レストアされた『マッチのマーチ』 1月9日に千葉県の幕張メッセで開幕したカスタムカーの祭典『東京オートサロン2026』。初日午後の日産自動車ブースには、黒山の人だかりができていた。詰めかけた観客のお目当ては、KONDO RACINGの近藤真彦監督。いや、この日のこのステージには『マッチ』として登壇した、と表現するのが正しいだろう。
このステージイベントの名称は、『「マッチのマーチがあなたの街にリターンマッチ」プロジェクトお披露目イベント』。近藤監督は2024年、かつて自身がCMキャラクターを務めた初代『マーチ』を約40年ぶりに購入。マニュアルトランスミッションへの換装を始め、内外装やエンジン、足回りなど、ほぼ車両の全域が日産自動車大学校の生徒によるリレー形式の整備によりリフレッシュされ、今回のオートサロンで日産自動車ブースに展示されている。
ステージイベントでは、近藤監督からリフレッシュに至った経緯やマーチへの想いが語られたほか、日産自動車大学校の生徒たちが実際の車両を前に細かく作業の内容を説明。さらに、終盤には大物ゲストもサプライズ登場するなど、大きな盛り上がりを見せた。
■初代マーチ2台を“大人買い”。マニュアルミッションに換装
初代マーチは1982年に登場。このCMモデルを務めたのが、当時アイドルとして売り出し中の近藤監督だった。
「日産自動車さんがマーチを出すにあたって、キャラクターを探されているなかで、『近藤がいいんじゃないか』という話になったのですが、当時僕は尖っていてヤンチャな部分があったんですよね」と44年前を回想する近藤監督。
「『どういうクルマなんですか?』と聞いたら、赤のマーチの写真を見せていただいたのですが、『いや、ちょっと待てよ』と。僕はその当時、シャコタンのローレルとかシビックとか、そういった方向だったので、最初マーチの写真を見た時には『ん? ちょっと違うかな』と思ったんですよ。当時の僕は、CMをやらせていただくことの大きさが、理解できていなかったんです(笑)」
ここで会場には当時のCM映像が流されると、ファンもステージ上も大盛り上がり。
「さっき言ってたよりも、本人やる気満々ですね(笑)。このおかげで、どこに行っても『マッチのマーチ』って言われるようになって……嬉しいですね」と近藤監督。
その後、レースの世界に入ってドライバーとしても活躍した近藤監督は、現在はチームを率いる立場となったが、40年の時を経て、マーチへの愛が再燃したのだという。
「マーチは(2022年に)生産も終わってしまったけど、僕が愛しているマーチは、やっぱり初代のマーチだなって。『もう世界中、どこにもないよね?』って話をしていたら、ウチのメカニックが『ちょっと待ってください、ネットで1台見つけました』って」
念願かなって手に入れた初代マーチだが、この個体はオートマチック仕様。どうしてもマニュアル仕様にしたかったという近藤監督は、さらに1台、白のマニュアル車を“大人買い”したという。
そうしているうちに、スーパーGT・GT300クラスでのパートナーでもある日産自動車大学校の生徒から、「それ、僕らにいじらせてもらえませんか」との申し出が。まさに“渡に船”のリクエストに、「スイッチが入っちゃった」と近藤監督。こうして、全国5校の生徒たちがミッションの換装を含む初代マーチのレストアに取り組む大プロジェクトが始まった。
レストアは京都校での試走チェックの後、栃木、京都、横浜、愛媛、愛知という順で、全国5校を巡って作業が行われた。
日産自動車大学校は、自動車メーカー直系のメリットを活かし最先端の教育を行っているというが、その生徒たちがこだわり抜いて、丁寧に作業を進めたため、「もう、世界一高い日産マーチになってますね」と近藤監督もご満悦。
なお、イベントでは最後にトヨタ自動車の豊田章男会長、ホンダレーシング(HRC)の渡辺康治社長、そして日産自動車のイヴァン・エスピノーサ社長兼CEOがサプライズ登場。オートサロンならではのメーカーの垣根を越える光景が見られた。
豊田会長もマーチとそのレストア作業には興味津々の様子で、「愛知にも日産自動車大学校あるんだね。意思が強いね。あの地場で日産を選んだという」と、トヨタのお膝元である愛知の生徒にエール(?)を送り笑いをとっていた。
近藤監督は最後に「この赤いマーチが、全国の日産の販売店などでメッセージを伝えてくれたら嬉しいなと思います。今後どういう風にこのマーチを活用していくか考えたい。プロジェクトに参加していただいた学生の皆さん、先生、校長先生、理事長、そして日産の広報の皆さん、本当にありがとうございました」と挨拶して締め括った。
日産自動車ブースに置かれた『マッチのマーチ』は、文字どおり新車以上の輝きを放っている。ディテールに込められたこだわりも含め、11日までの会期中にぜひ会場でその姿を見てもらえたら幸いだ。
[オートスポーツweb 2026年01月10日]