「非正規雇用公務員の実態は不透明」首都圏106自治体に情報公開請求 多くが「人事情報」不存在

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2024年09月11日 15:00  弁護士ドットコム

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安い賃金で働く非正規公務員の「官製ワーキングプア」の撲滅を目指している団体は9月11日、東京・霞が関の厚労省で会見し、首都圏106自治体に対し、非正規雇用職員である会計年度任用職員について情報公開請求をおこなったと発表した。


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その結果、多くの自治体で本来、把握すべき基本的な人事情報が「不存在」だったという。団体では「会計年度任用職員は、地方公務員法が適用される一般職地方公務員と位置付けられていながらも、ずさんな扱いを受けている」と指摘、「会計年度任用職員を使い捨てする現実がある」と懸念を示した。



●教育委員会に「不存在」が多い傾向

情報開示請求は、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、東京都の23区と市、首都圏の人口10万人以上の自治体を対象に実施された。調査した団体は、非正規雇用公務員問題について改善を目指している「なくそう!官製ワーキングプア集会実行委員会」。



会計年度任用職員を雇用する自治体は、30人以上の離職者が発生した場合、新たな仕事を探しやすくするために、「1ヶ月以上前に」「知事は都道府県労働局に、市町村長はハローワークに」「通知する」義務を持つ(労働施策総合推進法27条)。



しかし、106自治体のうち「大量離職通知」を提出した50自治体ですら、6割が離職者の内訳は「不存在」(該当する情報がない)と回答していたという。これ以外には、通知義務がないため、「不存在」とする自治体が多かった。



また、今回の情報開示請求をきっかけに、「大量離職通知」が必要だったと分かったと回答する自治体もあった。



同委員会は情報開示請求の結果をふまえ、「特に教育委員会の『不存在』回答が目立つ傾向にある。回答があったところでは、スクールカウンセラーや部活指導員、教職員などの離職者が多かった」と指摘している。



●「会計年度任用職員の任用回数制限撤廃」求める

同委員会がこの調査を行った背景には、会計年度任用職員制度の「3年目問題」がある。1年契約の会計年度任用職員は、公募試験をせずに再採用できる限度は2回とされていた。



同委員会によると、2023年3月に埼玉県狭山市で22年間勤務した図書館司書が雇い止め、2024年3月には東京都でスクールカウンセラー261人が大量雇い止めされた。こうしたことからも、上質な公務公共サービスを維持するために、再採用上限の撤廃を求めてきた。



こうした声を受け、人事院は6月、再採用上限を撤廃すると通知した。同委員会の調査では、すでに「廃止決定」と回答した自治体は、東京都の調布市と西東京市だけだった。



「もともと回数制限を設けていない」とする自治体は19.6%、「現在検討中」とする自治体は32.7%、「今後検討を予定」とする自治体は20.6%だった。「検討を予定していない」とする自治体は5.6%あった。



同委員会では引き続き、各自治体に対し、会計年度任用職員の「公募を経ない再度の任用回数の制限」や「1年任用で公募を実施」の廃止を求めていく。



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