柏原正樹 京都大数理解析研究所特任教授 ノルウェー科学文学アカデミーは26日、顕著な業績を挙げた数学者に対して贈られる2025年のアーベル賞を、柏原正樹・京都大数理解析研究所特任教授(78)に授与すると発表した。日本人の同賞受賞は初めて。
同賞は数学者ニルス・ヘンリック・アーベルの生誕200年を記念し、ノルウェー政府が02年に創設した賞で、賞金は750万ノルウェークローネ(約1億円)。フィールズ賞と並び「数学界のノーベル賞」とも称される。
授賞理由は「代数解析学および表現論、特にD加群理論の発展と結晶基底の発見に対する根本的な貢献」。同アカデミーは「誰も想像しなかった方法で驚くべき定理を証明してきた。まさに真の数学的先見者だ」と柏原氏の功績をたたえた。
柏原氏は1947年、茨城県結城市生まれ。代数解析学の中心概念である「D加群」の理論を基礎から築き上げ、現代数学の発展に寄与した。80年代には、20世紀初頭から数学者の間で懸案となっていた「リーマン・ヒルベルト問題」を解決するなど、現代数学のさまざまな分野の発展に大きく貢献。88年に日本学士院賞、18年国際数学連合のチャーン賞、京都賞などさまざまな賞を受賞している。