京七味やシジミ味も…!?栄養たっぷり、奥深き納豆の世界とは…プロならでは「漬物」を使った朝食アレンジも

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2024年05月13日 07:10  まいどなニュース

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京七味やシジミ味も…!?奥深き納豆の世界とは…※画像はイメージです(taa22/stock.adobe.com)

 関西は納豆嫌いが多い―。こんな話を聞いたことがある人は多いはず。確かに京都市をはじめ、関西の納豆消費額は全国平均よりも低い。しかし市内には全国的にも評価が高い納豆メーカーが複数ある。納豆は京都が発祥という説もあるらしい。奥深き京都の納豆の世界を探った。

京七味やシジミ味も…!?バラエティー豊かな納豆の世界

 「京都の納豆は大粒でにおいは控えめ、豆の色も薄いですね」。こう指摘するのは藤原食品(北区)の藤原和也さん(45)。中華料理にニンニクを入れず、黄金色の出(だ)汁(し)にこだわる京都人の好みは納豆にも共通するらしい。大粒の理由は「関東は江戸っ子がご飯にかけて食べるので小粒。関西はおかずの一品として食べる人が多かったから」という。

 実際に同社の商品は、国産の赤大豆や青大豆など、豆それぞれの風味が楽しめる。1925年に創業し、藤原さんは4代目。書店に納豆を並べるなど挑戦を続けるが、パッケージや製造法は触らない。「豆や菌が同じでも作る人によって不思議なほど味が違う。先代が良いものを作ってきてくれたので何も変えません」

 実は京都の納豆は業界内で一目置かれる存在だ。全国納豆協同組合連合会が毎年主催する鑑評会で、京都メーカー3社は表彰台の常連になっている。ただ総務省の昨年の家計調査によると、京都市の年間消費額は2532円と全国平均の3661円を大きく下回る。納豆で有名な水戸市は5440円。やはり東北・関東勢が存在感を放つ。

 そんな中、あえて京都を選んで創業したメーカーも。高橋食品工業(伏見区)は、仙台出身の高橋慶三さんが54年に創業した。「納豆発祥の地と聞いて来たのに期待が外れ、苦労したと聞いてます」と息子の高橋孝幸社長(70)は苦笑する。

 今では関東から九州まで各地で販売。安さで勝る大手と並ぶため、京七味やシジミ、白だしなど他にない味を打ち出し続ける。開発者は社長自身。夜な夜な一杯飲みつつ考えるという。「納豆は体に良くて安いもの。そこをあまりに外れると残っていけない。バランスが大事です」

 納豆の発祥説は全国に残り、京都でその舞台として知られるのが右京区の京北地域だ。1877年創業と伝わる牛若納豆(北区)は、発祥の地にちなみ京北に工場を置く。市中心部から車で1時間かかり、「苦労も多い」と福三田泰孝社長(52)。だが、北山杉の緑美しい風景をイメージした「けいほくの花嫁」をはじめ地域ならではの商品も出し、従業員の大半を地元住民が占める。

 京北には南北朝時代の政争に敗れ、常照皇寺で修行していた光厳法皇が藁(わら)入りの豆を食べたことを発祥とする説が伝わる。しかし同社が推すのは、より時代が古い「源義家」説。京都から奥州征伐に出た義家が馬の背に乗せていた豆が、だんだん糸を引くようになった―というものだ。

 豆が発酵する頃には京都からだいぶ離れていたのでは? と疑問もよぎるが、福三田邦彦相談役(81)は「文化は西から東に伝わる。納豆もきっとそう」と笑う。京北である理由については「京北は古くから御所に材木や野菜を納めてきた。納豆も字の通り、この地から御所に『納め』られていたのでは」。

 12月になると京北のスーパーには、同社の業務用納豆(500グラム)が並ぶ。正月に食べられる「納豆餅」用で、400パック近くが売れるという。当初は発祥説に疑心暗鬼だった泰孝社長も、あまりの売れ具合に信じるようになったそう。「こんな地域は他にない。京北が納豆発祥の地として知られるよう、うちも考えていきたい」と意気込む。

プロならではの納豆の食べ方

 火を使わずパパッと食べられて、栄養たっぷり。日々の食卓で納豆を重宝している人は多いのではないだろうか。しかし連日食べていると少し飽きるのも正直なところ。納豆のポテンシャルをより引き出すプロならではの食べ方を教えてもらった。

 「パンの日以外は毎日これ」。高橋食品工業(伏見区)の高橋孝幸社長(70)が勧めてくれたのは自身の朝食メニューのひとつ。納豆に黄身半分、ネギと海(の)苔(り)を合わせてご飯と食べるというもの。卵は黄身のみ半分だけ使うのがポイント。残った黄身半分と白身は目玉焼きに。豪華な朝定食が完成する。

 京都らしい組み合わせを提案してくれたのは藤原食品(上京区)の藤原和也社長(45)。しば漬けやすぐきなど漬物と合わせるのが一押しだそう。「漬物の乳酸菌と納豆菌は相性がよく、野菜のビタミンも取れる。歯ごたえも良くなります」。たれの代わりに塩とオリーブ油やごま油を合わせるのも、豆の味が感じられてオススメという。

 「実は納豆嫌いで…」と打ち明けるのは牛若納豆(北区)の福三田泰孝社長(52)。豆を蒸す独特の香りに包まれて育ったゆえに苦手になってしまったとか。「だからこそ、どうやったら食べやすいか好きな人より分かる」。全卵を入れて混ぜすぎない、という技を伝授してくれた。

 幼い頃から納豆作りに携わる福三田邦彦相談役(81)は変化球。一つは他の具材を揚げて残った衣に納豆を入れて揚げるかき揚げ。たれは入れず、食べる時は天つゆで。もう一つは砂糖をひとつまみ入れて混ぜた後、酢を小さじ4分の1〜3分の1投入し、それからたれを入れる食べ方。「砂糖を入れると糸が倍くらい出る。『まったり』としておいしいですよ」

 やはり納豆の世界は奥深く、懐も深い。京都の納豆で、自分だけの食べ方を見つけてみてはいかがだろうか。

(まいどなニュース/京都新聞)

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  • 京都人だけど納豆好き。夏場の朝食には豆腐と納豆を混ぜて温飯にぶっかける「畑の親子丼」にしてる。
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