大きなリスクを伴うレッドブルのドライバー選択。フェルスタッペン離脱への備えが見えず/F1コラム

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2024年06月18日 17:30  AUTOSPORT web

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クリスチャン・ホーナー(レッドブルF1代表)とマックス・フェルスタッペン
 レッドブルがセルジオ・ペレスとの契約を2年延長したことに驚いた人は少なくないだろう。長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、レッドブルがこういった判断に至った背景と、この決断がはらむリスクについて記した。

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 現在、レッドブル・レーシング内にはっきりとした分裂が見られるのは周知のとおりだ。クリスチャン・ホーナー代表が大株主であるチャルーム・ユーウィッタヤーの支持を得て、ほぼ完全にチームを掌握している一方で、オーストリア側の株主は、モータースポーツコンサルタントのヘルムート・マルコを依然として支持している。この分裂は、チームのあらゆる領域に影響を及ぼしており、2025年に向けたドライバー選択もそのなかのひとつといえるだろう。

 マックス・フェルスタッペンは、直近の3戦で2勝を挙げ、この3戦で58ポイントを獲得した。一方、セルジオ・ペレスは、過去3戦で4ポイントしか獲得しておらず、モナコとカナダの予選ではQ1敗退を喫するという、以前起きたのと同じような不調に陥っている。2025年のフェルスタッペンのチームメイトとして、マルコは、カルロス・サインツをファミリーに復帰させることを前向きに考え、今年RBで安定したパフォーマンスを見せている角田裕毅を昇格させることに対しても比較的オープンな姿勢を示していた。ところが、ホーナーはペレスと新しい2年契約を結んだ。

 ホーナーが本当に望んでいたのは、ダニエル・リカルドをレッドブル・レーシングに戻すことだったが、リカルドは十分なパフォーマンスを発揮できずにおり、自身でも昇格を検討されるに値しないと認めている。しかし、ホーナーが、リカルドを諦めて、選んだのはサインツではなく、ペレスだった。チームの関係者によると、今年初めにホーナーのスキャンダルが明るみに出て、騒動に発展した際に、ペレスは全面的にホーナーに味方したということで、それが契約において有利に働いた可能性があるという。

 ホーナーがこういう形でドライバー選択を行うことは、チームに重大なリスクをもたらすかもしれない。フェルスタッペンが、2026年以降のメルセデスへの移籍に前向きであるのは明らかだ。2026年のF1に新技術規則が導入される際に、ベストのパワーユニット(PU)を用意するのはメルセデスであると信じる人々は多く、フェルスタッペン陣営もそうだ。マルコが、自分の辞職によってフェルスタッペンがレッドブルとの現契約を打ち切る条件を整えようとする可能性は十分ある。チームはすでに技術ボスのエイドリアン・ニューウェイを失うことが決まっており、彼はF1プログラムに関する仕事を停止しているが、それに続いてフェルスタッペンという重要な資産を失うかもしれないわけだ。

 フェルスタッペンが2025年末でレッドブルを去った場合、後任はどうなるか。ペレスはタイトルを争うにはあまりにも不安定であるため、チームをリードするドライバーを探さなければならなくなる。リカルドは今は絶頂期のころのパフォーマンスを発揮していない。そのため、レッドブルに残された道は、他のチームからドライバーをつれてくることだけだ。

 ホーナーが狙っているのはランド・ノリスだと言われるが、彼は少なくとも2027年末までマクラーレンとの契約を結んでいるといわれ、その契約を買い取るには多額のコストを負担する必要があるだろう。メルセデスのジョージ・ラッセルなら、現時点では2025年末までの契約であるため、比較的安価で獲得できる可能性がある。

 ホーナーは、マルコの提案をすべてブロックすることに固執するあまり、自らを困難な立場に追い込みつつあるのではないか。このままでは彼は、18カ月後に大きな代償を払わなければならなくなるかもしれない。

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