも、とてもわかりやすかったでしょうね(笑)。

■ロングラン公演を成功させる秘訣を伝授

 『My Neighbour Totoro』は、これまで29万人を動員したほか、英国演劇界で最も権威のあるローレンス・オリビエ賞で演出賞など最多6冠を獲得。『オペラ座の怪人』などで知られる作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーが公演を観て評価したことから、自身が所有するジリアン・リン・シアターでの無期限ロングラン公演が決定した。『キャッツ』が生まれた劇場でもある。

【田渕】僕は初めてロングランに挑むので、その心構えや切り抜け方を石丸さんからぜひ教えていただこうと思っていました。

【石丸】劇団四季に在団中は何度も経験していますが、長期にわたってパーフェクトなパフォーマンスを維持するのは大変です。大切なのは、自分を追い詰めすぎないこと。そのためには「このくらいを維持しよう」という基準を自身で設けると良いと思います。また、劇団では、お客様との「一期一会」を意識し、毎日新鮮な気持ちで取り組むよう教えられました。そうすれば、「今日も頑張ろう」という気持ちになりますよ。

【田渕】それでもどうしても「今日は本当にダメだ」と思う日があったとき、どうやって心に火をつけていますか?

【石丸】そういう日もありますよね。でも、プロとしてステージに立つ以上、お客様の前ではベストを尽くすべきです。そこで「できる限りやろう」と割り切ることも必要です。人生そのものがそうじゃないですか。アップダウンがあっても前に進むしかありません。

 ロングランでは、同じ台本を毎日繰り返し演じなければなりませんが、それは物を作る職人と同じです。繰り返すことで、自然とベストなものが作れるようになります。舞台で大事なのは、仲間を気にかけること。つらそうな人に気づいたら、「大丈夫だからね」と声をかける。放置してしまうとチーム全体が崩れてしまいます。みんなで一つの乗り物に乗っている感覚で進むことが大切です。

【田渕】疲れたときも周りを見れば、自分だけじゃないことがわかる。みんなで助け合い、励まし合うって大事ですね。

【石丸】そうです。カンパニーのみんなで一緒に前を向いて進む。それがロングランを乗り越える鍵です。

【田渕】カーテンコールで観客の反応を見ると、やりがいを感じて励まされます。

【石丸】そうですね。お客様が感動してくださる作品に関われるというのは素晴らしいことだと思いす。ぜひ長く続けてください。僕もまた観に行きたいです。

【田渕】ぜひ、なるべく早く来てください(笑)。

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