限定公開( 6 )
「クエッ、クエッ、クエッ、チョコボール♪」――。
1987年に放送されたテレビCMで、お笑いコンビのとんねるずが歌っていました。「懐かしいなあ」と思われた人も多いかもしれませんが、この音楽が流れるクレーンゲームのおもちゃが登場しました。
その名は「キョロクレーン缶」(森永製菓)。チョコボールの取り出し口にプリントされた「金のエンゼル1枚」または「銀のエンゼル5枚」を集めれば、必ずもらえる「おもちゃのカンヅメ」のことです。
キョロクレーン缶の特徴は、キャラクター「キョロちゃん」のカタチをした筐体の中におもちゃが入っていて、手動でアームを左右に動かし、自動で上下に移動します。
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うまくいけば狙ったおもちゃを手にできますが、森永製菓の関係者は「なかなか難しくて、狙ったおもちゃをゲットできません」と話していました。ちなみに、電源を入れると、冒頭で紹介した「クエッ、クエッ」のメロディーが聞こえてきます。
おもちゃのカンヅメといえば、缶の中にたくさんのおもちゃが入っている、といったイメージがあるかもしれませんが、それは昔の話。2020年の「走るキョロちゃん缶」は、「よ〜い、ドン!」の合図で、キョロちゃんが走り出します。
2024年の「キョロガチャ缶」は、カプセルトイのように何が出てくるのか分からない仕掛けを施しました。実際にこの景品を手にしたユーザーがXに投稿したところ、53.4万件のインプレッションがあり、話題を集めました。
そして、2025年に「キョロクレーン缶」が登場しました。
●歴代の担当者が一人で決める
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チョコボールが誕生したのは、1967年のこと。その後、おもちゃのカンヅメはずっと続いていますが、企画はどのように進めているのでしょうか。
菓子マーケティング部の中野詩菜さんに聞いたところ「カンヅメの中に何が入っているのか。実は社内でも公表していないんですよね。社長も知りません。歴代の担当者が一人で決めていて、現在の担当は私になります」とのこと。
なぜ秘密にしているのかというと、おもちゃのカンヅメの中身は当てた人しか分からないから。
カンヅメを開けるときのワクワク感を楽しんでもらうために秘密にしているそうですが、であれば社内でも秘密にしたほうがワクワクするのではないか。ということで、担当者一人が“水面下”で企画を進めているそうです。
今回、クレーン缶を採用した理由として、中野さんは「キダルト」というワードに注目しました。キダルトとは、子ども(キッズ)と大人(アダルト)を組み合わせた造語のことで、子ども心を持ち続ける大人のこと。
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現在、おもちゃ市場は「大人も遊べる」「大人でも買いたくなる」商品が盛り上がっていることもあって、中野さんは大人も子どもも楽しんでいるクレーンゲームに注目したそうです。
おもちゃのカンヅメを企画する際、担当者は「時代の空気」「流行り」などを意識しているそうです。昨年、登場した「キョロガチャ缶」も、街中でカプセルトイ専門店が増えていることを受け、企画を進めたといいます。
おもちゃのカンヅメは年に1〜2種類のペースで登場していて、今回のクレーン缶は56代目。これまでたくさんの景品が姿を現しましたが、その中で注目を集めたモノが2つあります。
1つめは、2015年の「開かずのカンヅメ」。当時の担当者は「コト消費」(モノだけではなく、体験を消費してもらうこと)に注目しました。カンヅメのフタを開けて、おもちゃを楽しんでもらう。それだけではなく、なにか体験を提供できないかと考え、謎が解けないと開かないカンヅメを開発しました。
2つめは、2017年の「しゃべる!金のキョロちゃん缶」。くちばしをなでるとキョロちゃんがしゃべり始め、なで方によってしゃべる言葉が変わるという仕掛けになっています。
また、このキョロちゃんの色は金色。「チョコボール=金のエンジェル」というイメージが強いこともあって、消費者から人気を集めたそうです。ちなみに、銀色のキョロ缶はなく、今後も未定だそうです。
●長く愛されている理由
チョコボールは来年、60周年を迎えますが、長く人気を集めている理由について、中野さんはこのように語りました。
「商品、キョロちゃん、カンヅメ――。この3つがうまくかみ合って、お客さまに楽しんでいただけているのではないかと思っています。カンヅメでいえば、金1枚、銀5枚、中身は秘密、応募方法はハガキまたは封筒のみとなっています。いまの時代であれば、QRコードでの応募も考えられますが、60年近くたっても方法を変えていません。
カンヅメのおもちゃは時代に合わせていますが、変えないところは変えない。こうした点が長く愛されている理由ではないでしょうか」
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