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米Googleは5月20日(現地時間)、年次開発者会議「Google I/O」をハイブリッドで開催した。例年通りスンダー・ピチャイCEOの挨拶で始まった約2時間の基調講演は昨年同様ほぼAIモデル一色で、「Gemini」という単語は95回、「AI」は92回発せられた。
本稿ではこの基調講演で発表されたことを簡単にまとめる。なお、開発者向け基調講演は別途行われており、技術的な詳細はそちらで発表された。
ピチャイ氏は、GoogleのAIへの取り組み、特にGeminiの進化について説明した。「Gemini 2.5 Pro」がコーディングベンチマークでトップになったことや、「TPU Ironwood」などのAI向けのGoogleのインフラの強みを強調した。また、同社のAI製品が広く普及していることにも言及し、同社の数十年間の研究の成果が世界中の人々にとって現実のものとなっている新しいフェーズにあると語った。
●「Project Starline」は「Google Beam」に
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2021年のGoogle I/Oで発表した3D動画でのビデオ会議システム「Project Starline」を進化させた新しいAIファーストのプラットフォーム「Google Beam」を発表した。
6台のカメラアレイがユーザーを捉え、AIがこれらを統合してほぼリアルタイムに3Dにレンダリングすることで、立体的で目の前にいるような相手と会話できるという。
米HPと協力して開発した製品を、年内に一部の顧客向けに投入する計画。詳細は数週間後にHPから発表がある。
●「Project Astra」の進化とGeminiアプリへの統合
既にPixel端末で利用できている「Gemini Live」は、周囲の世界を理解するユニバーサルAIアシスタント「Project Astra」がGeminiアプリに統合された機能だ。
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このGemini LiveがAndroidとiOSのGeminiアプリで、誰でも無料で利用できるようになる。
Project Astraのライブ機能はGoogleアプリにも統合され、「Search Live」として提供される。機能はGeminiアプリのGemini Liveとほぼ同じだが、Geminiアプリを起動せずに、Googleアプリで利用できるようになるということだ。
●Google検索の進化と「AI Mode」
Google検索の「AI Overviews」(日本では「AIによる概要」)は既に15億人以上が利用しているという。「Google検索で過去10年間で最も成功したローンチの1つ」だとしている。
新タブ「AI Mode」
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「AI Mode」は、この機能に慣れたユーザーや、より高度な検索体験を求めるユーザー向け新機能。検索画面に新たなタブとして表示される。まずは米国で同日からロールアウトする。
従来の検索の2〜3倍の長さのクエリやフォローアップの質問に対応する。デモでは、リビング用のラグを探す際、ライトグレーのソファがあるから部屋を明るく見せたいということを自然言語で入力すると候補になる商品が画像付きで表示され、フォローアップの質問として、やんちゃな子どもが4人いるという条件を追加すると、耐久性のある素材で作られた選択可能なラグに絞り込まれた。
AI Modeでは、パーソナライズされた提案が可能になる。ユーザーの許可の下、Google検索にGmailなど他のGoogleのアプリを接続することで、過去のショッピング履歴やニュースレター購読などの情報に基づいて、より関連性の高い結果を提供できるようになる。この「Personal Context」機能は、ユーザーがいつでも管理できる。
バーチャル試着から購入まで可能な「Try It On」
AI Modeの機能の1つとして、検索結果に表示された衣服をバーチャルに試着できるショッピング機能「Try It On」も発表された。
検索結果の衣服の画像に「Try it On」ボタンが表示され、それをクリックして自分の全身写真を1枚アップロードすると、AIがユーザーの写真に衣服をレンダリングして重ねて見せる。ファッションに特化してトレーニングしたカスタム画像生成モデルを使っており、生地の物理特性(ドレープ、折り目、伸縮など)を考慮して、その服がユーザーが着た場合にどう見えるかをリアルにレンダリングする。
この機能は同日から米国のSearch Labsで提供開始する。
デモでは、試着して気に入った衣服について「track price」(価格追跡)し、購入する方法も紹介された。希望するサイズや目標価格を設定しておくと、目的の服の価格が目標価格まで下がると通知が来る。
通知の内容を確認して「buy for me」をタップすると、AIエージェントがショッピングサイトで商品をカートに追加し、Google Payで決済まで完了する。この機能は米国内で数カ月中に利用可能になる予定だ。
「Deep Search」(Deep Researchとは別)
AI Modeには、「Deep Search」機能も追加される。これは、ユーザーがさらに徹底的な応答を必要とする質問に対し、深い調査をサポートするものと、Google DeepMindのデミス・ハサビスCEOは説明した。
ユーザーの質問を分解し、何十、数百もの検索を代理で実行し、膨大な情報の中から推論したレポートを数分で作成する。
この機能は数カ月中に米国のSearch Labsで利用可能になる見込み。スポーツや金融関連のクエリに対して、データソースを分析し、視覚化されたチャートをオンザフライで生成する機能
AI Modeには「Deep Research」も導入される。
●Google Labs、Imagen、Veo
Google LabsとGeminiの上級副社長、ジョシュ・ウッドワード氏は、GeminiアプリとGoogle Labsについて説明した。
Deep ResearchとCanvasの強化や、新たなコーディング製品として、非同期コーディングエージェント「Jules」を発表した。Julesは、GitHubリポジトリに接続してバグ修正やテストを自動化できる。来週中にパブリックβとして公開の予定だ。
Imagen 4
画像生成のImagenが4になり、画質が向上し、毛皮やシフォン、水滴などがよりリアルに表現できるようになる。
テキストレンダリングとタイポグラフィの精度が向上し、文字入りのポスターなども生成できるようになる。
Geminiアプリだけでなく、WorkspaceのSlides, Vids, Docsでも利用可能になった。
Veo 3
動画生成モデルのVeoは3になり、ネイティブオーディオ生成に対応した。効果音、環境音、キャラクター間の会話を生成できる。
Gemini in Chrome
デスクトップ版のChromeブラウザにAIアシスタント機能として「Gemini in Chrome」が導入される。Webページの内容を自動的に理解し、要約したり、複雑な情報を明確にしたり、レビューを比較したりする。
将来的には、複数のタブを横断したり、Webサイトをナビゲートしたりできるようになる予定。
今週中に米国で英語のChromeを使用しているWindowsおよびmacOSの「Google AI Pro」および「Google AI Ultra」(後述)加入者向けにデスクトップで展開が開始される。
●月額3万6400円の新サブスクプラン「Google AI Ultra」
今回発表された新機能を含む最先端の機能やモデルにアクセスできるサブスクリプションプランとして、新たに「Google AI Ultra」が発表された。
月額249.99ドル(日本での価格は3万6400円)で、AIの使用上限も高く、クラウドストレージ容量も30Tバイトと豊富だ。
また、これまで「Google One AIプレミアム」プランとして提供してきたAIに特化したサブスクプランを「Google AI Pro」と改称し、価格は据え置いたまま利用可能な機能を追加した。
●AI映画制作ツール「Flow」
「Flow」は、Veo、Imagen、Geminiモデルを活用し、シネマティックなクリップ、シーン、物語を作成できるよう設計された映画制作ツール。
独自の画像をアップロードしたり、Imagenを使って画像を生成したり、プロンプトや正確なカメラ制御を使ってクリップを組み立てたり、キャラクターやシーンの一貫性を維持したり、クリップをトリミングしたり延長したりできる。
音楽生成AI「Lyria 2」も同日から一部のYouTubeクリエイターなどに提供を開始した。
●Android XRのグラスはXREALも開発中
今回のGoogle I/Oでは、事前に別立てで紹介していたこともあり、Androidについては短く紹介したのみで、主に「Android XR」の進捗に重点が置かれた。
ヘッドセットとメガネをサポートするAndroid XRの最初の搭載製品は、韓国Samsungの「Project Moohan」が今年後半に発売されるという既知の情報が繰り返された。
メガネ型については、Samsungもリファレンスハードウェアを構築すること、Google自身もメガネブランドのGentle MonsterとWarby Parkerと提携してスタイリッシュなメガネの開発に取り組んでいることなどが発表された。
また開発者向け基調講演でXREALが、Android XRプラットフォーム上に構築する次世代XRデバイス「Project Aura」を発表した。
Project AuraはAndroid XRの2番目の公式デバイスになる見込み。詳細は6月開催のAugmented World Expoで発表の予定だ。
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