『デススト』発売記念イベントで大塚明夫が涙のスピーチ「新生コジプロが生まれ、この日を迎えられて嬉しい」

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2019年11月10日 17:41  リアルサウンド

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「『DEATH STRANDING』World Strand Tour 2019 Tokyo」の様子。

 11月10日、都内某所にて『DEATH STRANDING』World Strand Tour 2019 TOKYO」が行われた。


 同イベントは、PlayStation(R)4用ソフト『DEATH STRANDING』が11月8日に発売したことを記念したもの。ゲームクリエイター・小島秀夫氏のほか、同作に声優として参加した津田健次郎、大塚明夫、井上喜久子、水樹奈々、山路和弘、石住昭彦、三上哲が登壇し、トークセッションを繰り広げた。


(参考:主人公が疲れ、重心に影響され、靴を履き潰す……『デススト』の緻密なリアリティ


 イベント序盤では、パリ、ロンドン、ベルリン、ニューヨーク、サンフランシスコで行なったツアーの映像が映し出された。フォトセッションやサイン会など、各地の人と“繋がった”小島監督率いるコジマプロダクションの軌跡に、津田は「各地のファンの方が待っていらっしゃる様子は感動しちゃいますね」、井上は「各地の皆さんと繋がるのをTwitterで見て感動していた」とコメント。小島氏は「ヨーロッパ行ってからアメリカ行って、北米大陸をサムのように横断するのはしんどい」と笑いながらこれまでのツアーを振り返った。


 同作をプレイした声優陣の感想として、井上は「すごくゲームの得意なお友達に一緒にやってもらいながら進んでいます」と語ると、山路は「家で一人でやってたら、崖から降りる最初のところで10回ぐらい死んだ。やってるとドキドキするんだよな、あの空気」と感想を述べ、小島氏は「登るより降りるのが怖い、それはリアルと一緒なんですよね」と補足した。


 津田は「発売する前に後輩が楽しみにしていて『俺に喋りかけないでください、何も情報を入れたくないから』って行ってきたり。スタッフさんも『やっとですね!』って言ってくれた」と語り、水樹は「3ヶ月前から『予約したから!』とか。『収録行ってきて』というと『それ以上は!』って言われたり。出演されているキャストの方も豪華で、映画ファンの方も『普段ゲームやらないけどプレイしてみようと思うんだよね』と言ってくださったり」と、レコーディング時から同業・関係者もワクワクしていたと明かしてくれた。


 小島氏はこれに対し、「(映画ファンも)これを機にゲームの世界に入ってきていただいて、洋画沼からゲーム沼へ。沼から沼への橋をかけただけだから、沈むのはみなさんの自由(笑)」と、映画フリークでもある自身の作ったゲームが、シーンの架け橋になることを望んだ。


 また、主人公のサムを演じた津田は、作品から自分自身の声がしたことについて「なんか落ち着かなくて。日本語じゃないのにしたほうがいいのかなって思ったくらい」と語ると、山路は「津田くんの荷物を持っている声が生々しくて。一緒に荷物持ってる気分になるんだよ」とその演技力の高さを評価。津田が「(収録中は)サムの気分ですね。一人でずっと戦ってる気分になる」と明かすと、大塚が「よくわかるよ(笑)」と小島氏の手がけた過去作の主人公を演じた彼ならではの相槌で応え、会場に笑いが溢れる一幕も。


 続いてのコーナーである「参加者からの質疑応答」では、「自分の演じたキャラよりお気に入りのキャラはいますか?」という質問に、小島氏が「みんな好き」、津田が「皆さんと絡むので思い入れがあって難しい」と悩ましい回答を見せる一方、大塚は「中盤に出てくると思うんですけど、眼鏡をかけた女性のキャラクターが好きですね」、山路は「フラジャイルのツンとしたのが個人的に……」、三上は「僕はアメリですね。癒されます」と、なぜか男性陣は“女性の好み”トークに発展。井上は「どのキャラも大好きだけど、あえていうならBB(ブリッジ・ベイビー)。プレイしていてどうしようという時にも、BBが手を動かしてくれただけで頑張れる」と語り、水樹と石住が同調した。


 2つ目の質問である「これまでの出演作と今回は違ったなと思った部分や、監督がキャストに指示した点で変わったところ」という質問には、大塚が「今回から初めてセリフを吹きかえるときに、向こうのキャストさんが放ったセリフの長さでぴったり終わらさなければいけなくて。それが大変だった」と、英語版をベースに作成したことによる変更点を明かすと、小島は「昔は明夫さんの声から作ってて、『リキッドー!』っていう動きに合わせてたから。ああいうのって色々ルールがあるんですけど、日本語版はわりと自由にやらせていただきました」と『メタルギアソリッド』(以下、MGS)のエピソードを交えてコメント。


 井上は「監督とお仕事していて変わらないと思うのは誠実さ。声優陣にもしっかり向き合ってくださって頭が下がる思い。でも、油断するとおかしなことを言ってくるけど(笑)」と語ると、小島氏は「こういう風にやってください、といっても冗談だと思われることがたまにあって……。僕が邪魔してるとき、ありません? 水樹さんとか……」と水樹にパスを回し、彼女は「常に遊び心を忘れてない方なのかなって。レアさん(レア・セドゥ)はそっけない感じだけど、もっと色っぽくしてもらったほうが、とか」と、小島氏のディレクションに関する裏話を教えてくれた。


 これを受け、井上は「英語版を聞いてやっているけど、そこのニュアンスに引っ張られるところがあって、そこは気をつけなきゃなって」と、これも吹き替え的な収録になったからこその難しさを明かし、小島氏は「ニュアンスとして離れすぎないようにしつつ、日本っぽさを加えるように気をつけた」と補足。最後に大塚から質問者へのご褒美として、その前に小島が発したセリフを本人が実際に叫び、会場が大盛り上がりする場面も。


 そんな大塚に「今回は出撃を見送る側として、『MGS』との違いは?」という質問が飛ぶと、彼は「ミッションの内容をわかりやすく伝えることは常に心がけていた。主人公をやっているときとは違ったところかも」と回答。小島氏は「実行部隊だった人が、今度はサポートじゃないですか。英語版のトミーさんは優しく話してるけど、明夫さんは『明夫さんに言われるとやらなアカンな』と思えるような感じになりますよね(笑)」と話し手が変わったことによるニュアンスの変化を楽しそうに語った。


 また、小島氏と山路に対し「私はクリフを演じるマッツ(マッツ・ミケルセン)の大ファンなのですが、小島さんから山路さんに演じる上でこだわってもらったところは?」というクエスチョンが投げられると、小島氏は「クリフだけはキャラのことを言えないから難しい。マッツファンが多くいるので、マッツファンと山路さんのファンと僕のファンが満足してくれるようにした」とネタバレを回避しながら回答。大塚も「マッツファンも安心してプレイできると保証する。昔からすごい人だから」と山路の実力を保証した。


 主人公のサムを演じる津田には「サムを演じるにあたってのオーダーとは?」という質問がなされ、彼は「まずやってみて、シーンごとに監督から色々言ってもらった。ノーマンさんの声があるので、ニュアンスからなにから忠実にやらせていただいた」とコメント。小島氏はこれに対し「津田さんだったら大丈夫だと思った。サムって3つの顔があって。カットシーンはクールで、歩いてる時は愚痴を言って、プライベートでは違う顔なんですよ。キャラクターが多層的になっている」と補足した。


 津田が「楽しい現場だったから、終わるのが寂しかった」とこぼすと、大塚が「これって配信でミッションとかないの?」と質問し、津田が「増やそうとしてる(笑)」とツッコミ。小島氏も「大阪弁バージョンとか?(笑)」と悪ノリでこれに応えた。


 その後、イベントは小島氏が認定された2つのギネス世界記録の表彰へ。今回認定されたのは、「Twitterのフォロワー数が最も多いゲームディレクター(2,813,385/11月8日時点)」と「Instagramのフォロワー数が最も多いゲームディレクター(888,539/11月8日時点)」の2つ。ギネス世界記録公式認定員が登壇し、小島氏へ表彰状を手渡した。


 イベントの終盤には、声優陣からそれぞれ一言ずつのコメントが。三上は「僕の演じるヒッグスが出てくるところまでまだ行けていないのですが、これから皆さんと繋がっていければと思います」、石住は「PSIDを入れるところで止まっていますが、帰ってすぐにやりたいと思います」とコメント。山路は「クリフのことは監督も言ったようにあまりお話できることはないんですが、一つだけ。みなさん、誕生日だけは登録しておいてください」と意味深な言葉を残した。


 水樹は「フラジャイルを演じていて、『また小島監督に試練を与えられる役なんだ』と思いながら全力投球しました。彼女も人生という荷物を背負っているキャラです。ワンクリックで誰とも繋がれる時代に、サムみたいに体を張って荷物をぶちまけたりしながら、直接会いに行ったりする繋がりの大事さを実感していただければ」と語り、井上は「自分がこの世界のなかでアメリとして生きているのが夢みたいに嬉しくて。たくさんの人と繋がって過酷だけど楽しい世界を生きていっていただけたら嬉しいです。みなさんのことを、ずっとビーチで待ってます!」とアメリの台詞を引用したコメントを述べた。


 そして、大塚は「思えば、新生コジプロが生まれて……小島秀夫監督の背中に孤独の『孤』という字が書いてあるような時期があって。元の会社から監督を信じてついてきたスタッフもいて、その人たちの人生が監督の肩にかかっていたり、今回コケたらというギリギリの中で……ここに来るまでチームが繋がって……世界中のユーザーも繋がって一つになって……この日を迎えられたのが嬉しいです」と目を潤ませ、声を詰まらせながらコメント。


 津田は「小島監督からツイッターのDMで『ゲーム、興味ありますか?』って連絡いただいて、そこから長い旅をサムとコジプロのみなさんとしてきた思いです。僕でさえそんな長い旅をしてきた気持ちでいるのですから、監督含むスタッフの皆さんは崖を登ったり雪山を超えてきたんだろうなと感慨深いです」と語った。


 これらの言葉を受けた小島氏は「4年前に独立しまして、確かにあったのは絆だけで……ファンの皆さんが僕の作るものを待ってくれていて、歳も歳だけど頑張ってみようって。アーティストの皆さん、俳優の皆さん、声優の皆さんと繋がりをたどってここに来れました。3年と9ヶ月かかってここにきたことに感慨深さと、繋がることの大切さを覚えました」と、自身の人生にもなぞらえながら完成したゲームであることを明かす。


 続けて「みなさんそれぞれ、人生の中で荷物を背負って大変な思いをしてますけど、決して一人じゃないってわかると思うんですよね。自分みたいな人が世界に何人もいて、その人たちと繋がることで自分たちは生きてるって感じてもらえれば。これからゲームで僕らと皆さんが繋がって、皆さん同士が繋がって、世界でいろんなことがありますけど、人は人と繋がって生きていくことが大切。それを感じてもらえれば、これまでの頑張りも満たされるかと思います」と熱いスピーチでイベントを締めくくった。


 最後には、津田から秘蔵のメッセージとして「小島監督の作る世界は美しいです。改めて、発売おめでとうございます」というコメントとともに、“絆”という花言葉のマリーゴールドの花束が贈られ、トークセッションは終了。その後、一般参加者との個別撮影会が行われ、イベントが幕を閉じた。イベントは大阪、シンガポール、台北、ソウルと続いていくが、発売されたばかりの同作が、世界中に巻きおこす反響とともに、この繋がりはまだまだ広がっていくだろう。(中村拓海)


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