「『逆転シリーズ』を拡大していきたい」 「逆転検事1&2 御剣セレクション」発売直前、キャラデ岩元辰郎氏、橋本シリーズP、西田Pロングインタビュー

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2024年09月01日 12:33  ねとらぼ

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左から「逆転」シリーズPの橋本賢一さん、キャラクターデザイナーの岩元辰郎さん、「逆転検事1&2 御剣セレクション」Pの西田峻佑さん

 「異議あり!」でおなじみの法廷バトルゲーム「逆転シリーズ」に登場する検事・御剣怜侍を主人公とした「逆転検事」「逆転検事2」が、フルHDグラフィックで蘇る「逆転検事1&2 御剣セレクション」。2024年9月6日の発売を前に、ねとらぼ編集部がカプコンにお邪魔して制作プロデューサー陣とキャラクターデザイナーに開発秘話を聞きました。


【画像で見る:御剣の衝撃的な姿(ミニキャラ)】


●逆転検事シリーズとは――


 “NEW逆転 NOT裁判”をコンセプトに2009年5月28日に発売された「逆転検事」は、「逆転」シリーズ初のスピンオフタイトルで、2024年で発売から15周年を迎えました。


 対決パート・捜査パートに加えて「ロジック」「ロジックチェス」といった画期的なシステムの搭載が話題を呼んだほか、御剣怜侍、糸鋸圭介、狩魔冥といったシリーズおなじみのキャラクターに加え、個性的で魅力的な新キャラクターの登場も好評を博しました。


●すべてはこのときのために――開発し続けた2年間


 今回は「逆転」シリーズプロデューサーの橋本賢一さん、「逆転検事1&2 御剣セレクション」プロデューサーの西田峻佑さん、「逆転検事1&2 御剣セレクション」のキャラクターデザイン・原画を手掛ける岩元辰郎さんの3人をインタビューし、約2年にわたるリマスター開発の裏側、約2000アセットにも及ぶ衝撃的なクオリティーの描き下ろしグラフィック、メインビジュアルの制作秘話などを伺いました。


――「逆転検事1&2 御剣セレクション」の企画がスタートしたのはいつごろだったのでしょうか。


橋本:もともと「既存の逆転シリーズを現行機で皆さんに遊んでいただけるようにしたい」という構想がありました。「逆転裁判456 王泥喜セレクション」の開発を進めていく中で社内のリソースも含めて体制が整っていたこともあり、「できるだけ早めのタイミングがいいな」と、そのころから企画し始めました。


西田:具体的には2022年の4月ごろからです。


――2023年末のインタビューでは「逆転裁判シリーズ」の新作、「逆転検事シリーズ」の移植や続編の可能性について「今言えることは何もありません」とのことでしたが(笑)。


橋本:すみません。あのときはもう動いていました(笑)。


――ファンが「逆転シリーズ」の新展開を熱望する中、突如2024年6月のNintendo Directで「逆転検事1&2 御剣セレクション」が発表されて大きな話題になりましたが、開発から発表までの期間、どのような心境で過ごされていましたか。


橋本:まずはそこまで多くの方に要望されててよかったなと思いました。御剣人気が高いのは開発チームもみんな把握していますが、「どこまでリマスターが望まれているのかな」「発表したときにどういう反応が来るのかな」と不安ではあったんです。


 そんな中で「逆転裁判456 王泥喜セレクション」を発表したときに、「じゃあ御剣セレクションも!」という声がすごく多かったので、「これは正式発表したときに反響がドッと来るな」とちょっと安心しました。


岩元:「逆転裁判456 王泥喜セレクション」の発表があったときに、「逆転シリーズ」のファンの方が「『逆転検事』を引っ張り出してきて遊びだした」という投稿をしているのを見かけて、内心「(今ちょうどリマスターを開発しているのに)やめてやめてやめて〜!」という気持ちでした(笑)。


西田:こちらも発表したくてウズウズしてる中で「もう少し待ってくれ!」とすごく思いましたね(笑)。


岩元:今回の「逆転検事1&2 御剣セレクション」のメインビジュアルアートを描くために、「逆転裁判シリーズ」の気持ちにしたくて、ゲーム実況動画をYouTubeでよく見ていたんですが、そのコメント欄で「逆転検事1・2をもう一回やろう」というコメントをよく見かけて、それが苦しくて苦しくて(笑)。


橋本:岩元さん、苦しんでたんですね(笑)。


岩元:「いつ発表するんだろうな。なかなか発表してくれないな」と思ってましたね、2年間ぐらい(笑)。


――満を持して「逆転検事1&2 御剣セレクション」の発売を発表できたときにはどのような気持ちでしたか。


西田:自分はファンの方が全然予想していないんじゃないかと思っていたんですね。「逆転裁判456 王泥喜セレクション」が同じ年に出ていますし、1年に同じシリーズで2本出るのは予想していないだろうと。それを裏切る形でサプライズにしたいという思いがありました。最初の“御剣がジャケットを着る”扉絵でびっくりしてもらえるかなと思っていたのですが、狙い通り多くの反響をいただきました。


 ミニキャラクターも新しいビジュアルをずっと見せたくて発表までずっと我慢していたのですが、こちらも驚きの反応をいただけてうれしかったです。


岩元:僕はNintendo Directでの発表当日が誕生日だったんですが、それこそ2年分のうっ憤を晴らす、素晴らしい誕生日プレゼントでした!


 僕はXに「#1日1ラクガキ」というタグでイラストを投稿していて、その中でファンアートを描くときがあるんですが、この二年間は検事のキャラを描きづらかったですね。発表されるまでは匂わせになってはいけないので。ちょっとずつ検事のキャラクターを出したり、出さなかったりという謎の苦労をしていました。でも僕もNintendo Directでの発表は当日のギリギリに知らされたんですよ(笑)!


西田:発表は日付が変わる少し前でしたね。良い誕生日プレゼントになったと仰られてました(笑)。


――既存タイトルのリマスタリングプロジェクトを進めていく上で「ここは絶対に守らなきゃいけない」というポイントだったり、逆に「ここは今のトレンドに合わせて少し変えてもいいんじゃないか」というポイントだったりはありましたか。


橋本:基本として「シナリオは変えない」ということを心掛けています。ただ、言葉の言い回しに関しては時代に合わせて変える部分も必要だと思っています。


西田:今回は原作準拠のテキストで開発しているので、起動画面に「オリジナリティを尊重して制作当時の表現です」という注意書きを入れました。


橋本:表現的な部分では「逆転裁判456 王泥喜セレクション」でLGBTQに関しての配慮をした部分もありますが、ただ「基本は変えない」ことにしています。当時のタイトル作品をリスペクトして移植しています。


 また、言語追加の部分に関しても、その言語の方が楽しく遊べるようなカルチャライズを心掛けています。


――「逆転検事1&2 御剣セレクション」開発にあたって「逆転裁判」シリーズでシナリオを担当された巧舟さん、「逆転検事」シリーズでシナリオを担当された山崎剛さん(※)らとは何かお話されたりしましたか。


西田:巧さんは開発当時の「逆転検事シリーズ」にはノータッチだったので、リマスター決定のタイミングでも「作ります」とお伝えだけしました。


橋本:山崎さんはイベントなどでお会いすることがありますが、Xなどの反応を見ていると喜んでいただいているようで良かったです。


(※)山崎剛さんの崎は、正しくは「たつさき」。


●腕組み御剣の滑らかな指トントン――衝撃の129キャラ1200アセット制作秘話


――GBA時代の2DドットグラフィックスをHDリマスターでレベルアップさせた「逆転裁判1・2・3・4」、本格的な3Dグラフィックス体制になった「逆転裁判5・6」「大逆転裁判1・2」と比べると、「逆転検事シリーズ」の一番の差別化は2Dドットグラフィックスの維持にあると思いますが、2Dドットグラフィックスを“クラシック”、HDリマスターのグラフィックスを“モダン”と名付けたきっかけについて教えて下さい。


西田:2DドットとHDについては、「どちらが上」という表現にはしたくなかったので、ゲーム内では“リマスター”“リファイン”といった呼び方をせずに“クラシック”と“モダン”という呼び方にしています。「どちらも作りこまれており、スタイルの違い」ということを示しています。


  また変わるのは見た目だけで、操作方法は変わらず難易度は同じです。「ストリートファイター6」にもモダン操作とクラシック操作を搭載していますが、同じ呼び方になっているのは本当にたまたまです。


――御剣の胸元の“ヒラヒラ”、一柳弓彦の手など、本当に細かい表現が素晴らしい“モダン”なのですが、制作の裏側を少し教えていただけませんか。


西田:まず岩元さんにキャラクターデザインをしていただいて、それを動かすアセットを作るスタッフを社外も含めて数十人集めました。


――数十人!? 「もうアニメのクオリティじゃないか」と思ったんですが、それほどのスタッフさんが関わっているんですか。


橋本:そうです、数十人……(笑)。


岩元:まず僕が主役である御剣と、モブキャラクターである警察官のサンプルを作って、「ここはこうしたい」「こっちはどうでしょう?」というやり取りをしていたんです。そうしたらそこから急に「この絵だったらこのぐらいは動かないとダメだ」とカプコンが本気を出してきて。アニメーションを動かすためのサンプルを開発して、さらに何度もリテイクを重ねて完成させていきましたね。


 そもそもDS版のドット絵が本当に素晴らしいんですよ。ほんの1ドットの違いでキャラの感情を感じさせてしまうんです。そんなカプコンの神ドッターの方々が作ったキャラクターのモーションを、高解像度でアニメーションのように動かすとなると、細密に描けば描くほど足りない感じがしてきてしまって。


 必要なのはドットと同期した動きなので、その中に出来るだけのことを、詰め込めるだけ詰め込むしかなかったですね。


――本当に驚きの連続です。


岩元:僕も最初「できるのかなぁ、これ」と思いましたよ。


橋本:全部で何枚でしたっけ(笑)。


西田:129体の1200アセットです。でも歩く方向とかもあったりするので、トータルでは約2000作っています。さすがにアートディレクターも「終わり見えないんですけど」って言っていました。


――決断にはマヨイもあったかもしれませんが、そういった過酷な作業を覚悟しても、この方向性で行こうと決められたのは。


西田:私と橋本、アートディレクターで方向性を決めたのですが、デザイナー陣が社外の方も含めて想定以上の作りこみをしてくれました。


橋本:「リマスターのタイミングで高画質化する」ということは決めていたので、最初にどうやって高画質化するかを西田に3カ月ほど検証してもらっていました。


西田:フィルターをドット絵にかけて手軽に高画質化する等も試したのですがそれだとあまり変わらないですし、ドットで一から作り直すというのも労力の割にあまり変わらないと。そこで3Dも試したんですが、これはキャラだけだと違和感がすごくて、最終的に一番しっくり来たイラストタッチを選びました。


 そういった流れでミニキャラクターのデザインを新たに作ることになったのですが、「岩元さんしか描ける人がいない」と思い、お願いしました。


橋本:最初はメインビジュアルだけお願いするということでお話を進めていたんですが、「岩元さんにお願いするのがベスト」となって、追加でミニキャラクターのデザインもお願いすることになりました。


岩元:確かに最初は「メインビジュアルお願いしますね」だけでしたね。


西田:本格始動のタイミングで「ちょっと相談があるので打ち合わせに来てもらえませんか?」という電話をして、来ていただいたタイミングで「実は……」という感じで打ち明けました。


――一旦来てもらうために伏せていたんですね(笑)。


西田:そうです(笑)。


岩元:だからそのとき僕は「あぁ、メインビジュアルやらせてくれるんだ。ありがたい」と思って打ち合わせに来ていたんですけれど、「メインビジュアルもそうなんですが、実は……」という話になってサンプルを見せていただいたときに、「あぁ、確かにこれは一回やらないといけないですね」という感じになりました。


 そのときはまだ「疑似3Dアニメーションで行けないか試しているので、その素になるものを描けばいい」という話だったので、「それぐらいなら」と引き受けたんですが、あとになって大変なことに(笑)。


 終わった今となっては全部やって本当によかったんですが、やっている最中はゴールの見えないトンネルを歩いている感じが僕も含めてスタッフみんなしていたんじゃないかと思います。


――キャラによっては1度しかやらないモーションもありますよね。そういったモーションにも同じ労力がかかるということですよね。


岩元:ちょっとマニアックな話になりますけれど、1回きりのモーションよりもループアニメーションの方が大変なんです。1回しかやらない動きであれば多少絵に違和感があってもそこまで気付かないものなのですが、例えば“歩く”“走る”といった連続のモーションは1回きりのモーションよりもずっとずっと精度を高くしないといけないんです。


 長く走らせたとしても飽きさせないようにしないといけないので、作り手としては1回きりのモーションの方が気楽に作れるという感じがします。


――ミニキャラクターのデザインや動きを通して、あらためて岩元さんのキャラクターへの愛情を感じます。


岩元:本当にいろいろなことをやっているんですよ、例えばこっそり足元の方だけ暗くしているとかね。ちょっとだけキャラクターにデフォルメも入れているんですが、なるべくキャラクターの表情が見られることと、俯瞰から見下ろしている感じに見せたかったからなんですね。そういうところをじっくり見ていただきたいですし、どう変わったのか楽しんでいただけたらと思います。


――皆さんのお気に入りのモーションはありますか。


岩元:僕は一柳弓彦全般です。ドットのときの解釈と少し変わって、手と足の動きもバストアップ準拠のポーズになりました。イチオシは電話をかけるときのモーションで、すごく凝ってて超かわいいのでぜひご注目いただけたらと思います。


西田:私は内藤馬乃介のガンアクションが気に入っています。この動きは本編だとループで見ることができないので、今回搭載されたギャラリーのキャラ図鑑でじっくり見ていただきたいです。実は目線までちゃんと動いているんですよ。


橋本:スタッフ間では御剣が紅茶飲んでるモーションが好評でしたが、僕は御剣が腕を組んで指をトントンするモーションが好きですね。ドット絵のときのモーションはかなり秀逸だったんですが、それをアニメーション化してみたところかなり滑らかに動いていて、最初見たときに「いいな」と思いました。


西田:先ほどもお話しましたが、ギャラリーのキャラ図鑑は全キャラの全モーションを“クラシック”と“モダン”両方のバージョンでご覧いただけますので楽しみにしていただきたいです。


 特に“モダン”は表情以外もデザイナーのこだわりが半端ないので、例えば狩魔冥のムチのしなり方とかもとても滑らかになっているんですけれども、そのせいで岩元さんもすごい苦労されていましたね。


岩元:“モダン”に関してはアニメーションのスタッフが本当にすごいんですよ。「とことんやろう」って覚悟していたつもりでしたが、「もういいじゃん」っていうところも妥協させてもらえませんでした。


西田:動きに関してはモーションリーダーをカプコンの2Dアニメーションに詳しいメンバーにお願いしてましたが、筋肉の動き、影の動き、しわの入り方までかなり厳しかったですね。


橋本:チェックしては「不自然だ、ダメ」みたいなね(笑)。


岩元:最後の方、僕、その方に褒められてうれしかったですもんね(笑)。


西田:あはは(笑)。「物理的に〜」とか「生物学的に〜」といったフィードバックをやたらと聞いたような記憶があります……。ミサイル等の動物も登場しますが、同じくこだわりの影響を受けていますね。


岩元:今回メインビジュアルを描くにあたって「逆転裁判123成歩堂セレクション」「逆転裁判456 王泥喜セレクション」「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟」全部見させていただきましたけれども、本当に見れば見るほど「絶対に構図決めるの大変だったはず」というポイントがたくさんあるんですよ。


 どのキャラクターも主役にしなきゃいけない中でさらに主役級のキャラクターがいて、クオリティーも上げなきゃいけないので、本当にやってみて改めてその苦労と努力がしのばれましたね。


西田:確かに「逆転裁判456 王泥喜セレクション」「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟」を見て、岩元さんが「すごい」とおっしゃってくださっていました。でも私からは「真似はしないでください。岩元さんらしさを出してください」というお願いをしましたね。


橋本:そのオーダーのおかげで「逆転検事1&2 御剣セレクション」は本当に線とか塗りとか岩元さんらしさ全開で、「いやぁ、いい絵だな」と思いましたし、「本当に岩元さんにお願いして良かったな」というのが最初に見たときの素直な印象でした。


――「逆転検事1&2 御剣セレクション」では、背景も新たに描き直されているシーンがあるように感じたのですが、あれはどういった経緯からなのでしょうか。


西田:背景のデザイナーがこだわって描き直したポイントもありますが、基本的にはこれまでの画面サイズでは見えなかった部分がHD化されたことによって全部見えるようになったというようなイメージでしょうか。


橋本:「逆転裁判456 王泥喜セレクション」のときはいろいろと背景を描き足してデザインも修正していたんですが、「逆転検事1&2 御剣セレクション」に関しては全体的に高画質化する中でそのまま使うカットもあったり、HD化することによって足りなくなる部分を変に描き足すのではなくて全部描き直したりという形を取りました。今回はテレビモニターで遊んでいただくことを想定しているので、高画質にこだわっています。


西田:マニアックなポイントですが“クラシック”を選ぶとモバイル版のドット絵になるので、今回のHDリマスターの高画質背景と合わせると差が出てしまうんです。そこであえて背景をなじませるためにもう一回調整をしているので“クラシック”の方が背景に関しては手間をかけた処理を施しています。


●岩元さんが100パーセント開発を手掛けたキャラも!?――開発チームの押しキャラは意外なあの人?


――皆さんにお伺いしたいのですが、「逆転検事シリーズ」と「逆転裁判シリーズ」それぞれで思い入れのあるキャラクターはいますか。


西田:「逆転検事シリーズ」だと木之路いちるです。最初にユーザーとして「逆転検事」に触れたときは「敵か味方か分からない」っていう信用していいのか分からないミステリアスな感じがすごく良かったのと、見た目がかわいらしいなと思っていました。


 実は今回のメインビジュアルに入れてもらおうと思って「木之路さん好きなんですよね〜」ってちょっとだけ推していました(笑)。


岩元:ちょっぴり推された記憶があります(笑)。初期のラフではメインビジュアルに馬乃介もいたりしたんですけどね。


西田:ですね。ただ木之路や馬乃介がいる理由が不明ということで没になりました。


 男性キャラだと狼士龍が登場シーンから好きで、シリーズ全体を通して好きなキャラは(綾里)真宵ちゃんですね。


岩元:僕はシリーズ全体だとゴドー……いえ御剣! 「逆転検事シリーズ」だとシーナと弓彦ですね。


 本当はもちろんもっとめちゃくちゃいるんですが、「逆転検事シリーズ」でキャラクターデザインに一番苦労したキャラクターの弓彦と、キャラクターデザインが一番スムーズだったシーナは印象に残っていますね。


 特に弓彦は“モダン”のモーションの98パーセントぐらいを自分で対応したんですよね。実はもう1キャラ100パーセント自分で対応したキャラがいるんですが、それが誰かはナイショにしておこうと思います。


橋本:「逆転検事シリーズ」だともちろん御剣が筆頭ですが、水鏡秤ですかね。やっぱり“アレ”が伸びるのが衝撃でした(笑)。DS版が出たときは宣伝部隊にいたのですが、そのときから秤さんのファンですね。


 シリーズを通しては(希月)心音ちゃんが好きなんですよ。「心音ちゃん主人公の何かができないかな?」ってずっと僕の心の中で思っているんですけれども(笑)。


●恐怖のプロトタイホくん登場――開発チームイチオシエピソード


――「逆転検事シリーズ」の中で皆さんが好きなエピソード、オススメしたいエピソードはありますか。


橋本:僕結構バンドーランド好きなんですよ(「逆転検事」第3話「さらわれる逆転」)。新キャラクターの一条美雲が出てくる回ですし、御剣が襲われるシーンもあって(笑)。


岩元:恐怖のプロトタイホくん登場回(笑)。僕は「逆転検事2」の第2話「獄中の逆転」が好きですね。キャラクターを作っていて楽しかった話ですし、あそこに出てくる新キャラクターはどれも好きです。キャラクターデザインするときに、キャラクター単体じゃなくて動物が足されるだけですごく楽にキャラメイクできました。


 「逆転裁判2」から継承している動物がなつくかどうか、という好きなネタも入れられましたし、この話のブレイクは「逆転検事シリーズ」史上一番好きですね。


西田:私は2シリーズ共に5話が好きですね。1話〜4話までの伏線、キャラクターの正体が全て回収されるところがいいなと思います。


●秘密満載――岩元さんが語るメインビジュアル裏話


――今回のメインビジュアルアートで特に目を引くのが、他のキャラクターと異なる時系列から登場している狩魔冥(13歳)だと思います。幼少期の彼女がキービジュアルに登場することになったきっかけを教えてください。


――今回のメインビジュアルアートで特に目を引くのが、他のキャラクターと異なる時系列から登場している狩魔冥(13歳)だと思います。幼少期の彼女がキービジュアルに登場することになったきっかけを教えてください。


岩元:狩魔冥(13歳)登場に関しては僕がそうしたいと提案したんです。


 当初開発チームからは「19歳のビジュアルの方が良いんじゃないか」という声も含めていろいろな意見があったんですが、僕としてはこれまでと同じことをやってしまうと意味がないと思いましたし、パッと見たときに「逆転検事シリーズ」を知っている人に「違うものが出たぞ」と思っていただくためには、これまでとは違う要素を入れたいというのがあって。その中の1つとして「いよいよ、幼少狩魔冥なのではないか」と提案しました。


 メインビジュアルのデザインに関しては、他のキャラクターは結構初稿からはデザインが変わっているんですが、この子(狩魔冥)に関しては初期から横を向いているポーズで幼少期のこの形がいいとずっと強く推していました。あとは構図的に「大怪獣ボルモス」と「ヒョッシー」の横に置いて、超カッコよく仕上げました!


西田:私も狩魔冥は若い方(13歳案)を推していました。チームからは「なぜ大人の姿ではないのか?」という質問もありましたが、若い姿は「逆転検事シリーズ」ならではというところもありますし、なかなか描かれたことがないのでこちらの方が新鮮かつ稀少ではないかと思い、13歳の姿で進めることにしました。


 あとはキービジュアルの時系列的にも、上部には過去のキャラクターがいたので、それに合わせて若い方にというのもあります。


――ナルホド! 本当にビジュアルアートではあまり見ない姿なので狩魔冥ファンも喜んでいると思います。メインビジュアルが出来上がっていくまでの経緯はどのような感じだったのでしょうか。


橋本:開発が立ち上がるタイミングで僕は「メインビジュアルは岩元さんにお願いしよう」と考えていたので、すぐ辻本良三(専務執行役員・CS第二開発統括)のところに行ってOKをもらいました。


西田:岩元さんはメインアートに結構遊びを取り入れてくださっていて、毎週進捗を確認させてもらうたびに小さいキャラクターが増えていきましたね(笑)。


岩元:遊びに関していえば、タイホくんファミリーの中のワルホくんが倒れていたり、プロトタイホくんがサーベルを持っていたりっていうのは僕の好きな部分ですね。


 今回の「逆転検事シリーズ」は御剣に重きを置いたストーリーですが、「逆転裁判123」あっての「逆転検事シリーズ」ですし、そこはヤハリ“青”と“赤”ということでメインビジュアルの全体的なカラーリングは右側を青系、左側を赤系で塗っています。


 こんなにキャラクターがいっぱいの絵もなかなか描いたことがなかったのでこの絵にはいろんな仕掛けを施しましたが、これ以外にもキャラクターの〇〇にも秘密があったりもするので、よく目を凝らして見ていただけたらと思います。


西田:メインビジュアルの御剣がジャケットを羽織るシーンというのは最初からアイデアに?


岩元:指差しパターンなども含めて3種類くらいラフデザインを出していたんですが、ジャケットを羽織る御剣と幼少期狩魔冥という2人の構図がバシバシッと頭の中で決まっていたこともあり、絶対にやりたかったので、このバージョンは明らかに力が入っていました。


――御剣と冥は決まりやすかったとのことでしたが、逆にデザインに苦労したキャラクターはいますか。


岩元:(一条)美雲ちゃんのポーズは何度も描き直しましたね。僕はもっと動かしたくて派手なポーズをしたかったんですけれど、これだけのキャラクター数を入れるとなると派手になればなるほど他のキャラの邪魔をしてしまうんですよね。


 「逆転検事1&2」のポスターというテーマが異常に難しいんですよ。対決構造にしづらいし、お祭り感を出したいという気持ちもあるしということで、生涯一難しいポスターになりましたね。


 でもとにかく小ネタを入れ込めたので、満足です。小ネタだと「ヒョッシー」「大怪獣ボルモス」が一番好きなんです。本編ではどこで出てくるのか楽しみにしていただけたらと思います(笑)。


西田:本当にステキなデザインになっているこちらのメインビジュアルは、額装アートもイーカプコンでお求めいただけます。ぜひそちらもチェックしていただきたいですね。


岩元:パッケージによってキャラクターがいたり、いなかったりするデザインにもなっているんですけれども、額装アートだとロゴなしでフルキャラクターを楽しんでいただけますよ。


●初公開資料も――豪華特典満載のギャラリーモードの魅力


――今回ギャラリーモードの特別資料では貴重な設定画に加えてイラストやスペシャルコンテンツも大ボリュームで搭載されています。中でも御剣のパジャマ姿がファンの間で話題を呼んでいましたが、あれはもしかして「逆転検事リミテッドエディション」に同梱されていた「特別法廷2008」のメモリアル冊子のオマケ漫画ですか。


西田:そうです(笑)。というか実物を持って来られてるんですね! 過去のデータを発掘して特別資料として色々搭載しています。あとはミュージックに「逆転検事1&2 御剣セレクション」の全106曲のBGMと厳選した23曲のオーケストラ音源、タイトル画面の新曲1曲、アレンジBGM5曲が収録されています。


――今日はちょっと昔のグッズも見ていただけたらと思って少し持ってきたのですが、懐かしいものはありますか。


岩元:僕自身も初めて見ましたが、この「逆転裁判3」のポップはかなりレアですよ。これ、「逆転裁判1」のキャラクターデザインを担当されたスエカネクミコさんの描いたナルホドくんと、僕のナルホドくんが共演してますね。手前の龍ちゃんとか、若千尋もスエカネさんのイラストで、ポップ本体に書いてあるナルホドくんは僕の絵です(笑)。


 小ネタでいうと「逆転裁判2」「逆転裁判3」のパッケージのベロの部分にミニキャラが描いてあるんですけれど、これは僕がやりました。


 あと実は僕も今日「逆転シリーズ」おなじみのタイホくんのウェアを着てきました(笑)。


●2024年は逆転検事グッズが熱い――橋本シリーズPが明かす今後の「逆転シリーズ」の展開


――カプくじオンラインで実施されていた「逆転検事 くじ」をはじめ、「逆転裁判シリーズ」はグッズも大変好評です。ファンによるグッズの購買についてはどう受け止めていますか。


橋本:グッズについては数年前から「軒並み売り切れるな」という印象ですね。初日で基本なくなってしまうので「逆転シリーズ」は。今年は「逆転検事シリーズ」15周年で、基本的には「『逆転検事』関連のグッズをしっかり出していこう」という話をストアのスタッフともしています。これまで出せなかったものが15周年だからこそ出せるということもあるので、今年は特に「逆転検事シリーズ」周りが熱いです。まだ出ていないグッズもあるので、楽しみにしていてください。


岩元:御剣のティッシュボックスカバーは僕も欲しかったです(笑)。


――結構ファンは「グッズの購買が新作につながるんじゃないか」と期待しているところもあるんですが、そこは実際どうなのでしょうか。


橋本:それはその通りです。やっぱり熱いプレイヤーさんたちに支えていただいているっていうのが、僕ら開発以上に経営層を含めて会社全体で認識できますので、すごく大事なことです。


 もちろんグッズの売り上げそのものが新タイトルの開発費になるわけではないですが、「あそこまで人気があるのであれば今後の展開をどうするんだ」という話につながっていくので、グッズを購買していただけるというのは非常に重要な指標なんです。


――海外のファンもたくさんいる作品なので、今回は海外のユーザーにも「開発にどんなことを伝えたいか。聞いてほしいか」を聞いてみました。特に印象的だったのが独立言語圏に暮らすユーザーからの意見で、「逆転裁判456 王泥喜セレクション」に続いて「逆転検事1&2 御剣セレクション」の多言語対応に喜ぶ声が上がっていました。そんな中でヤハリ注目されているのが今後の「逆転検事シリーズ」の発展ですが、こちらはいかがでしょうか。


橋本:「逆転検事シリーズ」というコンテンツを止めることはしません。メディアミックスを含めていろいろと展開したいなという思いはもちろん持っています。発表できるタイミングになれば何かお伝え出来ることはあるかなと思いますが、現状はまだ何も言えません。


――根強い舞台ファンも多い中、残念ながら「舞台 逆転裁判 〜 逆転のパラレルワールド〜」が公演延期中になったままになっています。弁護士・御剣怜侍や絶対完璧アイドル・狩魔冥やナンバーワンホスト・矢張政志を見られる日は来そうでしょうか。またノベライズ化などの可能性は。


岩元:(小声で)言ってやってください。もっと言ってやってください(笑)。


橋本:キャストさんのご都合もありますので、全く同じ形はなかなか難しいかもしれないんですが、僕自身も見たいなという思いがあります。何かしらやりたいなと、実現したいなとは常に思っています。


――最後に、「逆転シリーズ」への思い、今後についてお聞かせください。


西田:開発チームのこだわりと愛がつまっていますので、「逆転検事1&2 御剣セレクション」をじっくりプレイしていただきたいです。今回の開発中に「逆転裁判」の20周年オーケストラ、「大逆転裁判」の朗読劇、「逆転裁判456」のTGSブース等イベントも色々させていただいて、間近でファンの方の熱量を感じられたことも大きく、それに応えなくてはと想いで開発をしていました。


岩元::「逆転検事1&2」に関していえば、ただただ“モダン”を味わってもらえたらうれしいです。プレイして、ギャラリーで眺めてもらって。それが本当に骨の髄まで遊ぶことにつながると思いますので。そのうえで「“モダン”でプレイしてよかった」とか「“モダン”が気に入った」という声がもしSNSなどで聞こえてきたらうれしいなと思います。ぜひじっくり時間をかけて遊んでみてください。


橋本:冒頭でもお話しましたが、既存コンテンツを現行のプラットフォームで遊んでもらうことが重要だと思っていた中、「逆転検事1&2 御剣セレクション」が出たことでやっとようやく出そろいました。日本はもちろん、追加言語された国の方々なども含めて「逆転シリーズ」を知らない方、触っていない方にもしっかり届けたいなと思っています。


 そのあとは先ほどもお話した通り、「逆転シリーズ」を止めることはありませんし、25周年、30周年と続いていきます。そういったところで新たな展開ができるような仕込みを進めてシリーズを拡大させていきたいなと思います。


●取材後記


 今回の取材で特に印象的だったのは、西田プロデューサーの「ギャラリーは入れられるものは隅々まで全部入れています」という言葉や岩元さんから語られた“モダン”グラフィックに関する並々ならぬこだわりとメインビジュアルができるまでのお話で、すべてはファンに喜んでほしいという気持ちで妥協なく作られたのが「逆転検事1&2 御剣セレクション」なのだと強く感じました。


 またソフト本体とオリジナルグッズがセットになった「御剣のチェックメイトセット」には、アレンジミニアルバム(全5曲)のほか、ジオラマアクリルスタンドが付属しているのですが、8キャラの中には今回初グッズ化された御剣信の姿もあり、こうした点にもファンからは大歓喜の声が上がっています。


 「逆転検事1&2 御剣セレクション」が7言語対応されることにより、国内ファンはもちろんのこと、さらなる海外での人気が期待される「逆転シリーズ」。


 橋本プロデューサーによる「『逆転シリーズ』を止めることはありません」という力強い言葉の通り、今後の新シリーズ発表やメディアミックスにも期待が高まります。


 「逆転検事1&2 御剣セレクション」は2024年9月6日発売です。


●「逆転検事1&2 御剣セレクション」


・2024年9月6日発売予定


・発売プラットフォーム:Nintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One、Windows、Steam(※Xbox One、PCはダウンロード専売)


・レーティング:CERO 12才以上対象


・対応言語:日本語・英語・フランス語・ドイツ語・韓国語・繁体字・簡体字


取材協力:(C)CAPCOM


(Kikka)



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