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STARTO ENTERTAINMENT(STARTO社)は8月13日、公式サイトで「なりすましアカウントに対する法的対応のお知らせ」を発表。同社の契約タレント・グループを装ったインターネット上のなりすましアカウントに対して、法的手続きを行ったことを明かしました。法人がフィッシングサイトに誘導するなりすましアカウント特定のために民事手続きを行うのは、日本では初のケースとみられます。
なりすましアカウントとは、第三者が他人や企業になりすまして作る偽のアカウントのこと。実在する人物や団体の名前や写真、プロフィール情報などを無断で使用し、あたかも本人であるかのように装って活動しているのが特徴です。
STARTO社は本発表内で、「契約タレント及びグループを名乗るX上のアカウントが散見され、一部のアカウントはコンサート当日にコンサートの無料配信をうたい、クレジットカード情報の入力をうながす詐欺サイト(フィッシングサイト)に誘導している事実を確認した」と発表。このほかにも契約タレントになりすまして本人のように装っているアカウントを複数確認したとしています。
STARTO社の代理人として今回の法的措置を担当する中島博之弁護士(東京フレックス法律事務所)は、なりすましには大きく分けて「詐欺・個人情報収集目的型」と「なりきり型」があると説明します。
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「詐欺・個人情報収集目的型」は、公式アカウントを装ってフォロワー数を増やし、ライブなど特定のイベント時に「無料でライブを中継する」などと謳って偽サイトへ誘導。あくまでも視聴は無料としつつ、ID作成のためだとしてクレジットカード情報の入力を求めるのが主な手口です。
一方、「なりきり型」は、別人が特定のタレントやグループになりきって投稿するのが主な手口。
例えば嵐関連のなりすましアカウントの場合、5万人がフォローする相葉雅紀さんのなりすましアカウントが、他の嵐メンバーやSTARTO社契約タレントやグループなどとSNS上でコメントしあったりリポストしあったりしている様子が見えますが、これらは全てがなりすましアカウント。ファンが本人と勘違いするようなリアルさを持つため、見分けが難しいケースも多く見られます。
一方、これらのアカウントのプロフィールには「なりきり」と説明している場合が多く、フォローしている人の中には「なりすましだと分かって双方楽しんでいるのだから問題ない」との意見を述べている人もいます。
しかし、こうした状況について中島弁護士は「『なりきり』と書けばなりすましが許されるということは決してなく、悪質な人格権侵害に変わりありません。タレントが大切なファンにどのような言葉を伝えたいか、伝えるのかは、当たり前ですがタレント本人にしかできないことです。それを第三者が本人になりすまして代弁するような行為は到底許されません」と断言します。
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中島弁護士は文字版ファスト映画(映画の起承転結をブログなどで画像を交えて詳細にネタバレするサイト)の事案に携わった経験から、「ファスト映画事件においても、『引用』と書けば場面写を無限に使用できる。結末まで詳細にネタバレしても許されるという謎のルールで運用しているサイトが多くありましたが、映画配給会社などが被害を訴えた結果、著作権法違反で検挙されている事案が複数存在します。誤った認識は非常に危険です」と警鐘を鳴らします。
こうした状況を受け、STARTO社は2025年5月から複数回、Xの運営会社(米国法人)に対して、73のなりすましアカウントについて米国連邦地方裁判所で発信者情報開示命令の申立てを実施。6月までに開示命令が下されました。
開示内容についてねとらぼ編集部がSTARTO社を取材したところ「開示情報を解析した結果、多数のなりすましアカウントがバングラデシュで運用されていたことが判明した」といい、現在は「外務省を通じて該当国に取り締まり要請を行うべく、政府と協議している」と明かしました。
また国内のなりすましアカウントについても、「代理人弁護士を通じて順次発信者情報開示請求を行っている」としました。
こうした状況を受けてSTARTO社は、なりすましアカウントをはじめとする悪質なアカウントによる被害者を防ぐための取り組みの一環として、Xアカウント「STARTO ENTERTAINMENT(Legal)」の開設・運用の開始を発表。
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同アカウントを活用して 「当社及び契約タレントに対する権利侵害行為等に関わる注意喚起や情報発信をより一層積極的に行って参ります」としました。
今後の対応については「ファンの皆さまが悪質な被害に遭うことを防ぐとともに、当社契約タレントの人格権をはじめとするいかなる権利も脅かされることなく安心して芸能活動に専念できるよう、今後もなりすましアカウント等の権利侵害に対して法的手続きを講じていく所存です」としています。
(Kikka)
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