『逃げ恥』『カルテット』『あなそれ』……TBS『火曜ドラマ』軒並みヒットの理由

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2017年06月23日 10:43  リアルサウンド

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 『あなたのことはそれほど』(TBS系)が右肩上がりの視聴率を記録し、配信数もあの『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)に匹敵する100万回超えを達成。前期熱狂的なファンを生み出した『カルテット』(TBS系)も含め、『火曜ドラマ』(22時〜)は、今最も勢いのあるドラマ枠と言っていいだろう。


参考:NHKとテレビ東京、ドラマ制作の意外な共通点 “視聴率にとらわれない”独自路線を読む


 しかし、『火曜ドラマ』が誕生したのは2014年4月であり、その歴史はわずか3年にすぎない。それまで『リンカーン』などのバラエティー番組を放送していた時間帯にも関わらず、なぜ短期間でトップクラスにのし上がれたのか。
多様な生き方を尊重し、正解を提示しない


■多様な生き方を尊重し、正解を提示しない


 スタート当初は苦戦続きだった。火曜22時は、もともとフジテレビ(関西テレビ)とNHKがドラマを放送していたため、TBSの『火曜ドラマ』は「後発である上に3番手」の扱い。刑事、弁護士、看護師、ホテルコンシェルジュとして働く女性を描いたほか、ママ友バトルや難病モノにもトライしたが、視聴率・話題性の両面で低調に終わっていた。


 しかし、昨年1月に転機が訪れる。深田恭子主演のラブストーリー『ダメな私に恋してください』がジワジワと女性の心をつかんだことで、漫画原作+ラブストーリーという明快な“背骨”を見つけた。実際、『カルテット』以外はすべて漫画原作、『重版出来!』以外はすべてラブストーリーという明確な背骨を掲げて、視聴者のターゲティングに成功。これによって『火曜ドラマ』のファンを増やしているのは間違いない。


 ドラマの内容にも“背骨”となっているものがある。それは、「多様な生き方を尊重し、正解を提示しない」という隠れコンセプト。『逃げるは恥だが役に立つ』では、職業としての主婦、独身アラフィフ、マイノリティなどの生き方を揶揄することなく尊重していたし、『あなたのことはそれほど』でも、不倫する人と不倫される人、別れを選ぶ人と別れない人、それぞれの生き方が誇張することなく淡々と描かれていた。


 「これは良い、あれは悪い」と視聴者を誘導しない。「これが正解だ」と決めつけない。むしろ、「どちらもアリなんじゃないですか?」と軽めのエールを送るようなイメージ。『あなたのことはそれほど』というタイトルの意味が、「誰が誰に対して思っていたことか?」をあいまいにしたまま終わらせたのも、その1つだろう。不倫という善悪のハッキリしたテーマにも関わらず、「視聴者に判断をゆだねます」というムードが全編を通して貫かれていた。


■火曜22時の先輩・フジとNHKの撤退


 『火曜ドラマ』躍進の理由は、その他3つある。


 最も大きかったのは、前述したライバルたちの撤退。まずNHKが2016年4月から金曜22時へ移動、次にフジテレビ(関西テレビ)も同年10月から火曜21時へ移動し、TBSの『火曜ドラマ』は唯一のドラマ枠になった。『火曜ドラマ』はそれまで不振に悩まされていたにも関わらず、「歴史が長くヒット作も多いライバルがなぜか撤退する」という幸運を得て、ドラマフリークを独占できるようになったのだ。


 また、ネットPRの巧みさと努力も忘れてはいけない。SNS、短尺動画、主題歌の使い方など、『火曜ドラマ』のネットPRは業界トップクラス。視聴者が「思わずツイートしたくなる、シェアしてしまう」投稿や、ネットメディアが記事化したくなる仕掛けを用意し、それがバズる上での導火線となっている。


 最後にもう1つ、人気バラエティー『マツコの知らない世界』からCMなしでドラマ本編がはじまるのも地味に大きい。冒頭に流される前回放送のダイジェスト版も的確で、「録画でいいや」ではなく「そのまま見よう」と思わせる小さなアシストとなっている。


 つまり、明快な“背骨”に加えて、思いも寄らぬ幸運や細部の努力が重なっての躍進と言えるだろう。7月スタートの『カンナさーん!』も渡辺直美主演の超異色作だが、10〜40代の女性層を中心に大きな反響を集めるのではないか。(木村隆志)


このニュースに関するつぶやき

  • 最近は「ドラマのTBS」って思ってる。期待感が高い。こう思わせるまで努力と工夫をしたのはすごい。フジのドラマは内容が軽そうって瞬時に思っちゃうしテレ東はTBSと違う意味で期待感がある。局のイメージって大事ね。
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