「激ムズ!」声優・福西勝也 アニメーター仕事に挑戦「線が繋がらない、1本の線になってくれない!」

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2024年08月25日 11:00  リアルサウンド

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アドバイスを行う江山梨恵さんは、数々の名作アニメに関わってきた超ベテランアニメーターであり、動画のスペシャリストである。
■アニメーターの仕事ってどんなもの?

  高度なテクニックな要求されるというアニメーターの仕事を、未経験者が実際に体験してみたら、どう感じるのか―― 今回、アニメの業界団体「日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)」の監修のもと、若手声優の福西勝也さんがアニメーター体験に挑戦するというので、取材を行った。


  福西さんが挑戦するのは、NAFCAのオリジナルキャラクター「ほくと」の原画をトレスして、動画に起こす作業。原画は『おジャ魔女どれみ』や『ハートキャッチプリキュア』で知られるアニメーターの馬越嘉彦さんが描いた、とてもかわいらしい絵だ。


  福西さんは小学2年生の頃に声優を志したそうだが、「絵を描いたのは授業中に教科書に落書きした程度」とのことである。また、福西さんは数多くのアニメ作品に出演しているが、実際の制作の現場を見るのは初めてなのだとか。


  今回、福西さんを指導するのはアニメスタジオ「たくらんけ」が誇るベテランアニメーターの江山梨恵さんである。福西さんは『ポケットモンスター』にも出演、スナップ小僧の役を演じているが、たくらんけは同作品の制作に長年関わっているスタジオ。出演した作品の制作現場を訪問し、福西さんも感無量といったところだ。


■原画のトレスは激ムズ!

  さて、トレスとは、読んで字のごとくトレスをする作業だ。つまり、原画の線をなぞる作業というわけである。なぞるだけなら簡単と思いきや、福西さん、さっそく苦戦している様子だ。「線をきれいに引く……って、言うだけなら簡単ですが、かなり難しいですね」と、鉛筆を手に悪戦苦闘。


 スタジオジブリ作品など、あらゆる作品に動画で参加している江山さんは、「30分のテレビアニメはなんと5000〜8000枚の原画が必要になります。ベテランのアニメーターは30分で1枚の動画を仕上げていきます。新人は約60分かな」と話す。



 したがって、いかに早く、そして美しくトレスするかがアニメーターの腕の見せ所というわけだが、「線の太さが全然違ってきてしまう!」と福西さんが叫ぶように、一朝一夕では身につく技術ではないそうだ。


 「できるだけ、原画のかわいい“チュン!”とはねた髪の毛やまつげを、かわいいままで残したいけれど……無理だなあ〜! 線が繋がらないし、1本の線になってくれないっ!」


  じつは、馬越さんの原画は勢いのある線で描かれているので、ベテランのアニメーターでもトレスが難しいそうだ。江山さんがこう話す。


 「原画を担当するアニメーターはラフな感じで描くことも多く、線が繋がっていなかったり、重なっていることもよくあります。それを整理してきれいな一本の線にするのが、動画の仕事です。馬越さんの絵のかわいさをいかに残すか、考えながら線を引かないと、まったく違う絵になってしまうんですよ」


  その言葉を受けて、福西さんは「“二次元を愛する者”として、元の絵の素晴らしさ、最大限の魅力を引き出せないまま納品するのは苦しい……!」と、まさにアニメーターになった気分で心情を吐露していた。


■動画は新人アニメーター最初の関門

  約60分に及んだ原画とのバトルを経て、ついにトレスが完成。福西さん、これは結構上手いのでは……? さてさて、江山さんの判定はいかに!


 「初めてでこれなら、合格です! 間違った線を引いていないし、線を描き忘れた箇所もありません。形をしっかり整えられているので、絵心がありますね! 線の震えはありますが、これだけ描けるなら、線の処理のコツなどを掴み、あとはいっぱい描いて訓練すればアニメーターになれますよ」と、高い評価を獲得した。


  これには、福西さんも「嬉しい!」と大感激だった。動画はアニメーターになるうえで、最初の関門といわれるほど重要な行程である。江山さんは、「原画マンがどんなにかっこいい絵を描いても、動画マンが上手くトレスできなければアニメが“作画崩壊”してしまいます。動画はアニメ制作の要なのです」と、その意義を力説する。さて、福西さん、初めてのアニメーター体験、いかがだっただろうか。


 「楽しさと苦しさ、両方が感じられましたね。アニメーターの仕事は生ぬるい道ではない、というのがよくわかりました。アニメを愛するものとしては、いつかもとの絵の質感を100%活かした動画を描いてみたい。きっと、自分の描いた絵がアニメになり、テレビに映ったら嬉しいだろうなぁ」


  アニメーターを目指す人にも、こうアドバイスする。


 「僕は声優の仕事を始め、一言でも聞き取れるセリフを演じられたときや、実際の放送で聞いたときのことが忘れられません。特別な感情を抱きましたね。アニメーターを目指すみなさんも、うまく線が引けたときの喜びや、映像になった時の喜びを励みに、一つ一つの線を大事に引いて技術を高めていってほしいですね」


■「アニメータースキル検定」を実施

  なお、NAFCAではアニメーターを志す人や、新人アニメーターに向けて2024年11月9日に「第1回 アニメータースキル検定」を実施する予定だ。これまで、アニメ業界は個人の技能を図ったり、ステップアップにつながる検定試験が存在しなかったため、業界から注目を集めている。興味のある人はぜひ、参加してほしい。


  また、この検定をはじめとした活動を支援するクラウドファンディングも「ソレオス」のサイトで開催中とのこと。9月30日までなので、興味のある人は覗いてみてはいかがだろうか。


  世界に誇る日本のアニメ業界は、その市場規模が年々拡大しつつあるものの、若手アニメーターの人材育成を筆頭に様々な問題が山積している。特にベテランアニメーターがもつ技能の継承は大きな課題であった。しかし、NAFCAを筆頭に、業界団体が改題解決に向けて動き出している。今後の動きに注目である。


 



このニュースに関するつぶやき

  • アニメーター体験で原画から動画を起こすのは大変だろうなぁ。
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