日本人の大腸がん、特有変異=腸内細菌の毒素影響か―国際共同研究
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2025年05月22日 07:31 時事通信社

国立がん研究センターなどは21日、日本を含む世界11カ国の大腸がん患者981人のがん細胞を全ゲノム解析した結果、日本人症例の5割に他国ではまれなパターンの変異が生じていたと発表した。一部の腸内細菌から分泌される毒素がDNAの変異を誘発し、発がん要因として関与している可能性が高いという。論文は4月、英科学誌ネイチャーに掲載された。
国際共同研究チームは、大腸がんの発症頻度が異なる欧州や南米など11カ国の981症例について全ゲノム解析を実施。塩基配列から変異の特徴的なパターンを抽出し、地域差や年齢別の発がん要因などを調べた。
その結果、日本人患者28人の5割で、他国では2割弱しか見られない特徴的な変異パターン「SBS88」または「ID18」を確認。いずれも大腸菌などがつくる毒素「コリバクチン」が関与しているものの、日本人で頻度が高い背景や原因は分からないという。
全体の年齢別でも、この二つの変異パターンは50歳未満で70歳以上の3.3倍に上った。若年者の大腸がん患者数は世界的に増加傾向にあるといい、研究チームは「コリバクチン毒素によるDNA変異が、若年者大腸がんの重要な発症要因である可能性が示唆された」としている。
同センター研究所の柴田龍弘・がんゲノミクス研究分野長は「今後日本人の若年者症例をさらに解析して、発がん要因の解明などを進めたい」と話している。
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