限定公開( 4 )
情報通信研究機構(NICT)は5月14日、仮想現実(VR)空間で「自分が飛べた」という体験が、高所に対する恐怖反応を減らすという実験結果を発表した。恐怖反応の低減には従来、恐怖対象に繰り返し曝露する必要があるとされてきたが、これを覆す発見だとしている。
実験の手順はこうだ。まず、高所恐怖傾向がある人集め、地上300m相当のVR空間で板の上を歩く「高所歩行タスク」を行った。タスク中には、指に貼りつけた電極で発汗の量を皮膚電気抵抗(SCR)として計測。参加者にはさらに、11段階の恐怖レベルで「主観的恐怖スコア」(SFS)を答えてもらった。
次に、被験者を2つのグループに分けた。1つ目は、自分でコントローラーを操作しながらVR空間を自由に7分間低空飛行する飛行タスクを行う「飛行群」。2つめは、飛行群の参加者のVR飛行映像を視聴(録画された動画を受動的に視聴)するコントロール群だ。
その後、それぞれ2回目の高所歩行タスクを行い、生理的な恐怖指標(SCR)、自己申告による主観的な恐怖レベル(SFS)を計測した。
|
|
その結果、SCR、SFS双方とも2回目のほうが低かったが、飛行群はコントロール群に比べてスコアの低下率が大きかった。
実験後に行ったアンケートを通じて生理的恐怖の減少量の回帰分析を行ったところ、飛行群は、2回目の高所歩行タスク時に「自分は飛べるので落ちても危険ではない」と感じた程度が、恐怖反応の低下に関わることも分かった。
この結果は、自分の行動で安全な状態に移行できるという予測が、恐怖を消す新たなメカニズムになる可能性を示していると指摘。従来の繰り返し曝露に基づく恐怖消去とは異なる方法として今後の発展につながると期待している。
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。