
埼玉県の北西部に位置する本庄市。都心部のベッドタウンとしても栄えるこの地方都市で“政治とカネ”に関する噂が囁かれている。
市議会議員の寄付疑惑
同市内の団体職員の男性が次のように明かす。
「今年の1月末、本庄市内でこども食堂を運営するNPO団体『おおぞらネットワーク(以下、おおぞら)』が、公式サイトに、“ご寄付・ご協賛いただいたみなさま”と題したページを公開しました。
その中には、本庄市の市議会議員である堀口伊代子さんと、谷田裕之さんの名前が掲載されていたのです。政治に携わる人が特定の団体に金品などを寄付することは、法律で禁止されているはずなのですが……」
2月に入ってから2人の名前はひっそり削除されたという。そして3月にはサイト自体が消滅し、現在は閲覧不可となっている。
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「すでに一部の市民が問題視し、この“献金疑惑”を警察に通報したそうですが、サイトを削除した『おおぞら』ネットワークはもちろん、堀口議員も谷田議員もこの件の疑惑に関してコメントを出していないので、真相は闇の中なんです」(前出・本庄市の団体職員の男性)
今回のケースについて、弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士に見解を聞いた。
「公職選挙法199条の2は、公職の候補者等、いわゆる政治家が、当該選挙区内にある者に対して寄附することを禁止しています。その法定刑は50万円以下の罰金です」
寄付が事実であれば、やはり法に触れる可能性もある事案のようだ。寄付の有無を確認するため、『おおぞら』の代表者に話を聞いてみた。
「掲載されたお礼文は、こちらの事務局のミスです。誤って別の名簿リストを、寄付・協賛者として掲載してしまいました。この件で谷田氏や堀口氏の関係者から抗議をいただき、謝罪して訂正しております。公式サイトはこの件とは関係なく、リニューアルのために閉鎖しただけです」
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と、市議たちから寄付はなかったと回答。続けて、堀口市議に問い合わせると、
「この問い合わせが来るまで、NPO団体のサイトに私の名前が掲載していること自体、知りませんでした。『おおぞら』とは団体設立の総会に呼ばれただけの関係。私も、私の関わる団体も『おおぞら』へ寄付等はおこなっていません」
『おおぞら』側は堀口サイドから抗議があったと主張したが、堀口市議は掲載自体を把握していないと話すなど、お互いの主張が食い違うことに。
『おおぞら』側へ抗議を行う可能性
堀口市議に『おおぞら』側へ抗議等を行う可能性についてを聞いてみると、
「彼らは彼らで一生懸命やっていると思いますので……。では、私から代表に“誤解を招くので反省してください”と言っておきます」(堀口市議)
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とのこと。続いて谷田市議に問い合わせてみた。
「私の名義で寄付は出していません。ただ、私は政治活動とは別に、福祉の店の代表を務めているのですが、その前代表が独断で『おおぞら』に寄付を行なったところ、なぜか私の名前がホームページに掲載されたようです。代表とはいえ、団体名義であれば問題ないという認識でしたが勉強不足でした。ただ、私は寄付をしていませんし、金額も把握しておりません」
『おおぞら』側は、寄付・協賛者と異なる名簿を誤って公開したと説明していたが、谷田市議は団体を通して寄付があったと話すので、これもまた双方の意見が矛盾している。
「私の名前が掲載されたことは遺憾ですし、政治生命にも関わるのですでに抗議しています。この件で現状、警察からは特に問い合わせはありません。今は傍観しようと思います」(谷田市議)
谷田氏の発言が事実であれば違法性はないのか。前出の正木弁護士曰く、
「公職選挙法199条の3で、公職の候補者等が役職員または構成員である団体が、公職の候補者等の氏名が表示されたり類推されるような方法で行う寄附が禁止されています。実際の状況が分からないため断定はできませんが、谷田氏が代表を務めるお店が、谷田氏の氏名が類推されるような方法で本庄市内の団体に寄附を行っていた場合、法に抵触する可能性があります。
しかし、谷田氏がその寄附に関与していないのであれば、谷田氏自身に違反行為があったとはいえず、罰則の適用もありません」
三者三様、それぞれの見解が噛み合うことはなかったが、真相は果たして――。
◆弁護士プロフィール
正木絢生 弁護士
弁護士法人ユア・エース代表。第二東京弁護士会所属。消費者トラブルや借金・離婚・労働問題・相続・交通事故など民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。BAYFM『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などメディア出演も多数。YouTubeやTikTokの「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、配信中。