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大阪のホテル価格が高騰している。5月は平日でも1部屋1万5000円以上し、土日はさらに跳ね上がって3万円以上の部屋も増える。駅チカであれば、高級ホテルでなくても4万〜5万円以上はざらだ。2カ月先で探しても価格は以前より高い。
【画像】大阪の宿泊者ってこんなに増えたの? インバウンドが増える要因になる施設のイメージ画像も見る(計2枚)
需要を押し上げているのは大阪・関西万博だ。国内観光客のほか、海外の政府関係者や企業関係者も訪れており、高級ホテルの需要も高い。
さらに、万博閉幕後も価格は戻らないかもしれない。万博会場の夢洲ではカジノを含む統合型リゾートの建設が始まっており、30年の開業後は大阪の観光客がさらに増える可能性がある。価格はなぜ高騰し、今後どう推移するのか、大阪のホテル事情について分析していく。
●大阪のホテルは、今や都内より高い
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インバウンドの増加で東京のホテル価格は高騰している。売れた客室当たりの単価を表すADR(客室平均単価)は2024年末に2万円近くまで上昇した。平日のシングルでも1万円以下の部屋はなく、カプセルホテルでも9000円台の部屋が現れている。
大阪の客室単価は東京より低い水準が続いていたが、昨今では価格が高騰。現在の相場は東京より高い。新大阪などターミナル駅近辺の部屋は平日シングルでも1万5000円以上し、土日は3万円が最低ラインだ。土日で2万円台に抑えるには大阪市ではほぼなく、北は茨木や高槻、南は堺まで離れなければならない。大阪のアパホテルは昨年の同時期と比較して1.5倍高騰しているという。
価格が高騰しているのは、万博で需要が高まっているためだ。参考までに大阪市内の「東横イン」で部屋を探してみると、平日は1万5000〜2万円で、土日は部屋が埋まっていることも多い。
●宿泊者数はコロナ前超え、インバウンドがけん引
万博で高騰しているとはいえ、大阪のホテル価格は長期的に上昇してきた。大阪府内にあるホテルのADRは、2024年が1万9569円。2021年の2倍以上に膨らんでいる。
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過去『出張族が悲鳴! 都内ホテル「1万円の壁」どころか2万円台へ なぜこんなことになるのか』でも解説したが、ホテルは官公庁などが発表する観光客数のデータや、周辺価格に合わせて客室単価を決定する。現在4万円台以上で供給するホテルは、ビジネスホテルの逼迫(ひっぱく)具合を見て強気な設定にしたと思われる。客室の稼働率が100%近くになる施設もあり、まさに売り手市場だ。
大阪府の年間延べ宿泊者数は2019年の約4742万人から2024年は約5645万人と、コロナ禍に減少があったものの現在は過去最高水準になっている。このうち45%を外国人が占める。日本人が依然として多数派だが、東京ではインバウンド向けホテルの価格引き上げが周辺施設の価格を吊り上げており、大阪の相場も同じ構図で上昇したと考えられる。特に英語圏のインバウンドは長期かつハイエンドの客室を選択する傾向があり、価格上昇への影響度が大きい。
高級ホテルも全体平均を引き上げている要因だ。梅田の「ザ・リッツ・カールトン大阪」は現在、平日で1部屋10万円強、休日で15万円以上の価格帯となっている。また、大阪では万博に合わせて高級ホテルの新設が進んだ。2024年8月にオープンした「フォーシーズンズホテル大阪」も平日で10万円強、休日は最低でも15万円以上である。ヒルトン系で4月にオープンしたばかりの「ウォルドーフ・アストリア大阪」も最低ラインは同価格帯だ。
現在の為替レートにおいて、先進国の外国人には日本の物価が1.5〜2倍ほど安く見える。円安が続く限り、ホテルは強気を維持してADRが高い状態は続くはずだ。
ビジネスホテルは国内勢が牙城を築いている一方、高級ホテルでは外資系の進出が相次ぐ。外資系高級ホテルは不動産の所有とホテル運営を分離するMC(管理運営受託)方式の出店が中心だ。デベロッパーがビルを所有し、ホテル企業は運営に専念するため利益率が高い。ビルのブランド向上にもつながるため、デベロッパーは外資系ホテルの誘致を強化している。誘致が進めば、相場の平均価格はさらに上昇していくとみられる。
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●大阪の高騰はまだまだ続きそう
万博の会期は10月まで。来場者数は2820万人を想定しており、うち10%強を外国人として見込む。全員が大阪府内に泊まるわけではないが、期間中はホテル価格を下支えし続けるだろう。
万博後も大阪のホテルは高い状況が続くと筆者は考えている。前述の通りインバウンドによるホテル価格への影響は大きい。その上、政府はインバウンドをさらに呼び込む方針だ。今年は国内全体で初の4000万人突破が予想されている一方、政府は2030年の6000万人を目標としている。前倒しで達成すれば、目標値をさらに引き上げる可能性もある。
価格への影響度が小さい日本人の国内旅行者数はコロナ禍以前を下回っており、人口減少と高齢化で今後も減少が進むだろう。大阪では夢洲で統合型リゾートの建設が始まっており、予定する2030年の開業後は富裕層のインバウンドも増えるはずだ。気軽な国内の旅行先としてあげられる大阪だが、今後は宿泊費の面でハードルが上がるかもしれない。
●著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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