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職場にとどまりつつも、必要最低限の業務だけをこなし、それ以上の努力を避ける――。いわゆる「静かな退職」が知られるようになって久しい。
企業の風土改革支援を手掛けるスコラ・コンサルト(東京都品川区)が、全国の一般社員・管理職2106人に実施した調査では、「静かな退職者」は全体の16.3%を占め、性別・年代を問わず均等に存在していることが分かった。「静かな退職」に至る、その背景とは?
●「仕事よりもプライベート」7割
仕事やキャリアについての考え方を問うた設問では、「会社やチームに貢献することを重視している」と回答した人は61.5%となった。また「顧客や取引先・仕事相手に喜んでもらうことを重視している」は60.7%に上り、自組織やその他のステークホルダーを重視する考えは約6割を占めた。
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一方で「仕事よりもプライベートを大事にしている」とした人は68.7%、「仕事は収入を得る手段だと割り切っている」は73.6%となり、仕事について割り切った考えを持つ人は約7割に上った。
「割り当てられた業務以上のことはなるべくやらないようにしている」と答えた人は全体の40.8%だった。そのうち「転職意向がない人」は40.0%を占めた。結果から「静かな退職」に該当する人は全体の16.3%と推定される。
●なぜ「静かな退職」に? やる気が下がった原因は
転職意向別に年代・性別の内訳を見ると、「静かな退職」に該当する人は年代・性別にかかわらず、ほぼ均等な割合で存在することが明らかになった。一方で、20〜30代は他の年代と比べて転職意向が高い傾向が見られた。この層が「割り当てられた業務以上のことをやらない」と答える背景には、転職を視野に入れた行動が影響している可能性がある。
やる気が下がった原因については「頑張ったことに対する評価や報酬が見合わない」が最も多く41.1%。「会社の体質や企業風土に不満がある」(40.0%)、「昇給・昇進がほとんど期待できない」(38.7%)と続いた。
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転職経験者に、自身の転職理由をタイプ別に分類してもらったところ、最も多かったのは「人間関係ストレス型転職」で12.8%。「ブラック逃避型転職」(12.1%)、「組織に失望型転職」(9.6%)が続いた。
一方で「目標発見型転職」は6.8%、「キャリアアップ型転職」は3.4%にとどまり、前向きな意志による転職は合計しても1割程度となった。
転職理由については、「給与・賞与・福利厚生に不満があった」が最も多く40.5%。その他「会社の体質や企業風土に不満があった」(31.9%)、「上司に不満があった」(28.0%)が上位となった。
転職を考える理由となった会社の体質や企業風土への不満について、最も多い回答は「社員を大切にしているとは感じられなかった」で47.6%。「会社や職場の問題がなかなか改善されない」(34.2%)、「長時間労働でプライベートな時間があまり確保できなかった」(26.4%)と続いた。
調査したスコラ・コンサルトは、「静かな退職」層は今は少数派だが「これからは多数派となるかもしれない」と指摘。「給与や昇進」という見えやすいハード的要因のほかに、「企業風土(社員を大切にする、意見を採り入れる、問題改善力など)や上司への不満、働き方(業務量とプレッシャー)」といったソフト的要因への対策が必要だとしている。
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調査は5月23〜26日にインターネットで実施。社員100人以上の企業に勤める20〜50代の男女2106人から回答を得た。役職内訳は、一般社員・係長868人、管理職(課長・部長)238人。
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