「おいしそう」より大事なこと。プロが教える料理の本質

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2026年04月16日 21:00  クックパッドニュース

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ドラマや映画に登場する料理は、食べ物である前に「小道具」だ。そのキャラクターがどんな人物で、どんな感情でその料理を作ったのか。そこまで考えて初めて、一皿が完成する。500本以上の映像作品に携わってきたフードコーディネーターのはらゆうこさんが、クックパッドのポッドキャスト番組『ぼくらはみんな食べている』後編で語ってくれました。

500本の現場を知るフードコーディネーター


はらゆうこさんはフードコーディネーターとして、ドラマ・映画・CM・MVなど500本以上の映像作品に携わってきた。大学卒業後8年間の公務員生活を経て、30歳を前に日本最古の料理学校「赤堀料理学園」に入学。赤堀博美校長のアシスタントを経て2010年に独立し、「日本一忙しいカメラ裏の料理人」として知られる存在になった。

料理を美しく整えるだけでなく、監督の迷いを引き受け、役者のキャラクターに合った一皿を現場でゼロから起こす。そのフードコーディネーターという仕事の裏側を語ってもらった。

10数回の試作が生んだ、あのお赤飯

2023年に大きな話題を呼んだドラマ『VIVANT』。劇中に登場するお赤飯の担当が、はらさんだった。セリフの中で「とらやのお赤飯」と言及されていたため、それが目標値になった。

しかし最初の試作は、監督にあっさり否定された。「あのお赤飯、食べたことあるのか?」と問われ、「写真で見ました」と答えると、「ダメだよ!」と一喝された。小豆やささげの色だけであの濃さを出すにはどうすればいいのか。調べて試作を重ねたが「色が違う」「ツヤ感も違う」とダメ出しが続いた。
「最後の方はもう自信がなくなってしまって、『……どうですかね?』と恐る恐る持っていく状態でした」


転機になったのは、監督自身の料理レシピが現場に届いたことだ。
「この通りじゃなくてもいいし、自分で考えてやってごらん」と言われ、一度その通りに作ってみたら、スッと色が出た。作り直して持っていくと、ようやく「ああ、これだね」という言葉をもらえた。
それでも本番当日の朝、ふかしてみるといつもと色が違う。夕方からの撮影に向けて急いで作り直し、万全の準備で臨んだ。日によって色の入り方が変わる。それがお赤飯という素材の難しさだった。

綺麗に作ることだけが仕事じゃない

キャリアの初期に、忘れられない失敗がある。カレーを綺麗によそって出したとき、女優から「台本読んでる?」と言われた。「私のキャラクターは、こんな綺麗にカレーをよそう性格じゃないわ。もっと汚く、ドバッとかかっているはずでしょ」と指摘された。
「ハッとしました。本当にその通りで、すぐに盛り直しました。綺麗に作ることだけが仕事じゃないんだと、深く反省した出来事でしたね」


以来、はらさんが意識するのは料理の見た目よりも「そのキャラクターが作る料理は何か」だ。
ドラマ『おいハンサム!!』では、「このお母さんが作る目玉焼きはどういう焼き加減か」を追求し、半日ずっと目玉焼きを焼き続けた。ドラマ『正直不動産』では、キャラクターの「家族の思い出の料理」を何度も作り直してようやく「ああ、これだ」と納得してもらえた。料理一つでその人の背景や感情が伝わるからこそ、気が抜けない。

監督によっても現場の空気は変わる。明確なOKを出さない監督もいて、そういうときは「じゃあ、やりましょうか」とこちらで判断しなければならないこともある。「監督が求めているものを察知して動くのも私たちの仕事だと思っています」。

子育てで気づいた「寄り添う力」


SNSに「#帰ってから30分でご飯」というハッシュタグで日常の料理を投稿しているはらさん。500本の映像を支えてきた人の食卓はさぞと思いきや、家では徹底的にスピード重視だという。ネギはあらかじめ刻んでストックしておき、帰宅したら組み立てるだけの状態に。「タイムトライアルみたいに楽しんでやっています」。

子どもが「今日これじゃない」とわがままを言うようになってきた最近は、怒るより「じゃあ何食べる?」と妥協することも増えた。完璧を求めすぎない、相手の気分に寄り添う。それは現場で監督や役者の求めるものを察知する仕事と、どこか重なる。「周りの力を借りて楽しく食べるのが一番かなと思っています」。

「おいしい」は空間ごと、全部


これからの目標として、日本の食文化を映像を通して海外に発信するお手伝いをしたい、と話すはらさん。最後に「おいしいとは何か」を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「その料理を見た人が、その空間にいる人が幸せな気分になれること。一緒に食べている人との時間も含めて、すべてが『おいしい』に繋がっていると思います。無理に押し付けるのではなく、自然と『おいしいね』と思ってもらえる空間を作るのが私のやりたいことです」

師匠の赤堀先生に「弟子だったと言っていいですか?」と聞いたとき、「まあ、いいんじゃない?」と言ってもらえた。至るところで「弟子でした!」と豪語するのが、今のはらさんの恩返しだという。現場で頑張り続ける姿を見せることが、もう一つの恩返しだと信じながら。

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【ゲスト】

第67回・第68回(3月6日・13日配信) はらゆうこさん


フードコーディネーター
1976年埼玉県生まれ。大学卒業後8年間の公務員生活を経て、日本最古の料理学校「赤堀料理学園」に入学。赤堀博美校長のアシスタントを経て独立し、2010年に株式会社BEETAR(ビータ)を設立。ドラマ・映画・CM・MVなど映像作品への参加は500本以上。「日本一忙しいカメラの後ろの料理人」として知られる。

HP:http://fs-vita.jp
X: @RacoonYuko
Instagram: @yuko.hara1218

【パーソナリティ】

クックパッド株式会社 小竹 貴子


クックパッド初代編集長/料理愛好家
趣味は料理🍳仕事も料理。著書『ちょっとの丸暗記で外食レベルのごはんになる』『時間があっても、ごはん作りはしんどい』(日経BP社)など。

X: @takakodeli
Instagram: @takakodeli

この記事はクックパッドのポッドキャスト番組『ぼくらはみんな食べている』の配信内容を再編集した記事です。

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