“生みの親”が明かすピコ太郎の現在。小児がん支援で「彼を最後の最後まで絞り切ってやろうと」

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2025年02月15日 09:20  女子SPA!

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「PPAP」で世界的な人気となった「ピコ太郎」のプロデューサー・古坂大魔王さん(51歳)。2018年から小児がん治療をサポートするチャリティなどの活動に取り組み、2024年からは病院を訪問する「LIVE EMPOWER CHILDREN 2025 LIVE TOUR IN HOSPITAL」にも参加しています。

 2月15日の「国際小児がんデー(International Childhood Cancer Day)」に合わせ、古坂さんが支援活動を始めたきっかけとなった少女との出会いや、2024年11月に病院を訪れた際の思いなどを聞きました。

◆あいりちゃんとの出会いが「小児がん」を考えるきっかけに

――古坂さんが、小児がん治療のチャリティ活動を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

古坂大魔王さん(以下、古坂):いくつかのきっかけがあるのですが、あいりちゃんという3歳の女の子との出会いが一番大きかったです。2018年の4月に、子どもの患者さんを支援する団体を通して、「小児がんの患者さんが、ピコ太郎さんのファンだから会ってもらえないですか」と連絡をもらってお会いすることになりました。

初めて会ったとき、あいりちゃんは年齢より小さく見えました。抗がん剤のために髪の毛が抜けていたのでツルツル頭で、お母さんがピコ太郎のようなサングラスやカツラ、衣装をあいりちゃんに用意してくれていました。ピコ太郎を見ると、飛び上がって喜んでくれましたね。まだ小さいから歌詞もあいまいなのにピコ太郎の曲を次々に歌ったり、部屋中飛び跳ねるようにして踊ってくれました。

仲良く遊んだあと、あいりちゃんのママの依頼があったので、翌日からの治療についてピコ太郎から伝えました。「もうすぐ手術があるね、体の中の悪いヤツをやっつけようね、頑張ってね」と言うと、あいりちゃんの表情が一変してしまったんです。検査や治療がつらいとわかっているんですね。とくに抗がん剤治療は子どもにとって物凄く苦しいものだと聞きます。ピコ太郎は打ちひしがれそうになりながらも、「また会いにくるからね」と言って別れました。

◆遊びはすべて「お医者さんごっこ」

――あいりちゃんに会って、印象に残っていることはありますか?

古坂:あいりちゃんの遊びがすべてお医者さんごっこだったことです。めったに病院から出られないので、おままごとやお買い物ごっこがわからない。お薬を飲んだり、検査や注射をすることしか知らないから、それを遊びにしていましたね。

それから何度かお手紙をいただいたり、動画を送ったりしたのですが、あいりちゃんには会えなくなっていて、同じ年の9月に、スペインでライブをしていたときにあいりちゃんが亡くなったことを知りました。呆然とする中、翌日サイン会があってたくさんの子どもたちが来てくれました。すると、1人目に来てくれたスペイン人の女の子の名前が「AIRI(あいり)」だったんです。スペインではとても珍しい名前だそうで、運命的なものを感じて、「これは何かやらないといけない」と思いました。

そして同じ年に僕の所属するエイベックスの社員だった保屋松靖人さんが、小児がんの子どもたちを支援する一般社団法人「Empower Children(エンパワー・チルドレン)」を立ち上げたことも重なり、活動に参加させてもらうようになりました。

◆子どもたちのために、ピコ太郎を限界まで絞り切りたい

――「Empower Children(エンパワー・チルドレン)」が立ち上げられたのは、なぜだったのでしょうか。

古坂:主催の保屋松さんはエイベックスのマネージャーのトップだった方なのですが、2013年にお子さんが小児がんになったんです。当時は僕の現場にも来てくれたりしていたので話を聞くことがあったのですが、何が一番大変かというと、お金だと。アメリカで治療を受けなくてはならないのですが、そのために5000万円以上かかるというんです。当時、エイベックスの皆が必死で協力して何とかお金を集めました。

そのことがあって、保屋松さんは小児がんについてもっと知ってもらえるような活動をしようと団体を立ち上げられました。ピコ太郎もぜひにとやらせてもらっています。エイベックスにはすごいアーティストが大勢いますけど、2歳、3歳の子どもたちは知らなかったりするんです(笑)。でもピコ太郎は、知らなくても楽しんでもらえる。その子たちを盛り上げるために、ピコ太郎を最後の最後まで絞り切ってやろうと思っています(笑)。

――「Empower Children」では、どんな活動をされているのですか?

古坂:病院の広いホールをお借りして、ライブをしたり、ライブを病室に生配信したり、隔離病棟の子どもたちを訪問したりしています。コロナ禍ではなかなか訪問が難しかったのですが、2024年11月からは「LIVE EMPOWER CHILDREN 2025 LIVE TOUR IN HOSPITAL」としてエイベックスのアーティストのTRFさん、hitomiさん、大原櫻子ちゃん、AAAの與くんたちと一緒に病院をまわっています。

◆子どもが産まれて、小児がんの残酷さを痛感

――病院をまわったとき、子どもたちの反応はどうでしたか?

古坂:完全に隔離された病室の子どもたちとは電話越しにしか話せないのですが、それでもガラスをバンバン叩いて喜んでくれたり、中にはお母さんに電話を渡されても持てないほど小さくて、きょとんとしてる子もいました。体調によってはずっと苦しそうな様子の子もいましたね。個室も大部屋もあって、小さな子どもたちの部屋にはアンパンマンやプリキュアのグッズがあったり。10代の女の子達の大部屋はみんな同じ人気アーティストの写真を貼っていて、ピコ太郎たちに気づくと、「うおっ!?」と驚いていました(笑)。

――親御さんたちはどんな様子でしたか?

古坂:子どもはもちろんつらいのですが、ママやパパたちもつらいんです。先日、病院を訪問したときは数日前に小児がんが発覚したばかりという親子がいました。おそらく、まだ何も受け入れられていない状態だったのだと思います。

親御さんたちは泣いてくれる方も笑ってくれる方もいて千差万別でしたが、ガラス張りの病室にいる親御さんたちは「がんを倒してやる!」と覚悟が決まっている感じの方が多かったです。悲壮感はなく、「あらっガラス越しだと反射して写真に映らないわ〜!」なんて言ってみたり、お子さんに「せっかくだから何か喋んなさい!」と元気よく声をかけたりしている方もいましたね。

小児がんの子どもたちの様子が見られる動画はネットにいろいろとあるので、ぜひ一度見てもらっていろいろなことを感じ取ってもらえたらいいなと思います。

――実際に病院を訪問して感じたことはありますか?

古坂:お医者さんが子どもたちの表情を見て、「すごい! 笑ってる」と言ってくれたりしていたので、普段よりも笑顔になってくれているなら嬉しいなと感じました。でも、子どもたちの苦しそうな姿を見ると、僕らも精神的につらくなってしまいますね。

僕も2018年に子どもが産まれたので、小児がんという病気の残酷さをより強く感じるようになりました。親にとって子どもは何よりも大切で、儚くて弱い存在です。子どものためなら、自分の命をもためらいなく差し出せます。そういう存在が、今まさに命懸けで治療しているのを見たので、「それを応援するのは自分のライフワークだ」と決めました。ピコ太郎くんに人を集められる発信力があるうちはできる限りのことをやっていきたいと思います。

<取材・文/都田ミツコ 撮影/鈴木大喜>

【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。

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  • ドトールでアメリカンを飲みながらこの記事を読んでいたら、不覚にも目と鼻がグスグスになってしまった。
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