メルセデスF1チームは、2021年最終戦アブダビGP終盤、セーフティカーに関してFIAが規則どおりの手順に従わなかったとして上訴を行う意向を示していたが、12月16日、この手続きを進めないことを発表した。そのため、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)のドライバーズタイトルが取り消される懸念は完全に払拭された。
フェルスタッペンとルイス・ハミルトン(メルセデス)は最終戦に同点で臨み、決勝終盤までハミルトンが大きなギャップを保ってレースをリードしていた。しかしニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)のクラッシュでセーフティカーが出動、F1競技規則の文言に従えば、セーフティカー先導のままフィニッシュとなったはずだった。しかし、FIA F1レースディレクターのマイケル・マシは、ハミルトンとフェルスタッペンの間に挟まれた周回後れのマシンのみを前に出し(通常はすべてのマシンを前に出す)、本来なら1周後に戻さなければならないセーフティカーをすぐさま引っ込めて、最終ラップ1周のスプリントレースを行わせた。
使い古したタイヤを労わりながらフィニッシュを目指していたハミルトンは、セーフティカー出動中にフレッシュタイヤに交換していたフェルスタッペンになす術なく抜かれ、つかみかけていたタイトルを失った。
セーフティカーにまつわる手順が規則どおりでなかったことで勝利とタイトルを失ったメルセデスはFIAに対して憤り、抗議を提出したが、スチュワードは、レースディレクターにはセーフティカーの使い方に関して決める権限があるとしてこれを棄却、メルセデスはすぐさま上訴の意向を提出した。
しかし、レースディレクターのこの行為に対して大きな批判が集まり、それを受けてFIAは15日、声明を発表し、この件について詳細な分析と解明を行うことを明らかにした。
「ニコラス・ラティフィの事故によるセーフティカー導入にまつわる状況、そしてFIAレースディレクションチームとF1チームとのコミュニケーションが、F1チーム、ドライバー、ファンのなかに大きな誤解と反応を生んだ」「それについての議論は、(F1)選手権のイメージに傷をつけ、マックス・フェルスタッペンが獲得した初のドライバーズ世界選手権タイトルと、メルセデスが獲得した8年連続のコンストラクターズ世界選手権タイトルの正当な祝賀に影を落としている」とFIAの声明には記されている。
FIAのこの発表を受け、実際に上訴手続きに入る期限である16日、メルセデスは上訴を取りやめることを発表した。ハミルトンとともに対応について検討した結果だという。
「我々が日曜日のレース結果に抗議したのは、ルイスが圧倒的なリードを築き、世界選手権をつかみかけていたなか、セーフティカーレギュレーションが新たな方法で適用され、それがレース結果に影響を及ぼしたからだ」とメルセデスの声明には記されている。
「我々は、スポーツの公平性のために訴え、将来に向けて明確化を図り、すべての競技者が自分たちのレースのルールと、その施行方法を知ることができるよう、FIAおよびF1と建設的な対話を続けた」
「そのため、アブダビで起きたことを徹底的に分析し、F1におけるルール、ガバナンス、決定の堅牢性を向上させるための委員会を設置するというFIAの決定を歓迎する。また、彼らがそこにチームとドライバーたちを参加させるということも歓迎すべきことだ」
「メルセデス-AMGペトロナスチームは、すべてのチームと、我々と同じようにこのスポーツを愛するすべてのファンのために、より良いF1を築き上げるため、この委員会に協力し、積極的に活動していくつもりだ。我々はこのプロセスについての責任をFIAに担わせたうえで、上訴を取りやめることとする」
「マックス・フェルスタッペンとレッドブル・レーシングへ。あなた方の功績に心から敬意を表したい。あなたたちはこのF1チャンピオンシップのタイトル争いを素晴らしいものにした。マックス、あなたとあなたのチーム全員を祝福したい。来シーズン、コース上であなたと戦えることを楽しみにしている」