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カンボジアやベトナム、アフリカなど、世界には昆虫を食べる国があります。彼らにとって昆虫は重要な栄養源であり、文化の一部です。南米ブラジルでも、先住民がアリを食べる習慣を長く受け継いできました。
近年、サンパウロ州ではアリ入りチーズが人気を集めています。このユニークな組み合わせは、どのように誕生したのでしょうか。
2020年、サンパウロ州カサパヴァの小さな町に住むカミラ・アルメイダさんは、地元に観光客を呼び込む方法を模索していました。
折しもブラジルでは新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていた時期。そんな中、彼女は先住民が古くからハキリアリを郷土食としてきたことを思い出し、アリを使ったチーズを作ることを決意しました。
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カミラさんは自らの牧場で生産するチーズに、ローストした在来種のハキリアリを加えて商品化。ブランド・Estância Silvânia(エスタンシア・シルヴァニア)を立ち上げ、チーズにはTaiada Silvania(タイアダ・シルバニア)、通称「タイアダチーズ」と名付けました。
ハキリアリを食べる文化は、数世紀以上にわたりブラジルの先住民に受け継がれてきました。そのため、カミラさんにとって「アリ入りチーズ」は突飛な発想ではなく、むしろ自然なアイデアだったといいます。
作り方はシンプル。まずハキリアリをローストし、牧草飼育牛の生乳から作ったチーズに混ぜ込みます。一見すると豆が入っているようにも見えるタイアダチーズは、甘みのあるしっかりとした食感に、アーモンドや栗を思わせる風味、フェンネルのような香り、そしてアリ特有の歯ごたえが特徴です。
販売が始まると、タイアダチーズはすぐに注目を集めました。
2021年には、フランス・トゥールで開かれた国際チーズ見本市「モンドゥ・デュ・フロマージュ・エ・デ・プロデュイ・レティエ」で銅メダルを受賞。翌年にはパリの「サロン・デュ・フロマージュ」にも出品されました。
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さらに最近では、ペルーで行われた「コパ・アメリカ・ド・ケイジョ」で最高賞のひとつ「スーパー・オロ」に選ばれています。試食した人々は「栗?」「ブラジルのトリュフ?」「チョコレート?」と不思議がり、アリだと知って驚いたそうです。
ブラジルの作家モンテイロ・ロバート(1882〜1948)が、ハキリアリを「カイピラ(田舎者)のキャビア」と呼んだ話が現地では知られていますが、その呼び名にふさわしく、いまや世界的な評価を得るチーズとなりました。
「普段からよく売れていますが、父の日や母の日といった祝日が近づくと、さらに需要が高まりますよ」
世界的に認知されるようになったタイアダチーズの喜びを、このように話すカミラさん。現在、タイアダチーズは450グラムあたり約90レアル(約2500円。記事執筆時点のレート換算)で販売されています。
カミラさんのインスタグラムアカウントには、国際大会での受賞を祝うメッセージが世界中から寄せられています。
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Globo.com「Queijo com formiga: conheça a iguaria brasileira que custa mais de R$ 200 o quilo」
Instagram:Estância Silvania
Instagram:Camilaalmeidaagro
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