AIで炎上する企業と成功する企業の明暗を分ける“違い”

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2025年11月09日 20:10  TechTargetジャパン

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 海洋ごみの回収から、レストランの顧客体験向上まで、多様な分野でAI(人工知能)技術の活用が進んでいる。その成功の鍵を握る要素とは何か。本記事は、環境保護団体やフィットネスクラブ運営企業など、さまざまな組織がAmazon Web Services(AWS)のクラウドサービスをどのように利用して価値を生み出しているのか、それを支える要素とは何かを解説する。

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●環境保全に役立つAWSとAI

 海洋ごみ問題の解決に取り組む非営利団体The Ocean Cleanupは、2040年までに海洋ごみの大部分を回収するという目標を掲げている。この目標を達成するために、同団体はどの海域を重点的に清掃するかを戦略的に決定する必要がある。こうした背景から、同団体は2025年7月、AWSの協力を得て、衛星データと浮遊追跡装置から廃棄プラスチックが集中する海域を特定するシステムを構築することを発表した。

 The Ocean Cleanupの資金調達および企業パートナーシップ責任者であるリッカルド・ファリーナ氏は、「われわれが保有するデータと新たに得られるデータを組み合わせ、プラスチック濃度が最も高い場所に船を誘導できるシステムを構築する」と説明する。これによって、作業効率を大幅に向上させることが可能になるという。

 今回の提携の中核にはAI技術がある。AWSは、The Ocean Cleanupが海洋生物を検出し、海洋ごみの回収作業に伴う影響を最小限に抑えるための、AI(人工知能)技術を活用した監視システムの開発も進めている。

 The Ocean Cleanupは以前から、目標達成に必要なデータを集めるためにAI技術を活用してきた実績がある。船に搭載したカメラで海上の浮遊物やごみの位置に関するデータを収集し、そのデータを用いてAIモデルに学習させてきたのだ。「この事例は、AI技術が環境問題の解決に貢献できることの証明だ」とファリーナ氏は述べた。

●InforとEquinoxが示すデータの重要性

 The Ocean Cleanupの事例は、AI技術を活用したツールやアプリケーションを開発する上で、データがいかに重要であるかを物語っている。

 特定の業界に特化した企業向けツールベンダーInforで、エコシステムおよび事業開発担当シニアバイスプレジデントを務めるジャンヌ・ニューベリー氏は、「AI技術の導入を成功させるには、その前提となる信頼性の高い強固なデータ基盤(AI技術活用において、データを一元的に管理する仕組み)が不可欠だ」と語る。Inforは、AWSが提供する生成AIアプリケーション開発サービス「Amazon Bedrock」を利用している。

 AI技術を効果的に利用するためのデータ基盤の重要性を示す別の企業が、フィットネスクラブを運営するEquinoxだ。EquinoxはAWSの顧客として、AWSのAIモデルやAmazon Bedrockを駆使してきた。会員データを分析し、会員ごとに最適なフィットネスコースのクラスを推奨するシステムも構築している。

 Equinoxのエグゼクティブバイスプレジデント兼CTO(最高技術責任者)であるエスワー・ベルリ氏は、「数千のクラスと数十万人の会員を有する中で、誰がどのクラスを受講すべきかを判断するには、利用傾向を分析する標準的なAIモデルを用いる」と説明する。

 生成AIの導入によって、Equinoxは推奨の提供から一歩進み、会員向けシステムの操作画面を、自然言語でのやりとりが可能なインタフェースに進化させた。これによって、会員はシステムからの応答に対して質問を重ね、自身のニーズを具体的にしていくことが可能になった。

 「会員が入力した質問をシステムが理解し、それに基づいて応答を修正できる点は、生成AIの大きな利点だ。これによって、会員はシステムと対話するように、満足のいく答えを得られるようになった」とベルリ氏は語る。

 活用中のデータに加え、Equinoxは将来的に、生体データや血液データといったより詳細な情報をAIモデルに与えて、新たな価値を生み出すことを視野に入れている。ベルリ氏は、「より高度なサービスを求める会員に対し、AI技術をどのように活用して、より良い推奨事項を提供できるかが今後の課題だ」と語る。

 Equinoxは、デジタルツイン(現実世界の情報をデジタル空間に再現する技術)開発のために、より質の高い会員データを作成したいと考えている。これによって、会員一人一人の目標を仮想空間で視覚的に示し、達成への道のりを具体的にイメージできるようにすることを目指しているという。

●社内外で活躍するレストランチェーンのデータとAI

 AWSと提携し、データを活用してAI技術の応用を推進している企業の例として、レストラン持株会社のDine Brands Globalがある。同社は「IHOP」や「Applebee's」といったレストランブランドを傘下に持ち、2025年6月時点で約3500件のレストランを運営している。グループ全体のIT戦略やデータ分析を本社が担うことで経営効率を高めるビジネスモデルであり、各レストランチェーンのシステムをAWSに構築している。管理対象の全データが、AWSが提供するサービス群の中に保管されているという状態だ。

 こうした背景から、Dine Brands Globalのデータサービス、デジタルおよびCRMエンジニアリング、プラットフォーム担当バイスプレジデントであるジェイソン・スアレス氏は、同社がAI技術活用の取り組みにAWSのサービスを利用するのは「ごく自然な選択だった」と語る。

 Dine Brands Globalは、構造化データ(整理された形式のデータ)と非構造化データ(文書などの形式が定まっていないデータ)という2種類のデータセットを、それぞれ異なる目的で活用し、社内外向けのアプリケーションを開発した。

 社内向けには、非構造化データを活用し、AI技術を活用した技術サポートシステムを構築した。非構造化データの例としては、社内情報共有サービス「Microsoft SharePoint」内の文書がある。このシステムは、全米に展開するフランチャイズ加盟店からの問い合わせに対し、技術サポート担当者が自然言語で迅速に応対することを可能にするものだ。本部は加盟店のITインフラを支えることで、ブランド全体のサービス品質を維持している。

 「このシステムとデータは、技術サポート担当者の業務を迅速かつ効率的にする。AIアシスタントがいなければ、これほど素早く情報を引き出すことはできない」とスアレス氏は説明する。

 社外向けには、構造化データを活用し、顧客体験の向上に役立てている。このデータは傘下のレストランIHOPの顧客プログラムから得られたもので、顧客の取引や行動に関するデータが含まれる。「この豊富なデータを基に、一人一人に合わせたサービスを提供できる。顧客体験を向上させ、有意義な価値を提供するための、私たちの事業にとって最適な取り組みだ」とスアレス氏は意義を語る。

本記事は米国Informa TechTargetの記事「Data-driven AI: how AWS partners and customers operate」を翻訳・編集したものです。一部、翻訳作業に生成AIを活用しています。

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