スバルが販売を予告した3つの新モデル。いまだベールにおり、販売時期は未定 6月6日、ENEOSスーパー耐久シリーズ 2026 Empowered by BRIDGESTONE第3戦『NAPAC富士24時間レース』が行われている静岡県富士スピードウェイで、スバルが記者会見を開き、新たなスペックを備えた市販モデルの登場を3台同時に予告した。
会見では、取締役専務執行役員CTOの藤貫哲郎氏より、「既存の価値観にとらわれず、より気軽に楽しめるクルマづくりを目指す」という開発方針が語られ、その具体的な取り組みとしてMT仕様のWRX、BRZのコンプリートカー、新型5ドアハッチバックの企画内容が説明された。
まず、もっとも注目を集めたのがマニュアルトランスミッションを搭載するWRXの新仕様だ。スバルは2025年、現行WRX(VB型)初のMTモデル『WRX STI Sport#』を限定600台で登場させたが、その際は9000件を超える申し込みが寄せられたということで、需要に対して供給が大きく不足したことを明かし、改めて理解された市場規模とその期待に応えるべく、MTモデルの販売企画を進めていることを明かした。
新モデルには、かつてSTIモデルに採用されていたTY85型トランスミッションが搭載される予定で、一度生産中止となっていた同トランスミッションの生産ラインが再整備され、復活することになった。高い強度を持つTY85型ミッションの復活は、将来的なエンジン出力向上にも対応できる基盤づくりにつながるという。一方で電子制御センターデフ(TCCD)については、基板の生産中止により開発が遅れており、アイサイト開発チームがソフトウェアを含めた再設計を進めている段階で、現時点では投入時期を示せる状況にはないとのことだ。
続いて、BRZをベースにしたコンプリートカーの企画が進んでいることも説明された。昨年登場した『STIスポーツ Type RA』に搭載されたバランスドエンジンの軽快な特性が顧客からも高く評価されており、そのフィーリングをさらに磨き込んだ仕様を検討しているという。
方向性は過度なパワーアップではなく、回転の伸びやレスポンスを活かした軽快さを重視。既存のBRZとは異なるキャラクターを持つモデルとして開発が進められている。現時点で詳細なスペックは明かされていないが、走りの質感を重視したコンプリートカーとして位置づけられる見通しだ。
さらに、新たな5ドアハッチバックの企画も進行している。これはWRXの4ドアモデルとは別軸のコンセプトを持ち、単なるボディ形状の違いではなく、クルマとしての方向性そのものを変えるモデルとして開発されているとのこと。スバルが掲げてきた「アフォーダブルなベース車」の構築を狙うもので、装備の簡素化や素材の見直しを含め、徹底した軽量化が検討されている。
最終的な形状や仕様は今後変更される可能性があるものの、既存のアセットを活用しながら、クルマ好きのエンジニアが自らの“やりたいこと”を形にするモデルとして開発中と発表された。
今回3台の新たな市販モデルをアナウンスしたスバルは、スポーツモデルの高価格化やハイパワー偏重の流れに対し、思い込みを壊し、もっと身近に楽しめるクルマを提供したいという考えを示している。モータースポーツの現場で得た知見を商品に落とし込む姿勢が今回の3台にも反映されており、4月に新設したスポーツ車両企画室の活動として、STIとの連携を高めながら新しい価値の提示を目指す。
会見では、スバルの開発姿勢の変化についても触れられた。モータースポーツの現場で「壊して学ぶ」文化が根づきつつあり、手戻りのない静かな開発を良しとする従来の価値観からの転換を目指しているという。「何度やり直しても最終的にユーザーが喜ぶクルマができるのであれば、それを優先するべき」と藤貫氏は語り、今回予告された3台はそうした新しい開発姿勢の象徴ともいえる存在となっていく。
スバルは2027年までに複数モデルを順次公開する計画を掲げており、今回の発表はその第一歩となる。今回アナウンスされたモデルの販売時期については未定とのことだが、MT仕様WRX、BRZコンプリートカー、新型ハッチバックという3つの方向性は、いずれも“クルマ好き”に向けた明確なメッセージを持ち、今後の市販車ラインアップに新たな広がりをもたらすことになりそうだ。
[オートスポーツweb 2026年06月06日]