Netflix『火花』なぜNHK総合で放送? 吉本興業による映像事業の可能性

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2017年01月21日 21:02  リアルサウンド

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 お笑いコンビ・ピースの又吉直樹による芥川賞受賞作を原作にした、動画配信サービスNetflixのオリジナルドラマ『火花』が、NHK総合で2月から放送されることが発表され、話題となっている。NHKの木田幸紀放送総局長は、1月18日の定例会見で「視聴者の方が関心をひくものは放送したい。映画や外国のドラマを放送するのと基本的に同じ」とコメントしている。


参考:ドラマ『火花』インタビュー:林遣都 × 波岡一喜が語る、表現を仕事にする苦楽


 動画配信サービスのオリジナルドラマがNHKで放送されるのは異例のことで、今後の映像業界を考えるうえでも興味深い事例といえそうだ。『ネットフリックスの時代』(講談社現代新書)の著者であるフリージャーナリストの西田宗千佳氏に、今回の発表のポイントを聞いた。


「『火花』が地上波で放送されること自体は予想の範疇だが、NHK総合で放送されることになったのは意外。本作の制作著作は吉本興業で、民放の方が好む作品かと思われたが、従来のテレビドラマ的なフォーマットとは異なる作りのため、NHK総合が向いていたのでは。たとえば民放のテレビドラマでは、CMを挟んだ際にテロップで続きを予告するなどして視聴者の関心を引くが、映画のようなトーンで制作している『火花』で同じことをすると、作品自体が台無しになってしまう可能性もある」


 『火花』は一話につき約45分〜1時間、全十話の作品で、CMを挟まず連続視聴も可能なネット配信ドラマならではのフォーマットを活かし、長尺映画のような作風に仕上がっている。しかし、今回の施策を「NHKのネット活用」と見るのは、少し意味合いが異なると同氏は指摘する。


「NHKが目指しているのは、イギリスのBBCのようなモデル。自社で制作、もしくは仕入れた映像作品を、世界中の局に提供して利益を得る狙いがある。その仕入先として、優れたコンテンツを制作できるようになったネット事業者を選んだのだろう。これまで海外の放送局から仕入れた映像作品を放送していたことの延長にある施策で、ネットの仕組みを活用していくのとは別もの」


 一方で、吉本興業が本作を手がけていることは、注目すべきことだという。


「吉本は『火花』のほかにも、松本人志による『ドキュメンタル Documental』をAmazonプライム・ビデオで配信するなど、ネット配信サービスでオリジナル作品を発表することに力を入れている。実は、吉本は民放だけではなく、CSやBSも含めて様々なパイプから作品を発表することに対して、かねてより積極的な姿勢を見せていた。通常、実写による映像作品にはさまざまな事業者が介入しているため、権利元が多岐に渡ってしまうケースが多いが、吉本は自社のタレントと制作部を使うことにより、権利を押さえている。そのため、自らのビジネス判断でさまざまな媒体にコンテンツを提供できる。地上波のフォーマットには乗り切らない作品を別のルートから発表することにおいて、吉本は先駆者中の先駆者。ネット事業者が長尺の映像制作において有力なプレイヤーとなり、地上波からも注目されるようになったいま、吉本のモデルには大きな可能性があるといえる」


 すでに高い評価を得ている『火花』だが、NHK総合の放送では評価に見合った視聴率を獲得することができるのか。テレビドラマとは異なるフォーマットによる作風が、視聴者に受け入れられるか否かは、吉本興業だけではなく、あらゆる意欲的な映像事業者にとっても試金石となりそうだ。(リアルサウンド編集部)


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  • それより、『フラーハウス』を放送してくれTV。 (´・ω・`)
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