オーディション番組に参加し、ネットで中傷被害を受けた男性 フジテレビの番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラー木村花さん=当時(22)=が2020年、SNSの中傷を苦に自ら命を絶ってから23日で5年となる。リアリティー番組は今も人気があり、制作側も対策を打ち出しているものの、中傷に苦しむ出演者は後を絶たない。最近、ある番組に参加した20代の男性も、身に覚えのない情報が拡散されるなどした。「人生を否定されているようで、心に穴があいた」と話した。
幼少期からの夢をかなえるため、オーディション番組に挑戦した男性は、匿名アカウントからSNS上に、身に覚えのない女性との関係を巡る情報を投稿された。書き込みは瞬く間に広がった。偽情報を信じ込んだ視聴者から心ない言葉が寄せられ、中には殺人予告のような内容もあった。
「人生で初めての経験だった」。男性はSNSを見るのが怖くなり、食事も喉を通らなくなった。「街で擦れ違う人が自分の悪口を言ってるんじゃないか」と感じるほど精神的に追い詰められた。「自分で命を絶って終わらせた方が楽なんじゃないか」との思いがよぎったこともあったという。
「許せない」と感じ、投稿者への法的措置や、偽情報を否定するコメントの投稿を考えたこともあった。ただ、費用や時間がかかる上、そうした対抗策がさらなる中傷を生みかねず、断念せざるを得なかった。
木村さん死去を受けてフジテレビは21年、出演者に関するSNS上の書き込みの監視やメンタルケアなどに特化した部署を設置した。他のテレビ局やネット配信会社も、中傷された出演者のための相談員を配置するなど対策を進めている。
一方で、視聴者の一部には変化も見られる。19年放送の恋愛リアリティー番組「バチェラー・ジャパン」に出演した友永真也さん(38)は当時、番組内での振る舞いを巡り、SNSで多くの中傷を受けた。ただ、木村さんの死去で誹謗(ひぼう)中傷が問題視されたことを機に、自身を中傷する書き込みは一時的に減り、訴えられることを恐れて謝罪するコメントが届いたこともあったという。
友永さんは「番組はあくまでショー。視聴者も多種多様な見方で番組を見てほしい」と訴えた。

恋愛リアリティー番組「バチェラー・ジャパン」に出演していた友永真也さん