アレクサンダー・アルボンがウイリアムズF1に長期的な将来を託す決断をしたことで、彼と彼のチームだけでなく、2025年のドライバー市場にもすでに影響が出ているし、その次の“シリーシーズン”にはなおさら大きな影響が及ぶだろう。なぜならアルボンは、2026年に向けて最も求められているフリーエージェントのひとりだったからだ。
アルボンは、ジェームズ・ボウルズ代表とドリルトン・キャピタルから共有された計画を心から信頼していること、そしてチームがほぼ10年入ることができていないトップ集団に復帰するための体制を構築するまで待つ用意があることを明らかにした。
契約延長に際し、アルボンは次のように語った。
「これは僕が心から信じている長期的なプロジェクトだ。そのなかで重要な役割を果たしたいと考えているので、複数年契約にサインした。この道のりには時間がかかるが、僕たちは今後数年間で前進し、素晴らしい成果を達成するための理想のチームを構築しているところだと確信している」
シーズン最初の5レースでスペアのシャシーがないという災難に見舞われ、オーストラリアGPではローガン・サージェントのマシンをアルボンに託したため、サージェントが予選とレースに出場するためのマシンがないという状況に陥ってプレッシャーを感じていたボウルズにとって、アルボンの信頼は大きな後押しであり、将来に向けた基礎となる安定要素だ。
レッドブルとのつながりから完全に解放されたアルボンは、ボウルズに2025年と2026年のチームメイトを誰にするか選ぶ時間を与えたことにもなった。彼はバルテリ・ボッタス(キック・ザウバー)、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)、エステバン・オコン(アルピーヌ)といった安全なドライバーが欲しいのか、それともアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス育成)、フェリペ・ドルゴヴィッチ(アストンマーティン育成)などのルーキーに賭けるのか決めることができる。アルボンがもう一方のマシンに乗っていれば、チームがポイントを獲得できることはわかっているからだ。
今後のドライバー市場において、アルボンはたとえマックス・フェルスタッペンが来年末にレッドブルを去ったとしてもレッドブルのシート争いには加わらないので、クリスチャン・ホーナー代表の選択肢を狭めることになる。ダニエル・リカルド(RB)はホーナーの期待に応えていないし、セルジオ・ペレスにはチームリーダーの資質がない。そしてレッドブルは引き続き角田裕毅(RB)のことを、2026年に他チームに移籍するホンダのドライバーだとみなしている。
メルセデスとマクラーレンが2026年に新しいドライバーを必要とする場合、アルボンはよい代替候補になると考えられていたが、現在ではルイス・ハミルトン&シャルル・ルクレール(フェラーリ)、ランド・ノリス&オスカー・ピアストリ(マクラーレン)、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)、ニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー/アウディ)のように市場から外れたので、トップチームの選択肢は狭まっている。
アルボンがウイリアムズと長期契約を締結したことは、ボッタス、周冠宇(キック・ザウバー)、ケビン・マグヌッセン(ハース)、オコン、ガスリーなど、2025年のシートを今も探しているベテランドライバーたちにとって必ずしもよいニュースではない。そのため、彼らはできるだけ早く新しい契約に署名するようプレッシャーをかけられることになるだろう。ほとんどのドライバーが第8戦モナコGPの週末が終わる前に自身の近い将来を確実なものにしようと決意しているため、今後2週間はチームとドライバー間で慌ただしい交渉が行われることが予想される。