「次世代モビリティDAY 2024」が開催 - 自動運転サービスの現在地・課題とは

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2024年09月09日 13:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
NTT西日本やNTTビジネスソリューションズ、マクニカは8月29日にメディア向け内覧会と、まちづくりにおける自動運転の社会実装をめざすイベント「次世代モビリティ DAY 2024」をQUINTBRIDGEにて開催した。



メディア向け内覧会では自動運転EVバスの見学・試乗を実施。また、「次世代モビリティDAY 2024」では、NTT西日本・マクニカ両社長のオープニングセッションや、国土交通省の自動運転戦略室長が登壇する基調講演などが行われた。


○■全国で11実証事業を採択、持続可能な地域社会づくりに挑戦



少子高齢化による人手不足や物流・運送業界における2024年問題などにより、地域交通の維持や運送業におけるドライバー不足などに関する社会課題が深刻化。自動運転などのモビリティ技術を活用した持続可能な公共交通・物流の実現や、自動運転サービスの社会実装に向けた機運が高まる。



「次世代モビリティDAY 2024」は、2023年7月にNTT西日本グループとマクニカが締結した「地域交通の課題解決に向けた提携」の取り組みの一環として開催され、自動運転に関する有識者の講演やセッションが行われた。



主催者を代表してNTT西日本の北村亮太社長は、「NTTグループではテクノロジーを活用し、公共インフラや農業・食品、健康・医療などさまざまな領域で地域の皆様と共に持続可能な社会づくりに取り組んでいます」と挨拶。


「自動運転EVバスの導入を機に、地域交通の課題解決にとどまらず、観光価値の向上など、地域住民の皆様への新たな価値の創造と持続可能な地域社会づくりに挑戦していきたいと考えています」と語り、交通・観光分野におけるひとつのツールとして、さまざまな次世代モビリティの取り組みを進めていると紹介した。



NTT西日本グループは、2023年8月より自動運転分野においてマクニカ社と事業提携を開始。内閣府の補助事業を活用し、沖縄県南城市で両社による初の実証実験を実施した。2024年度の国土交通省「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)」では、南城市を含む11自治体での自動運転実証の事業が採択されている。


こうした取り組みをより強固なものにしていくため、今年8月にNTT西日本は自動運転のキーテクノロジーを有する「Navya Mobility SAS(ナヴィア モビリティ)」への出資を発表した。



「フランス・リヨンに本社を置く『ナヴィア モビリティ』は、多くの自動運転車の実走事例や、テクノロジーを有する自動運転の世界的なリーディングカンパニーです。この出資により、これまで以上に地域交通のスマートモビリティ化や自動運転サービスのサプライチェーンを、ワンストップで継続的に供給できる体制を整えていきます」

○■自動運転EVバスと運行管理システムを一括提供



マクニカ社は、半導体事業を主力とする独立系の技術商社。創業50周年を迎えた2022年度(2023年3月期)に売上1兆円を突破し、26カ国94拠点で事業を展開している。



社員の3人に1人がエンジニアという技術力を背景に、成長市場を見極めながら高度な目利き力で世界の最先端テクノロジーをいち早く発見し、社会実装していくことに強みを持つという同社。そのフォーカス市場のひとつがスマートモビリティ事業だ。


同社の原一将社長は自動運転のトータルソリューションプロバイダへと進化を遂げてきた経緯を語った。



「車の高度化・スマート化を背景に、当社は20年ほど前から自動車産業分野で車載向けの半導体を提供してきました。従来のハードウェア中心のモノづくりからソフトウェア中心の開発へと変化するなか、当社も半導体を中心とするハードウェア事業に加え、ソフトウェアや自動化システムなどのケイパビリティを拡張してきた次第です」


2019年、同社はフランスのナヴィア社と国内の総代理店契約を締結し、自動運転EVバスの提供を開始。今年6月には全株取得をして完全子会社化している。

「ナヴィア社は自動運転EVバスの提供だけでなく、その運行を支える支援サービスの提供が可能な世界でも数少ないメーカーです。NTT西日本様からの新たな出資に伴い、社名を『ナヴィアモビリティ』へと変更し、これまで以上にその事業活動の加速・拡大を目指してまいります」


その自動運転EVバスが時速約18キロで公道を自動走行する定常運行を現在、6地域で行なっているほか、実証運行の導入エリアは約50地域に及ぶ。



「特に昨年8月からのNTT西日本様との提携を通じて、西日本エリアにおける地域拡大が顕著に現れています。また、遠隔地から自動運転車両の運行を管理できるシステムを独自開発し、『everfleet(エバーフリート)』というブランドで提供を開始しました。自動運転EVバスと『everfleet』をパッケージソリューションとして提供することで、オペレーションの省人化と交通採算性の改善に貢献し、地域のモビリティを支援できるようになりました」



「everfleet」は車両の位置情報や車内外の映像、速度、ステアリング、バッテリー残量といった車両データを一元的に可視化。信号機などの交通インフラと協調した外部データ連携や、運行時の異常を自動で検出・通知を可能にするという。


○■国交省では社会実装に向けて初期投資支援を実施



国土交通省 物流・自動車局の自動運転戦略室長・家邉健吾氏は、自動運転の本格実装に向けた取り組みについて講演した。



「ルートや地域を限定しない自家用車とルートや地域を限定した公共交通などを含む商用車のそれぞれで、自動運転車の実現に向けたアプローチは異なります。条件のない完全自動運転であるレベル5を実現するにはまだまだ課題がありますが、自家用車に関してはレベル3の自動運転車が販売されており、特定のルート・地域、速度といった走行条件を限定しやすい移動サービスに関してはレベル4がすでに実現されています」


2023年5月、福井県永平寺町で電動カートの車両が路面に電磁ウェル動線を埋設した既定ルートを走り、車載センサーで障害物検知などを行う全国初のレベル4の移動サービスが開始。



2024年には全国2例目として東京都大田区の複合施設「羽田イノベーションシティ」内で、ナヴィア社の「ARMA(アルマ)」という車両によるレベル4の移動サービスが開始された。


一方で、天候などの悪条件下における信号認識などには課題もあり、交通インフラ側の環境整備やインフラ連携などの実証実験が全国で実施されている。



「また、路上駐車があった場合、現状では一旦停止して同乗するドライバーが介入するケースが大半です。歩行者、自転車などそれぞれの道路交通ユーザーの動きをシステム側で予測し、適切に対応するところまでには到達していません」


「今後これらの技術的な課題も解決していくと認識していますが、自動運転の実現のためには車両技術だけではなく走行環境の整備や社会の受容性をどのように得ていくのか。総合的な対策が現状では重要になっています」



政府は地域限定型の無人自動運転移動サービスを2025年度までに50カ所、2027年度までに100カ所以上の地域で実現するという目標を掲げている。国土交通省でも制度構築や初期投資支援、審査の迅速化・明確化などを行い、普及促進を図っている。



「国土交通省では自動運転レベル4の社会実装の新規参入を促し、関係者の裾野を広げていくことで、その普及・促進を図っています。車両の導入費や自動運転システムの構築費、リスクアセスメントやルート選定の調査費などの経費を補助し、地域の公共団体の皆様が行う社会実装に向けて初期投資支援を行っています」


リアルとオンラインのハイブリッド開催となった本イベント。リアル会場では自動運転EVバスや遠隔監視システムの展示も行われており、自治体の担当者をはじめとする参加者たちの注目度の高さが感じられた。



伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら(伊藤綾)

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