首都圏に富士山降灰、「自宅で生活」が基本 政府検討会が指針案

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2025年03月21日 11:47  毎日新聞

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毎日新聞

都心のビル群の向こうに見える富士山=東京都内で2020年4月、本社ヘリから宮武祐希撮影

 富士山の大規模噴火で首都圏に火山灰が降る場合の対策について、内閣府の有識者検討会(座長・藤井敏嗣(としつぐ)東京大名誉教授)は21日、「できる限り降灰区域内にとどまり、自宅などで生活を継続する」ことを住民行動の基本方針とする報告書を公表した。政府は近く指針として自治体に通知する。自宅待機に必要な備蓄や、大量の灰の処理などが課題となる。


 富士山は過去5600年間に約180回噴火を繰り返してきたが、1707年の宝永噴火を最後に300年以上確認されていない。富士山が大規模噴火すると、火口周辺に溶岩流や火砕流の被害が及ぶ恐れがあるだけでなく、人口が密集する首都圏にも大量の降灰が見込まれる。


 政府の中央防災会議が2020年に示した試算によると、「宝永」級の大規模噴火が起き、西南西の風が吹く想定では、噴火後3時間で東京都や神奈川県など広範囲に灰が積もる。わずかな降灰でも鉄道は地上の運行を停止。雨が降ると降灰3センチ以上でバイクが、10センチ以上で車も走行不能になる。宝永噴火と同様に大量の降灰が約2週間続いた場合、東日本大震災で生じた災害廃棄物の約10倍に相当する最大4・9億立方メートルの火山灰の処理が必要になるという。


 また、東京電力管内の約40万世帯が停電したり、首都圏の上水道施設の83%で水質が悪化したりする、との別の試算もある。


 今回の報告書では、降り積もる灰の厚さに応じて対策を4段階に分けた。最も影響が深刻な「ステージ4」(30センチ以上)では、降雨時に木造家屋が倒壊したり土石流が発生したりする危険があり、住民に「原則避難」を求める。


 一方、30センチ未満の場合、直ちに命の危険はないため、「自宅などで生活を継続する」こととした。平時から1週間分以上の飲料水や食料などの備蓄を推奨する。ただし、降灰が3センチ以上30センチ未満でも物資供給などの障害が長期化しそうな「ステージ3」では、要介護者は原則避難し、そうでない人も生活可能な地域への移動を検討する。


 また、道路や鉄道など灰の除去が急がれる施設だけでも阪神大震災の災害廃棄物(約2200万立方メートル)を上回る最大3100万立方メートルの降灰が見込まれることから、複数の仮置き場をあらかじめ選定しておくよう自治体に求めた。最終的には再利用や埋め立て、海洋投棄などの手段を組み合わせて処分するとした。


 報告書を基に内閣府は指針を自治体に通知し、自治体は地域防災計画に役立てる。検討会は、この指針が富士山以外の降灰対策にも活用できるとしている。記者会見した藤井座長は「噴火規模が小さくても首都圏に灰が降ることは確かだ。自宅で生活できるように日ごろから十分な備蓄が重要だ」と述べた。【大野友嘉子】



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  • なんで農作物に被害が出ることは言わないんだろう?東京食べるものがほぼ入ってこなくなると思うけど。
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