大谷翔平vsM・オズナ「三冠王」になるのはどっちだ!? ナ・リーグ87年ぶりの歴史的偉業へ!

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2024年09月11日 06:50  週プレNEWS

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前人未到の「50−50」へと突き進む大谷翔平(左)と「三冠王」のライバル・オズナ

史上最速で「40−40」を達成したかと思えば、その後も本塁打と盗塁を量産し、前人未到の「50−50」も射程圏内の大谷翔平。レギュラーシーズン最後のひと月でバットマンとしての最高到達点である「三冠王」にも手が届くのか!?

【写真】7月以降で30盗塁を記録。大谷の足が止まらない!

■迫る「50−50」と「三冠王」への課題

残り1ヵ月を切ったMLBレギュラーシーズン。優勝争いだけでなく、タイトル争いや個人成績の行方もいよいよクライマックスだ。

その中心にいるのはわれらが大谷翔平(ドジャース)。日本時間8月24日のレイズ戦で今季40個目の盗塁に成功すると、9回裏2死満塁の場面で40号サヨナラ満塁弾を放ち、史上6人目となるシーズン40本塁打と40盗塁の「40−40(フォーティ・フォーティ)」をクリア。

しかも、出場126試合目での史上最速達成、というオマケ付きだ。その後も1試合3盗塁を決めるなど数字を伸ばし、前人未到の「50−50(フィフティ・フィフティ)」へと突き進んでいる。

「今や盗塁はフリーパス状態。本塁打ペース的にも『50−50』は届く可能性が高いです」

こう語るのは本誌おなじみの野球評論家、お股ニキ氏。今季開幕時点で「打者専念なら『40−40』を狙える」といち早く発言してきたが、ズバリ的中した形だ。

まさに歴史的シーズンを送る大谷だが、さらにもうひとつの歴史的偉業、「三冠王」の可能性も残している。

現在、リーグ1位の44本塁打、2位タイの98打点を記録しており、この2部門は十分射程圏内だ。残すは前半戦リーグ1位を争っていた打率だが、8月の月間打率.235が響き、現在は.292に低下。1位のルイス・アラエス(パドレス)との差は1分8厘。夢の三冠王達成に向け、現在の大谷の状況はどうなのか?

シーズン開幕前に「今の大谷は打率が残せるスイングをしている」と語っていたお股ニキ氏はその変化を次のように解説する。

「キャンプからシーズン序盤の『打率が残るスイング』と比較すると、最近は『一発は出るけど、打率は残りにくいスイング』といえます。感覚論ですが、50本塁打には届いても、打率は3割には届かないくらいのスイングになっています。

リーグをまたいだ2年連続本塁打王はほぼ確実で、打点王の可能性もありますが、打率の向上はこのままでは難しいかもしれません」

スイングについては、大谷自身も試行錯誤していることを告白している。

「8月中旬の囲み取材で『構えている段階でいい未来があまり見えていない』と発言。構えがしっくりきていないことを認めています。シーズン当初は『平成の三冠王』である松中信彦さん(元ソフトバンク)のような安定感がありましたが、今は少し打率が高いカイル・シュワーバー(フィリーズ)のようなバッティングです」

シュワーバーとは、打率.218ながら本塁打王を獲得したことのある選手。そこまでの低打率ではないが、月間12本塁打を放ちながら打率が急降下した8月の大谷はまさにこの状況だった。

さらに、今季はシーズン序盤から得点圏打率の低さを指摘されてきた大谷だが、8月の月間得点圏打率は.093と1割を切ってしまった。

「打点はリーグ1位を争っている状況とはいえ、本塁打数の割にやや少ない。その要因のひとつが得点圏打率の低さです。

統計的には、得点圏打率は長期的には収束する『運の要素が大きい』と指摘されがちですが、構えやフォーム、スイングの技術的要因から強い球に差し込まれたり、スタジアムの特性や打ちたい気持ちがはやってボール球に手を出してしまうなど、いくつもの要素が重なっています」

とはいえ、大谷は日本ハム時代も、そしてWBCでも、ここぞという場面で結果を出してきた。その姿をぜひとも取り戻してほしいところだ。

「今季の大谷は、基本的に速い球に差し込まれがちです。また、左の一線級リリーバーを苦手にしており、相手からすると一発の怖さはあっても対処しやすい面も。バットマンとしても真のナンバーワンを目指すには、得点圏での取りこぼしを減らしていきたいです」

■「40−40」の歴代達成者との違い

大谷が三冠王を目指す上で希望があるとすれば、毎年どこかで来る"無双モード"が今季はまだないことだ。

「例年、6月に確変して爆発的に数字を伸ばしますが、今季はそこまでではなかった。エンゼルス時代と違い、ポストシーズンに向けて徐々に状態を上げていこうと考えているのであれば、9月に無双する可能性もあります。そうなれば、大逆転での三冠王の可能性も見えてきます」

仮に無双モードにならなくとも、すでに「40−40」という歴史的偉業を成し遂げたのは事実。お股ニキ氏も「"リハビリ中の投手"が『50−50』を狙っているわけで、その点をしっかり評価すべき」と語る。

「そもそも、本塁打を30本以上打つには体重が必要で、そうなると本来は走れなくなって一発型になりやすい。そのため、『40−40』の歴代達成者たちも、バットマンというよりはアスリートタイプの選手たちが多いです」

歴代のレジェンドと比較しても、大谷は別格の存在だ。

「昨年からベースの拡大で塁間が短くなったこと、ピッチクロックの導入、牽制回数に制限が設けられたことなど、MLBが走りやすい環境になったという外的要因はあるにせよ、大谷の走力と走塁センスはもともと群を抜いていたので、今季の盗塁数にも驚きません。

そのフィジカル的スペックは陸上100m世界記録保持者のウサイン・ボルトと比較してもいいと本気で思えるほど。その上で、打撃専念シーズンの今季は春先から走りにも力を入れており、盗塁数の大幅増につなげました」

さらに、時代背景も加味すれば、大谷の異質ぶりがより際立ってくるという。

「2023年のロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)と2006年のアルフォンソ・ソリアーノ(当時ナショナルズ)以前の3人、1988年のホセ・カンセコ(当時アスレチックス)、1996年のバリー・ボンズ(当時ジャイアンツ)、1998年のアレックス・ロドリゲス(当時マリナーズ)は筋肉増強剤の使用が黙認されていた時代の達成者。

3人とも歴史に残る偉大な選手ですが、薬物使用の疑いなどから野球殿堂入りできていません。そのような時代にも達成者がいない『50−50』を狙っているのだから、とんでもないことです。ちなみに、ボンズの名誉のために断っておくと、『40−40』達成時には薬物を使用していなかったようです」

■「三冠王」のライバル、オズナの「安定感」

数字を地道に重ねたことで届いた「40−40」と違い、三冠王は相対的な記録だ。それだけにライバルの動向も気にしておく必要がある。

今季、大谷以外のナ・リーグ選手で三冠王に近づいているのがマルセル・オズナ(ブレーブス)だ。打率.306は1位と僅差の2位。本塁打は37本と1位の大谷と7本差だが、それでも98打点は大谷と並んで2位タイにつけている。

「MLBデビューを果たしたマーリンズ時代にはイチローさんやジャンカルロ・スタントン(現ヤンキース)、クリスチャン・イエリッチ(現ブルワーズ)らスター選手と外野を形成。その能力を見込まれ、カージナルスを経て、ブレーブスに移籍。2020年には本塁打と打点の二冠を獲得するなど、非常に優れたバッターです」

大谷にはない特徴は「安定感」だという。

「とにかく安定感がすさまじく、どの方向にも飛ばせて、右投手も左投手も苦にしません。打率もこのまま残すでしょうし、大崩れはしないと断言できます。

以前は外野をしっかり守っていましたが、近年はDHが主戦場に。守備負担が減り、より綿密に投手対策ができるようになったのか、打撃の全盛期を迎えています。現段階では、バットマンとしては大谷よりもオズナのほうが怖い存在ですね」

ただ、大谷との本塁打の差は7本。三冠王を目指す上では、大谷に打率アップという難題があるのと同様、オズナは本塁打数を大きく伸ばす必要がある。やはり、三冠王はひと筋縄ではいかない高き山なのだ。

今世紀になって達成したのは2012年のミゲル・カブレラ(当時タイガース)ただひとり。ナ・リーグではなんと87年間も達成者ゼロ、という歴史的事実が偉業の困難さを物語っている。

「1リーグ6球団のNPBに比べ、MLBは1リーグ15球団でなおかつ実力者ばかり。それだけで難易度は桁違いです。打撃部門のいずれかで確変的な好成績を残す選手が毎年のように生まれるため、二冠王は達成できても、三冠王は至難の業なんです」

確かに、アルバート・プホルス(当時カージナルス)が二冠王に輝いた2010年は打率を3割台に乗せながら首位打者に届かず。逆に首位打者に輝いた年は本塁打と打点がトップに届かなかった。

「個人的には、打率を残せる選手がパワーを身につけると三冠王の可能性が高くなるイメージです。大谷も開幕当初の打率が残るスイングのままだったら......と思いますが、その場合は本塁打数が今ほど伸びず、『50−50』が視野に入らなかったかもしれないので、難しい問題ですね」

■バットマンか、アスリートか

今季はもうひとり、ア・リーグでも三冠王に迫る打者がいる。ヤンキースのアーロン・ジャッジだ。

4月は不調で出遅れたものの、5月以降は驚異的な打撃を披露。長打率+出塁率ではじき出されるOPSは0.900を超えれば一流打者といわれる中、月間1.300以上のOPSを3度も記録。51本塁打、124打点は共にリーグ1位を独走し、打率も1位と1分5厘差の.325をマークしている。

「ジャッジはもともと本塁打と打点の二冠王は獲れる打者でしたが、今季は再現性と安定感が増したため、まさに無双状態。打率でも1位になるチャンスがあります」

ジャッジといえば、2022年にア・リーグ新記録のシーズン62本塁打をマーク。投手として15勝、打者として34本塁打を記録したエンゼルス時代の大谷とMVP争いを演じ、ジャッジに軍配が上がった因縁もある。

「私は今でも、2年前は大谷がMVPにふさわしかったと思っています。ただ、もしも今季も同じリーグでMVP争いをしていたなら、ジャッジが獲得するのだろうなと思います。

出塁率、長打率、OPSがすべて2年前よりも向上し、9月に12本塁打を放てば、自身の持つシーズン記録を塗り替えます。投手目線でいえば、勝負を避けたいと思うバッターでしょう」

もはやバットマンの究極形ともいえる今季のジャッジ。ただ、野球人として、アスリートとしては大谷に軍配が上がるようだ。

「スピード面ではボルトと比較しましたが、サッカー選手でたとえるなら、フィジカルモンスターの世界的FWロメル・ルカク級の体の強さを持ちながら、クリスティアーノ・ロナウド並みの決定力や万能性があるのが大谷です。

パワーとスピードというフィジカル的スペックで人類の最高到達点に日本人の大谷が立っていることがすごいし、誇らしい。そのことをもっと認識すべきです」

末恐ろしいのは、そんな大谷がまだまだ全盛期ではない、ということだ。

「32歳のジャッジ、33歳のオズナがそれぞれ全盛期と思わせる活躍をしているのを見ると、最近の打者のピークはそのあたりなのかもしれません。だとすると、30歳の大谷はまだまだ上昇曲線の途中。『50−50』ですら通過点になると思いますし、真の技術と勝負強さを身につけ、さらなる高みを目指してほしいです」

破格の契約に元通訳のスキャンダル、電撃結婚とドラマチックな出来事ばかりの今季。最後は成績面でも最高のドラマを見せてほしい。

*成績は日本時間9月3日時点

文/オグマナオト 写真/時事通信社 アフロ

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