※写真はイメージです(Adobe Stock)―[佐藤優のインテリジェンス人生相談]―
“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに読者の悩みに答える! 今回はAGA治療を続けるべきか、ハゲを受け入れて生きるべきかで悩む39歳男性の相談について。佐藤優が丁寧に答える。
◆ハゲを克服すべきか、受け入れるべきかが問題です
★相談者★ミノさん(ペンネーム)会社員 39歳 男性
8年間、女性と縁のない生活を送っています。原因は、30歳を過ぎて進み始めた若ハゲだと思っています。40手前でかなり額が後退しています。2年前からAGA治療を始めて、若干盛り返してきましたが、明らかにムスコの勃ちが悪くなっています。薬を飲むのをやめたらハゲる。飲めば勃起力が衰える。理想はハゲを気にせず生きられるようになることですが、これといった特技も能力もない私には難しいです。どうしても周囲の目が気になってしまいます。薬を飲み続けてハゲを克服するべきか、ハゲを受け入れて生きるべきか、どちらがいいのでしょうか?
◆佐藤優の回答
お悩みについては、よくわかりました。ここでそもそも論に立ち返り、私たち人間が生物であることを再認識するといいと思います。生命誌研究者の中村桂子先生はこんな指摘をしています。
〈生きもののシステムは原則を変えずに40億年近く続いてきたのですから、持続することを考えたらみごとなシステムと言ってよいでしょう。あらゆる面から見て、これがベストだなどとは言いません。そもそも生きものの世界には、ベストという言葉はないように思います。あれこれ試しながら、なんとかうまくやっていく。多様に展開することで、全体としてロバストネス(頑強性、堅牢性)のある系をつくっているのであって、個別に見てベストはないのです。
社会性を持つ生きものとしての人間は、それぞれの地域で集合体をつくり、社会を構成しています。地球上のさまざまな地域の特性を生かした多様な社会です。まず進歩から進化への転換が不可欠であり、その鍵は多様性です。〉(『人類はどこで間違えたのか』288頁)
人間には背の高い人もいれば、低い人もいます。それと同じように髪の毛がふさふさしている人もいれば、薄い人もいます。髪の毛が薄くても、気にしない人もいれば、あなたのように気にする人もいます。これは、どちらが良いとか悪いとかいう問題ではなく、各人の趣味に属する話です。あなたの場合、AGA治療でそれなりの効果が出ているようですが、勃起力が衰えるというのは、深刻な問題と思います。医師に勃起力が衰えないようにしながら、AGA治療を続けたいと相談してみましょう。
薄毛の進行を食い止めることと、勃起力の維持が両立できないということならば、別の方法を考えてみましょう。例えば植毛です。日本の植毛技術は進んでいるので、この方法ならば確実に効果があります。ただし、お金がかなりかかります。最低でも数十万円、数百万円かかることも珍しくありません。これにかかるお金を贅沢と考えるか、必要経費と考えるかは個人の価値観によります。ただし、借金をつくって植毛することはお勧めしません。自分の経済状態という制約条件のなかで、最適解を求めるのが大人としての正しいアプローチだからです。
お金がかからずに、抜本的に問題を解決するという選択肢もあります。スキンヘッドにするのです。スキンヘッドは薄毛と異なり、一つのファッションです。私の友人にも薄毛が気になるので、思い切ってスキンヘッドにしてみたら、気持ちが楽になったという人が複数います。ぜひ検討してみてください。
★今週の教訓……人間が生物であると、再認識すべきです
※今週の参考文献『人類はどこで間違えたのか──土とヒトの生命誌』中村桂子 中公新書ラクレ
―[佐藤優のインテリジェンス人生相談]―
【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数