
Aさんは娘に音楽の英才教育を受けさせており、中学校でも有名私学に入学させてバイオリニストとして徹底指導をおこなっていました。オーケストラ部にも所属し、バイオリン漬けの日々を過ごしています。Aさんはその努力が報われることを願い、毎日のお弁当作りから送り迎え、そして精神的な支えまでできる限りのサポートを続けてきました。
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娘の才能は着実に開花し、少しずつコンクールでも評価されるようになっていきます。先日おこなわれた地方コンクールでは、見事上位入賞を果たし、娘の顔には達成感と自信がみなぎっていました。
そんなある日、コンクールの入賞を祝おうと週末に訪ねてきた祖父母から、思いがけない提案がありました。娘さんの演奏に目を細めていた祖父母は、「次の大きなコンクールで入賞したら、もっと素晴らしいバイオリンをプレゼントしよう」と言ってくれたのです。それは娘がずっと憧れていた、深みのある音色を奏でる名器のことでした。
Aさんにとってもそれは願ってもない申し出でしたが、喜びと同時にある懸念が胸をよぎりました。祖父母がプレゼントに考えているバイオリンは、100万円を超えるであろう逸品だったのです。娘の夢を応援したい気持ちはあるのですが、もし多額の贈与税が発生してしまったらと心配でなりません。高額のバイオリンをプレゼントされた場合、贈与税は発生するのでしょうか。正木税理士事務所の正木由紀さんに話を聞きました。
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ー高額な楽器のプレゼントで贈与税が発生する場合はありますか
原則として個人から年間110万円を超える財産をもらった場合、もらった側に贈与税がかかります。これは親子間、祖父母と孫の間でも同じです。このケースのように祖父母から100万円を超えるバイオリンをプレゼントされる場合、基礎控除額である110万円を上回る部分に対して贈与税が発生する可能性があります。
ただし、教育資金の一括贈与非課税措置が適用されれば話が変わります。この措置は祖父母や親から30歳未満の子や孫へ、教育資金として使う目的で金銭を贈与する場合、最大1,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。
ーこのケースでこの制度は使えますか?
この制度で非課税となる教育資金の範囲は法律で定められており、「学校等における教育に伴って必要となる学用品の購入費用」なども含まれています。部活動に伴って必要な費用であれば、500 万円までが非課税の対象となります。ただし学校等が資料等で業者からの購入・業者への支払を依頼したものに限ります。
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学校の授業で使う一般的な楽器であれば認められる可能性もありますが、この場合は学校が高額なバイオリンを購入するよう依頼するとは考えにくいです。贈与税が気になるのであれば、事前に学校と相談するか税理士などの専門家に詳細を確認するといいでしょう。
◆正木由紀(まさき・ゆき)/税理士 10年以上の税理士事務所勤務を経て令和5年1月に独立。これまで数多くの法人・個人の税務を担当。現在は、社労士や司法書士ともチームを組み、「クライアントの生活をより充実したものに」をモットーに活動している。私生活では2児の母として子育てに奮闘中。
(まいどなニュース特約・八幡 康二)
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