『カルテット』でも発揮された、椎名林檎のプロデュース力 “大人の女性”の魅力を引き出す手腕

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2017年03月21日 18:03  リアルサウンド

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Doughnuts Hole「おとなの掟」

 本日3月21日に最終回を迎える、ドラマ『カルテット』(TBS系)。主演の松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平による番組限定ユニットDoughnuts Holeが歌う主題歌「おとなの掟」の作詞作曲は、椎名林檎が担当している。


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 「おとなの掟」のメインパートは、松たか子と満島ひかりが歌っている。松たか子は、2015年3月に配信リリースした「笑顔を見せて」以来、約2年ぶりの歌唱曲。また、満島ひかりは、女優としての活動を始めてから初のオリジナル曲での歌唱となる。ドラマ『カルテット』の大事なモチーフでもある「嘘」や「おとな」をテーマに、それぞれ個性際立つ歌声を披露している。


 椎名林檎は、これまでも自作の制作と並行して、楽曲提供やプロデュースワークを積極的に行ってきた。1998年の『幸福論』のデビュー直後には、当時絶大な人気を誇っていた広末涼子の「プライベイト」と、ともさかりえの「カプチーノ」などの作詞作曲を手がける。さらに、近年では、SMAPやTOKIOのほか、栗山千明、真木よう子、石川さゆり、柴咲コウ、林原めぐみといった、自身と同世代、あるいは年上の女性のプロデュースワークが目立つ。女優、演歌歌手、声優。椎名林檎がプロデュースしているのは、いわゆる「歌手」とは違い、何かを“演じる”という行為に馴染みが深い人物が中心だ。そしてその相性はとても良く、新曲が発表される度に話題を呼んでいる。


 椎名林檎の楽曲は、極めて記名性が高い。たとえ椎名林檎本人が歌っていなくとも、彼女が手がけたという“跡”がしっかりと残っている。オートチューンで加工された声や巻き舌。時に過剰に甘く繊細な歌い方と独特な節回し。そして、昭和歌謡を思わせる漢字混じりの歌詞。椎名林檎が手がける楽曲は、立ち上がりから一瞬にしてその世界に誘われる。そして、特徴的な音作りの中で、シンガーは、その世界の色に染まりながら、曲の主人公になって歌唱している。


 栗山千明、真木よう子、柴咲コウ。そして『カルテット』の松たか子、満島ひかり。みな、女優としてのキャリアは長く、その実力は高く評価されている。作品によって多種多様なキャラクターを演じるも、「可愛くて明るい女性」というよりは、どこかミステリアスで、影のある印象が強い。椎名林檎が手がけた楽曲も、まさに“大人の女性”という言葉がふさわしい、翳りを帯びた艶やかで色っぽい雰囲気をまとったものになっている。そしてどの曲も、ひとりの女性、ひとりの女優、ひとりのシンガーとして、同世代かつ同性である椎名林檎が見た視点から、既存のイメージにとらわれることなく、その魅力が最大限に引き出されている。


 「演じる」というのは、椎名林檎自身にも通ずることだろう。デビュー当初は「本能」のMVでナース服を着ていた。その後もロリータ風の少女(『勝訴ストリップ』)、花魁(『逆輸入〜港湾局〜』)、マリリン・モンローを彷彿とさせる金髪で巻き髪のピンナップガール(『日出処』)と、リリースの度に衣装も髪型もメイクも大胆に変えながら、様々なイメージを装い、ありとあらゆる女性の姿に扮してきた。その発想の豊かさやクリエイティビティは、プロデュースワークにも表れており、柴咲コウ『野性の同盟』や、林原めぐみ『今際の死神』では、作詞作曲や歌のディレクション等の他に、アートワーク等のビジュアル面も手がけている。そのプロデュースの矛先が自身に向くにせよ、他者に向くにせよ、椎名林檎の表現にとって、「女性」という性は、重要なテーマとなり得る。そのプロデューサー的な資質で、これからも様々なキャリアを持つシンガーとともに、独自の“魅せ方”を追求した良質な音楽を聴かせてほしい。(若田悠希)


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