SNSで話題「痴漢扱い」されて駅で40分拘束された男性の告白。「駅員も警察も“結論ありき”」現場での違和感を語る

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2025年12月13日 16:00  日刊SPA!

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250番さん
 10月29日に横浜駅で起きたとされる、痴漢冤罪事件がネットを中心に話題になっている。加害者は42歳の女性で、逮捕監禁・侮辱・傷害の疑いで書類送検された。このほか、対応にあたった駅員2人も傷害の疑いで書類送検されている。
 現場ではいったい何が起こっていたのかーー被害男性・250番さん(@sabu_250)の口から直接語ってもらおう。

◆なぜか「右肩を肘打ちされた」

――10月29日、事件当日の、詳しい状況を教えてください。

250番:住所を特定されるのが怖いので、「とある駅」とさせていただきたいのですが、私は「とある駅」から通勤のために電車に乗りました。横浜駅で乗り換えをする予定でした。

 私が電車に乗り込んだ際、加害者はドア前を陣取るように立っていました。電車に乗り込むとほぼ同時に、右肩を肘打ちされたのです。私と加害者はちょうど背中合わせのようになっていて、顔などは見えませんでした。

――驚いたでしょうね。

250番:そうですね。振り返ったのですが、肘打ちをしてきたのが男性なのか女性なのか、わかりませんでした。というのも、その方はショートカットの黒髪で、黒尽くめの後ろ姿だったことから、性別を断定できなかったんです。ただ、肘打ちをされたため、いい気分ではありませんでした。

◆下車後、接触した人物からの視線を感じた

――その後、トラブルになるわけですか。

250番:いえ、その場ではトラブルにはならず、しかも車内は満員です。横浜駅について、私も降りようとしましたが、多くの人が降りるため、ごった返していました。ちょうどそのとき、件の人物の踵あたりと私のつま先がこつんと当たったのを感じました。といっても、ごくわずかな衝撃です。

――2度目の接触ですね。

250番:そうです。横浜駅で降りると、その人物が私をにらんでいました。正直、そのときでさえ、私は「女性なのかな? たぶん女性だろうな」くらいに思っていました。

――どのように感じましたか。

250番:正直、イラッとしました。肘打ちをされた挙げ句に、睨まれているわけですから。そして、睨んだままの加害者に対して、「さっきから何なんですか? 肘打ちしましたよね?」と投げかけたんです。お恥ずかしながら、もともとヤンチャをしていたもので、怒りのままに声をかけました。

◆思わぬカウンター「痴漢です!」

――先方のリアクションはどうでしたか。

250番:それが、意外にもなかったんですよ。特に言い返してきたりもなくて。あとから考えると、たぶん私に何かを言われるとは思っていなかったのでしょう。私は「言ってやった」という気分で、乗り換え予定の電車が来るのを待っていました。

 すると突然、「痴漢です! 痴漢が逃げました、捕まえてください!」と叫んだんです。そのときにようやく、「あ、女性だったのか」と思いました。

――驚きの急展開ですね。どうなりましたか。

250番:長髪の男性――のちに大学生だとわかるのですが、近づいてきて、女性に話しかけていました。「捕まえたほうがいいですか?」「捕まえてもらえると助かります」みたいなやり取りをしていました。ただ、私は痴漢などまったく身に覚えがないため、その場で電車を待っていたんです。すると、私の身体の右側を大学生が、左側を女性が掴んで、駅の改札近くにある駅員さんがいるところへ突き出されてしまったんです。

 大学生は、駅員に私を引き渡すといなくなったので、いまだにどこにいるのかわかりません。

◆駅員は「最初から私を痴漢だと決めつけていた」

――駅員さんの対応はどうでしたか。

250番:私には、最初から私を痴漢だと決めつけているように感じました。というのは、何度も「痴漢をしていない」と言っても、「いいから動かないで」などといって聞く耳を持ちません。こちらも証拠を記録しなければいけないと思って、動画を回し始めました。すると、どんどん駅員さんも語気が強くなっていきました。スマホの動画を見返してみると、駅員さんが私のスマホを叩いて揺らしているような様子が残っています。

 何人もの駅員さんに羽交い締めにされて、掴まれたりしましたが、誰に何をされたのかは完全に覚えていないんです。ただ、のちに警察が駅の監視カメラを確認したところ、後ろから私を掴むようにしている駅員さんがいたことがわかっています。

 駅員さんのなかに、ひとり、こちらを侮蔑するような目で見てきた人がいて、非常に不愉快だったことは覚えています。

――そのあとは警察がくるわけですか。

250番:そうですね。駅員さんが警察に通報して、神奈川県警戸部警察署の生活安全課の刑事が来ました。状況はさっきと同じで、囲まれて、ちょっとでも動こうとすれば「はい、動かないで」と。私の話を聞く側の刑事と、女性の話を聞く側の刑事に分かれて、いろいろ話をされました。

◆上司の機転で「冤罪」が証明

――どこで潮目が変わるのでしょう。

250番:警察に対して身分証を見せて、「明らかに逃げも隠れもしないから、会社に行かせてほしい」と言ったのですが、無理でした。そこで、会社の上司にテレビ電話を繋いで。その方は山中裕さんという人で、東京大学経済学部を総代で卒業した人で、のちにコロンビア大学大学院で金融工学修士号を取得する投資家です。HOYAという企業の創業家の人で、知識欲が旺盛なんです。もちろん法律に関する知識もあって、警察に対して「あなたたち警察手帳見せてくださいよ。この拘束は不当じゃないですか?」と理性的に対応してくれました。何より、私は山中さんが1ミリも自分を疑わないで味方になってくれたことが嬉しかったです。

 ちょうどその頃、相手女性の話を聞いていた刑事から無線が入ったようで、どうやら私が痴漢をしていないということが伝わったようでした。

――失礼な話ですね。

250番:刑事が私のところにきて、「女性が『足を蹴られた』って言っているみたいなんだけど……」とちょっと歯切れが悪いんですよね。いつの間にか、痴漢じゃなくて蹴ったかどうかになっている。先ほども申し上げたように、降りる直前に足が当たったような感覚はありました。でも故意ではありません。何より問題がすり替わっているので、私は刑事に「痴漢の冤罪であることが証明されましたよね?」と言いました。刑事は「痴漢だと言えば、助けてくれると思ったんじゃないの」と女性を擁護するともとれる発言をしていて、それは動画にも収めました。一方で、私が痴漢ではないことは理解したようです。

◆駅員に謝罪を求めるも、取り付くしまもなく…

――どのくらいの時間、拘束されたのでしょうか。

250番:およそ40分くらいでしょうか。

――その後は、何をされましたか。

250番:私を蔑むように見てきて、高圧的だった駅員のもとに行きました。名前も覚えていましたから。「私、冤罪だということが証明されたのですが、あなた私に暴行しましたよね?」と動画を回しながら話しかけました。すると、「撮らないで、あっち行って」と謝罪や反省もありません。率直に、ナメてるなと思いました。そこで、11月5日に、女性とJRに対して被害届を出すことになりました。

――駅員さんの対応が250番さんの被害感情をさらに掻き立てたということですね。

250番:そうですね。時間軸は前後しますが、私は事件当日の10月29日に電話で謝罪を求めました。しかし連絡はなく、11月1日に直接行きました。そこでも埒が明かず、11月4日に非通知で着信がありましたが拒否設定になっているので取れず、留守電のメッセージを聞きました。そのメッセージに残されていた電話主の名前を頼りに、同日に駅員さんがいる部屋を訪ねましたが、若手職員に「◯◯なんていないよ?」とタメ口で対応されて、さらに気分を悪くしました。結局、いないとされていた担当者は実はいて、対面で話をすることができましたが。

――駅員さんのお考えはどのようなものでしたか。

250番:「すぐに謝罪しなかったことを謝罪する」という内容だったと思います。ただ、私に対して職員が暴行を働いたことを直接謝罪されることはなく、非常に悲しい気分になると同時に憤りを覚えました。

◆簡単に犯罪者に仕立て上げられてしまう

――今回の事件を通して、250番さんが思うことはなんでしょうか。

250番:まったく身に覚えのないことで、ある日何の前触れもなく加害者に仕立てられるのだなと身を持って知りました。そして、一度レッテルを貼られたら、駅員さんも警察官も“結論ありき”で物事を処理しようとしてきます。一般市民は、簡単に犯罪者に仕立て上げられてしまうでしょう。そのことに強い違和感を持ちました。

 その一方で、さまざまな知識をもって冷静に対処をしてくれる上司がいたことは、本当に幸いでした。もちろん、その方が私をきちんと信じてくれたこともです。

 また、なかなか冷静ではいられないと思いますが、動画を残すなどの証拠保全も大切なことだと思い知りました。

=====

 250番さんが遭遇したこの事件が投げかける問題は大きい。貶めようとする者の悪意が、さまざまな人の人生を壊す。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

このニュースに関するつぶやき

  • 通勤車内でぶつかる程度で痴漢扱いに出来るんなら、私はいつも痴漢の被害受けてるような物か。ぶつかられる頻度は高いが謝罪する人少なすぎ。
    • イイネ!4
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