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昨年からTwitterなどSNS上で爆発的に盛り上がり、しばし議論の的になっている画像生成AI。4月27日、「クリエイターとAIの未来を考える会」がそうしたAIの適切な使用と法整備を求める提言を発表したが、同会の理事を務めるイラストレーター・木目百二氏が作者や出版社に無断で、ガイドラインに反する二次創作を行っていたことが発覚。翌日、謝罪に追い込まれる事態になっている。
同会はAIの不適切な利用がクリエイターの創作活動や権利が脅かされるとして、イラストレーターや漫画家約30人で結成された団体。NHKの報道によれば、木目氏は会見の中で自作のコピー品が大量に出力されている現状に触れ、許されてはいけないと断じた。また、産経新聞社の報道によれば、同会は児童ポルノ生成などに悪用される被害を指摘。AIが学習使用する前に著作権者の許可を得るよう義務付けたり、著作権者に対価が還元される仕組みの整備を求めているという。また、木目氏はTwitter上で自身が発信するすべての情報についてAIへの学習を禁止し、無断学習1件ごとに最低10万を請求すると記している。
ところが、ニュースが報じられると、木目自身が『ぼっち・ざ・ろっく!』の後藤ひとり(ぼっちちゃん)と思われるキャラクターが淫らなポーズをとる18禁同人誌を制作し、有料販売していたことが発覚。木目氏は同人誌の制作にあたり『ぼっち・ざ・ろっく!』の作者であるはまじあき氏や、出版元である芳文社の許可は得ていないと考えられ、現状では著作権者に対価も支払っていないと推測されたことから、空前の炎上騒ぎに発展している。
木目氏はこうした批判を受けて4月28日にTwitterを更新。「出版元のガイドラインに従わない形で二次創作を行っていた」として謝罪した。そして、「元の作品たちが好きで、それらのファンとして行った活動の一部のつもりでしたが、出版元の二次創作のガイドラインを見落としており、今回、多くの方からご指摘を受けるに至りました」「ご指摘を受け、自分の行いを振り返り、創作者の権利を主張するにあたっては、自らを正す必要を痛感しました」と述べている。
これに対してはTwitterユーザーも反応し、「これ(二次創作)を親告罪だからセーフとか言うならAIの無断学習なんて真っ白もいいところ」「これまでガイドライン違反の二次創作で稼いだお金はどうするのか」「自分たちの利権を脅かしかねないAIに規制を求めている」など、厳しい声が上がっている。このままでは、木目氏の理事としての適性を問う声が上がりかねないのではないだろうか。
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二次創作は極めてセンシティブな問題である。同人誌で食べていけるほどの利益を出している作家はごく一部であり、目くじらを立てなくてもいいのではないかとする意見もある。とはいえ、同人でマンションを買ったという作家もいるし、それほど稼いでも作者や出版社に版権使用料は支払わず、利益をそっくりそのまま懐に入れているのも事実だ。こうした行為をファン活動の一環と見なしていいのか、そもそもファンでもないのに流行りに便乗して稼ぐ同人作家を許していいのか―― といった議論も以前から存在するのである。
法整備がなされていないAIに対し、二次創作は作者と出版社が黙認しているだけで、実際は限りなく黒に近いグレーである。では、なぜ出版社は黙認しているのか。それは作品の盛り上がりを象徴するファン活動と解釈しているためだ。
さらに、近年は同人誌即売会が新人漫画家の発掘の場にもなっていることから、Win-Winの関係にあるためである。現に、近年は二次創作の同人誌から多くの著名な漫画家が輩出されている。こうした経緯があるため、自身も同人作家として楽しんだ経験をもつ赤松健は二次創作に寛容である。無名時代に同人誌制作で成長させてもらえたとして、プロになった後にも二次創作を許容する漫画家も少なくない。
一方で、2006年に『ドラえもん』の公式には認められていない「最終回」と称した物語を描いた同人作家が、小学館と藤子・F・不二雄プロから著作権侵害を警告された例もある。この件では同人作家が数百万円の売上金の一部を藤子プロに支払い、在庫の廃棄などを行って解決した。このことからも、同人誌の問題は依然としてグレーであり、内容次第では警告を受けたり訴訟に発展する可能性もあることがわかる。そのため、AIの規制に踏み込むと二次創作の規制に繋がるのではないかという指摘もあり、今回の木目の対応を悪手と考えるツイートも見られた。
なお、二次創作に否定的な漫画家が一定数いるのも事実である。自身が作り出したキャラクターの設定を改変され、成人向けの漫画を描かれることに嫌悪感を抱くある漫画家は記者の取材に対し、「ファンがツイッターに絵を上げるのはわかる。しかし、キャラクターが卑猥な行為をする同人誌を制作し、挙句の果てに同人誌ショップに流通させるのはファン活動の域を超えている」「私はキャラクターが汚されるのは耐えられない。著作者人格権を侵害している」と話した。「二次創作を見たくないのでネットを開きたくない」と語るほど苦悩していると言うが、声はあげにくいという。ネットでは二次創作を容認する動きが強く、同人誌即売会も大きな規模になっているためだ。一種の同調圧力ともいえる。
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二次創作を行う上ではこうした作家がいることも念頭に置き、ガイドラインを遵守し、羽目を外さない程度にほどほどに楽しむことが求められるだろう。
AIはどうあるべきか。そして、二次創作はどうあるべきか。今後、漫画界、イラストレーションの世界で活発な議論がなされるべきテーマといえる。だからこそ、木目のわきの甘さが残念で仕方なかった。AIの普及は加速度的に進んでおり、多くのイラストレーターにとって無視できない問題であることは間違いない。健全かつ建設な議論がなされることを期待したい。
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