覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
■ムショの運動会でモー娘。を踊った私
元モーニング娘。の吉澤ひとみさんの逮捕には、ホンマびっくりしましたね。でもそれ以上に、この逮捕の件で私が「週刊アサヒ芸能」(徳間書店)さんから取材を受けたことは、さらにびっくりしました。うれしかったけど、焦りましたね。私なんかのコメントでええんかなと……。でも、編集者さんには「おもしろいです」とおっしゃっていただきましたよ! もう売ってないかな(苦笑)。
さて、そもそも吉澤さんがムショに行かはるかどうかですが、これは裁判所が決めることです。私はもちろんですが、ジャーナリストさんや評論家さんには決められません。せやから、あくまでも「推測」ちゅうことになりますね。かなり微妙なところです。
ちなみに私事になりますが、私が収監されていた時に、ムショの運動会でモー娘。のヒット曲「ハッピーサマーウェディング」を踊ったことがあります。とっても懐かしいです。吉澤さんがムショの運動会やカラオケ大会でモー娘。の曲をやってくれたら、めっちゃ盛り上がるでしょうね。それを見るためだけに、ムショに戻るつもりはないですけどね。
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■ムショでは有名人は「芸能人」
何回か書かせていただいていますが、ムショでは芸能人や大きな事件を起こした有名人は「芸能人」と呼ばれることが多いです。小向美奈子さんも福田和子さんも塀の中では「芸能人」。私ら懲役よりむしろ、センセイ(刑務官)たちがそう呼んではります。
もしも吉澤さんが実刑判決を受けて収監されたら、ガチの「芸能人」となります。「元」とはいえ誰でも知ってる「スター」が入ってくるのはなかなかないことなので、センセイたちも大喜びと思いますよ。実は、みんなサイン欲しいんですよ。
もちろん一般の受刑者が吉澤さんを見る機会は、まずないでしょうね。イジメやセクハラの問題を起こしたくないからです。何かあったらマスコミは黙っていませんしね。吉澤さんがかわいそうなのではなく、「事なかれ主義」なんです。
普通の新人は、「ドベ」と呼ばれて、布団の上げ下ろしから始まるムショの細かいルールに慣れるまで、かなりいじめられます。それに、かわいいコはレズに狙われることもあります。私も入浴中に後ろから耳たぶをかまれたり、アソコに指を入れられそうになったりしていました。ムショのイジメやセクハラの詳細については、拙著『女子刑務所ライフ!』(イースト・プレス)を読んでくださいね(笑)。
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もし吉澤さんがこういう目に遭ってしまったら、所長のクビに関わる問題ですよね。せやから、吉澤さんは、ずっと独居房に入れられて独りぼっち(独居拘禁)だと思います。刑務作業も独りで、洗濯ばさみを作ったりするんでしょうね。
せやけど……女子刑務所は定員オーバー気味なので、工場に出る可能性もなくはないです。あとは本人の希望があれば、とかね。ないかなあ。もしそうなったら同じムショの受刑者が、ちょっとうらやましいですね(笑)。私やったら連絡先聞いちゃうかもです。てか、もう私は刑務所には行きませんけど……。
独居拘禁なら、イジメもなく気楽といえば気楽やけど、ほとんど誰とも話さない日々が続くと、言葉を忘れてしまいます。狭い空間のストレスもあって、失語症になることも多いようです。出所してしばらくすれば元に戻りますが、時間がかかりますしね。長期刑を務めて、出所後にカウンセリングを受けたはる人もけっこういてるそうです。
いずれにしろ、ムショは何かにつけてしんどいです。ほんまに行くところやないですね。
中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)」
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