がん・認知症・糖尿病の可能性も…寿命を縮める「危険な眠り」30分以上の昼寝や激しい寝言は要注意

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2024年05月11日 06:00  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

※写真はイメージです

 よく眠れない、疲れがとれないなど、年齢とともに睡眠の満足度が減ってきたと感じる人は多い。睡眠の専門家に伺うと、睡眠のとり方次第で健康寿命をも左右することがわかってきた。

「世界で最も寝ていないのは、日本の50代女性です」

 と話すのは、日本睡眠学会理事長の内村直尚先生。そもそも日本人の睡眠時間は世界で一番短いといわれており、世界の平均8時間25分より、1時間以上も少ないというデータもある。

「中でも50代女性の5割が、睡眠6時間以下。理由の一つは、日本ではいまだ、女性の家事の負担が大きいということです」(内村先生、以下同)

6時間未満の睡眠は死亡リスク大

 厚生労働省が今年2月に公開した『健康づくりのための睡眠ガイド2023』で、20〜59歳の成人は、6〜9時間が適正な睡眠時間とされている。

6時間以上の睡眠をとらないと、がんや生活習慣病、認知症になりやすく、死亡リスクが高まるというエビデンスが示されています」

 さらに、更年期の身体の変化も、睡眠に影響を及ぼす。

「女性ホルモンのエストロゲンが減少すると、睡眠が阻害されたり、逆に我慢できないような眠気を感じたりします。さらに最近注目されているのが、更年期女性の睡眠時無呼吸症候群。

 気道が狭くなることで睡眠中に呼吸が止まる状態が繰り返される病気で、睡眠が中断したり、浅くなり質が低下します。男性の病気のように思われていますが、実は閉経後の女性に多いのです

 その理由も、女性ホルモンの減少が関連している。

「女性ホルモンの低下とともに筋肉の緊張が緩み、気道が狭くなるので、閉経後の女性はいびきをかきやすくなります。さらに気道が完全に閉じてしまうと無呼吸に陥ってしまう。

 睡眠は量だけでなく質も重要ですから、更年期の女性は特に、睡眠を阻害する要因に早めに気づき、改善していくことが必要です」

昼寝は短時間が有効。長時間とると死を招く

 睡眠の質を上げるのに有効なのが“昼寝”。

「人間は体内リズムの関係で、午後2時〜4時の時間帯は必ず眠くなります。しかしそれより前に短時間の昼寝をとっておくと眠気が軽くなり、パフォーマンスが上がることがわかっています。

 さらに、昼寝が夜の睡眠の質を高めるというデータもあるので、上手に取り入れてほしいですね」

 ただし、昼寝をする際に注意したいのが長さ。

「30分以内の昼寝はいいのですが、それ以上長く寝てしまうと、かえって眠気が後を引いてしまい、パフォーマンス低下につながります。さらに、60歳以上の方が30分以上昼寝をすると、認知症になりやすく、死亡リスクが高まるというデータも。30分以内にとどめるようにしてください」

 短時間の昼寝でも、すっきり目覚めるために活用したいのがカフェイン。

「カフェインは、飲んでから20分後ぐらいに覚醒作用が現れるので、昼寝前にカフェインが入っている日本茶やコーヒーを飲んでおくと、ちょうど20分後ぐらいに目が覚めやすくなります」

 また、睡眠の質を下げるNG行動といえるのが週末の寝だめ。

「週末だけ長く眠っても、日々の睡眠不足を補うどころか、逆効果に。例えば、寝だめしたいからと、起きる時間を普段より5時間遅らせると、身体は日本との時差が5時間ある外国に旅行しているのと同じ状態になります。

 体内リズムが阻害され、その結果、週明けは時差ボケ状態に。これを“ソーシャル・ジェットラグ”といい、数日間は時差ボケの不調が続きます。どうしても長く寝たい場合は朝寝坊するのではなく、いつもより2時間程度早く就寝するのがいいでしょう」

高すぎる枕は無呼吸や脳梗塞の原因に

 睡眠の質を保つためには、寝具や照明など環境を整えることも重要だ。

「枕を選ぶ条件は3つあり、高さ・幅・硬さです。人は、直立時の姿勢のまま寝るのが一番いいとされているので、枕をしたときに直立時よりも首が曲がりすぎたり反ったりしているようならNG。

 首に負担がかかり、血管を傷害することで脳出血や脳梗塞を引き起こす可能性があるほか、気道が狭くなることで無呼吸が起こりやすくなります。特に中高年は、肥満やホルモンバランスの影響で気道が狭くなりがちですから、高すぎる枕には注意が必要です」

 他の2つ、幅と硬さは、寝返りの打ちやすさに関わる。

「質のいい睡眠のためには、寝返りは必須。そのため枕の幅は、肩幅より少し広いぐらいがいいでしょう。枕が柔らかすぎて頭が沈み込んでしまうと寝返りが打ちにくくなるため、ある程度の硬さがあることも大切です」

 パジャマではなく部屋着のまま寝る人も多いが、

「ノースリーブやショートパンツなど、手足を露出しすぎる格好は、入眠時の体温変化を妨げます。ジャージなど通気性の悪い格好も同様です」

 昼光色などの明るすぎる照明も悪影響が。

「日本の家は照明が眩(まぶ)しすぎるといわれています。寝る前から明るさを落とした暖色系の照明にして脳を休ませることで、体内時計が整います

 また、ホコリなどによる鼻づまりはいびきや無呼吸症候群の原因になるので、花粉の季節は特に、寝室の掃除はこまめに行いたい。

激しい寝言は危険信号!10年後に認知症に……

 睡眠には、深い眠り・ノンレム睡眠と、夢を見る浅い眠り・レム睡眠の2種類があるが、最近の研究で注目されているのが、レム睡眠の重要性。

「これまでは、ノンレム睡眠が大事だといわれてきましたが、レム睡眠が減少するほど、死亡リスクが上がることがわかってきたことから、レム睡眠が重要視され始めています。

 理由は明らかになっていませんが、人は年をとれば認知症になりやすく、がんにもかかりやすくなる。これは、加齢とともにレム睡眠が減少することに関わりがあるのではないかといわれているのです。加齢のほか、不規則な生活もレム睡眠を減らしてしまうので要注意です」

 ノンレム睡眠とレム睡眠には、それぞれに役割がある。

「ノンレム睡眠は記憶を定着させ、レム睡眠は嫌な記憶を除去すると考えられています。ですから、ストレス軽減のためにもレム睡眠を増やすことが有効です

 また、レム睡眠に関連した危険な病気もあるという。

「先述のとおり、レム睡眠中に夢を見るといわれていますが、本来は筋肉が弛緩しているので、夢の中で行動しても実際に身体が動いたり、寝言でハッキリと喋(しゃべ)ることはできません。

 しかし、アルコールやストレス、加齢や脳の病気などの原因により、筋肉の弛緩が阻害され、夢の中での行動がそのまま明瞭な寝言や体動として現れてしまう。それが“レム睡眠行動障害”という病気で、50代ぐらいからの発症が多いとされています

 隣で寝ている家族を殴ったり、ベッドから落下、家具に激突したりして、骨折などの外傷を伴うことも。

「さらに放っておくと、10年後ぐらいにはレビー小体型認知症やパーキンソン病を発症しやすいことがわかっています。大きな声ではっきりと聞き取れる寝言を言っていたら要注意です」

 レム睡眠行動障害かどうか、判断するには?

「家族が大きな寝言を言っていたら、すぐに声をかけて起こし、どんな夢を見ていたか聞きましょう。本人が夢の内容を明確に覚えていて、寝言の内容と一致したら、レム睡眠行動障害の可能性大。病院での診断をおすすめします」

 健康長寿に欠かせない睡眠。リスクが増える中高年以降は特に、良質な睡眠を保つ生活を心がけたい。「質の良い眠りをとれているかわからない」という人は、内村先生から教えてもらったセルフ診断法を試してみよう。

「ふだんより1〜2時間早く床に就いてみることです。質のよい睡眠がとれている人は、なかなか寝付けないと思いますが、すんなり眠れた場合は睡眠不足の可能性あり。睡眠習慣を見直したほうがいいでしょう」

「こんな人は眠りで健康を害しているかも!?」チェックリスト
□30分以上の昼寝をする
□睡眠時間は6時間未満だ
□週末に寝だめをする
□夕食後にウトウトしがち
□短パンやジャージで寝ている
□寝室の掃除をあまりしない
□家中の照明は昼光色だ
□ハッキリした寝言を言う

教えてくれたのは……内村直尚先生●久留米大学学長。日本睡眠学会理事長。国内トップレベルの睡眠医療チームを率いる睡眠研究の第一人者。厚生労働省が新たにまとめた「健康づくりのための睡眠ガイド2023」の専門家検討会では座長を務めた。

取材・文/當間優子

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