この部屋が1泊数千円...だと? 超有名建築家が手掛けたホテルの価格設定がバグすぎた

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2024年08月22日 09:00  Jタウンネット

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この部屋が1泊数千円...だと? 超有名建築家が手掛けたホテルの価格設定がバグすぎた

有名建築家が設計した超洗練されたホテルに、驚きの低価格で宿泊できる――。

2024年8月2日、とあるXユーザーがそんな情報を発信し、大きな注目を集めた。

これが数千円の部屋!?(写真は土田昌平@shohei_tsuchidaさんの投稿より)
これが数千円の部屋!?(写真は土田昌平@shohei_tsuchidaさんの投稿より)

ホテルのツインルームのようだ。きわめてシンプルだが、上品な高級感にあふれている。

投稿者である建築士・土田昌平(@shohei_tsuchida)さんは、画像と共にこう呟いている。

「磯崎新設計のホテルに、1人数千円で宿泊できます」

磯崎新(1931〜2022)。「建築界のノーベル賞」とも称されるプリツカー賞を受賞した、日本を代表する建築家の一人だ。ポストモダン建築のリーダー的存在として国際的に活躍し、つくばセンタービルや米国・ロサンゼルス現代美術館などの設計者としても名高い。

そんな彼の作ったホテルに、格安で泊まれるとは......。土田昌平さんのポストには、2万3000件を超える「いいね」のほか、こんな声が寄せられている。

「初めて知りました。サウナもあるんですね...行ってみたいです」
「ステキ」
「相生の北ですよね。発表当時は研究者の出張用かと思ってました」
「行ってみたい、泊まってみたい! シンとした無機質だけど自然と一緒な雰囲気がすごく良いですね。近くの人、いいなあ〜」

ここはいったいどんな場所なのだろう?

記者は、投稿者・土田さんと、ホテルの管理者に詳しい話を聞いてみた。

緑に包まれる客室と、美しい調度品

話題のホテルは兵庫県立先端科学技術支援センター(CAST、兵庫県赤穂郡上郡町)内にある。

1993年、たつの市・上郡町・佐用町にまたがる播磨科学公園都市(通称「テクノ」)で働く研究者の交流の場として建てられた。

広々とした窓が印象的(写真は土田昌平@shohei_tsuchidaさんの投稿より)
広々とした窓が印象的(写真は土田昌平@shohei_tsuchidaさんの投稿より)

建物はゲストハウス棟と会議センター棟に分かれ、客室があるのはゲストハウス棟の1・2階。装飾やインテリアなど細部に至るまで豪華な造りだという。

投稿者・土田昌平さんは、自身の体験をこう語った。

「建築として素晴らしく、この施設に大変な安価で泊まれることは、宿泊者から見れば非常にありがたいこと。ランドスケープもピーター・ウォーカーさんが手がけていたり素晴らしい建築です」
「磯崎さんの設計のホテルに泊まれる、というのが大変な売りであると実感しました。緑に包まれるような客室とオリジナルな調度品は時代を超えた美しいデザインだと感じました」 (土田昌平さん)

ピーター・ウォーカー氏は、アメリカを代表するランドスケープデザイナーだ。

「時間とともに成長する森の中の都市」というコンセプトのもとに作られた街であるテクノには磯崎氏やウォーカー氏のほかにも、安藤忠雄氏、渡辺真理氏といった、名だたる建築家の手がけた建築が多く点在しているという。

「当時の勢いがそのまま感じられるレトロフューチャーの様相を呈していますが、建築ファンが建築に来るには十分見応えのある場所だと思いました」と、土田昌平さんは語る。

その中において兵庫県立先端科学技術支援センターは、貴重な宿泊施設。

同センターによると、シティホテルの満足感が得られる設備となっている。

ずっとここに佇んでいてもいいくらいだ...(写真は土田昌平@shohei_tsuchidaさんの投稿より)
ずっとここに佇んでいてもいいくらいだ...(写真は土田昌平@shohei_tsuchidaさんの投稿より)

シングル17室、ツイン8室、特別室2室があり、全室でインターネット接続が可能。宿泊者は大浴場やフィンランド式サウナも利用できるんだとか。

「先端科学技術関連施設(大型放射光Spring-8、兵庫県立大学などの研究機関)や公共機関(粒子線医療センター、西播磨総合りハビリテーションセンター等医療機関)、各企業の研究開発センターや工場等を利用従事される方々が宿泊されます」(CAST担当者)

一般でも宿泊可能。そのお値段は...

ホテルのロビー(写真は土田昌平@shohei_tsuchidaさんの投稿より)
ホテルのロビー(写真は土田昌平@shohei_tsuchidaさんの投稿より)

あくまでも「先端的な科学技術に関する研究及び開発を支援」が主目的のホテルなのだが、空きがあれば一般の利用者でも宿泊可能。

シングルルームなら1人4600円(小学生は2300円)、ツインルームなら1人利用で6100円、2人利用なら1人4100円(小学生2人で利用の場合1人2100円)。

そして、寝室と談話室のある特別室も、1人利用で8700円、2人利用で1人5600円という破格の価格設定だ。テクノでの仕事のために宿泊する研究者なら、さらに割引もある。

もはや......バグでは......?

光の入り方が美しい...(写真は土田昌平@shohei_tsuchidaさんの投稿より)
光の入り方が美しい...(写真は土田昌平@shohei_tsuchidaさんの投稿より)

ただ「観光ホテルなどに慣れた方にとっては、交通の便も悪く物足りなさを感じられるのではと恐縮いたしております」とCASTの担当者はコメントする。

確かに、公共交通機関で行こうと思ったら、電車を乗り継ぎ、駅からバスに20分以上揺られ......とスムーズではない道のりだ。

しかし、美しい山あいに、洗練された建築物が並ぶ風景というだけ行きたくなる人も少なくないだろう。

静かな旅を楽しみたい人には、ピッタリの場所かもしれない。

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